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フェラーリがルーチェのデザインをジョニー・アイブに依頼したのは「間違い」?「非日常の存在(跳ね馬)を、日常的なツールのデザイナーに任せるべきではなかった」

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜リア

Image:Ferrari

| 天才ジョニー・アイブの「引き算の美学」が跳ね馬の魅力を帳消しにした理由とは |

なぜLoveFromの「マジック」がフェラーリでは機能しなかったのか

さて、「ルーチェ・ショック」冷めやらぬ昨今ではありますが、現在は「脊髄反応的な批判」から「様々な観点から見た様々な考察」へとネット上の論調が移りつつあるように思います。

そして今回米自動車メディア『Motor1』が示したのが「フェラーリは初のEVに革命を求めすぎたあまり、ブランドの本質を見失った」という見解で、フェラーリが社運を賭けて投入した初の次世代EV「ルーチェ(Luce)」に対し新たな視点から鋭く切り込むことに。

世界中が注目した「跳ね馬×アップルのDNA」という夢のコラボレーションが、なぜ自動車愛好家(ティフォシ)たちの心を掴めず、逆に「走るiPhone」という最大の皮肉を生んでしまったのか。

ここではその痛烈な批評を読み解きつつも、EV時代におけるスーパーカーデザインの難題について考えてみましょう。

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜全景

Image:Ferrari

この記事の要約

  • 期待外れに終わった革命:業界を震撼させるはずだったフェラーリ初の100%電気自動車(BEV)「ルーチェ(Luce)」ではあるものの、発表直後からSNSで「フェラーリらしくない」と酷評される事態に
  • Appleの天才がもたらした誤算:iPhoneをデザインした巨匠ジョニー・アイブ氏(LoveFrom)を起用した結果、フェラーリに求められる「情熱や凄み」ではなく、道具としての「シンプルさ」が際立つ形に
  • 内製チーム(Centro Stile)への不信感?:ピニンファリーナからの脱却後もラ・フェラーリやプロサングエなどの名車を生み出してきた自社デザイナーを差し置いて外部へデザインを委託したことへの疑問

フェラーリとLoveFromとのコレボレーションは「完璧な結果」を生むはずであったが

フェラーリが、Appleの元デザイン最高責任者であるサー・ジョニー・アイブ氏率いる「LoveFrom」とパートナーシップを結んだとき、机上では完璧な戦略であるように見え、というのもアイブ氏の最高傑作であるiPhoneは、誕生から約20年が経過した現在でも世界のスマートフォンの世界標準であり続けているから。

iPhone 17 ProとiPhone 17 Pro maxを購入→手元に届く。そのカメラ性能(静止画・動画)の向上には期待、今後様々な場面で活躍しそう
Life in the FAST LANE.

しかし、アイブ氏が持つデザイン哲学の本質は「ミニマリズム、機能性、そして極めて安全(保守的)な造形」にあり、同氏は過去のインタビューでこう語っています。

「私たちの製品は『道具(ツール)』であり、デザインがその邪魔をしてはならない。私たちが目指しているのは簡潔さと明瞭さであり、製品に秩序をもたらすことだ」

この思想は、生活の背景に溶け込むべきスマートフォンやラップトップには完璧にマッチするものと思われ、しかしすれ違う誰もが振り返るような「非日常の衝動」を売るフェラーリにおいては、この思想がフェラーリから牙を抜く結果となってしまい、これはぼくらに「フェラーリは単なる移動の「道具」ではない」という一つの事実を再認識させる結果ともなるわけですね。

その結果誕生したルーチェの外観は、空力を極限まで突き詰めた結果、EV特有のスケートボードプラットフォームの上に載った「没個性な塊」に見えると批判されていて、実際のところフロントアクスル上のシグネチャーである「Sダクト」を除けば、跳ね馬のアイデンティティを主張する要素はほとんどなく、ヘッドライトは匿名性が高く、(過去のフェラーリをイメージしたであろう)テールライトも既存の他社製4ドアクーペに酷似していると指摘されています。

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜フロント正面

Image:Ferrari

フェラーリ ルーチェ:車種概要

ここで、デザインのシンプル化と空力の最適化を極限まで追求した「フェラーリ・ルーチェ」のパッケージングとスペックをあらためて確認してみましょう。

フェラーリ・ルーチェ(Ferrari Luce)主要スペック

  • パワートレイン:4モーター(各輪独立駆動のクアッドモーター構成)
  • 最高出力:1,035馬力(1,050 PS)
  • 0-100km/h加速:2.5秒
  • バッテリー容量:122 kWh(800Vアーキテクチャ)
  • 航続距離(EPAモード予測値):約300マイル(約482 km)
  • 空力デバイス:フロントSダクト、アクティブ・リアディフューザー
  • エクステリア最大の特徴:ジョニー・アイブ(LoveFrom)監修による、ラインを極限まで排除したミニマル・リフトバック形状
  • インテリア:デジタルとクラフトマンシップを融合した新世代5シーターレイアウト
フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜サイド

Image:Ferrari

空力最適化の代償とその矛盾

ルーチェのエクステリアは空気抵抗を極限まで減らすという過酷な制約の中でデザインされており、これはもちろんハイパフォーマンスEVにとって、航続距離を伸ばすために「ボディをいかに滑らかにするか」は死活問題だから。

しかし、これほどまでにフェラーリらしさを犠牲にして空力を最適化したにもかかわらず、米国EPA基準での航続距離は「約300マイル(約482km)」に留まる見込みだとされ、「これほど個性を失ってまで空力を突き詰めた結果がこの数字なら、一体何のためのデザイン変更だったのか」と、その費用対効果の悪さが痛烈に批判される結果となってしまったわけですね。

なぜフェラーリは外部にデザインを委託したのか

今回のルーチェを巡る最大の悲劇は、フェラーリが誇る自社のデザイン部門「フェラーリ・チェントロ・スティーレ(Ferrari Centro Stile)」に対する、経営陣からの「不信任投票」のように映ってしまった点にもあるとされ・・・。

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ピニンファリーナ離脱後の自社チームの功績

2013年に長年の相棒であったピニンファリーナと事実上の決別をして以降、チーフデザイナーであるフラビオ・マンゾーニ氏率いるチェントロ・スティーレは、外部の力を借りずともフェラーリを新しい時代へと見事に導いてきたという実績があり、彼らが最初に手がけたハイパーカー「ラ・フェラーリ」は、現代的な空力技術とクラシックなフェラーリのプロポーション(エンツォへのオマージュなど)を見事に融合させたことで世界中から絶賛されることに。

その後も、GTC4ルッソ、812スーパーファスト、ローマ、そして最新の12チリンドリなど、ヒット作を連発しているのはご存知のとおりです。

まさに「新時代を切り開いたフェラーリ」、ローマに対してボクはこんな印象を持っている。数ヶ月内に売却せねばならないのが残念で仕方がない
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宿敵「プロサングエ」との決定的な違い

中でも、ルーチェの前身(パッケージングのベース)となった初の4ドアモデル「プロサングエ(Purosangue)」の存在は決定的で、SUV風のハイライディング・スタイルにフェラーリのDNAを移植することは極めて困難な挑戦であり、開発を開始した当初は純粋主義者から賛否両論が巻き起こったのは記憶に新しいところ。

しかし、完成したプロサングエは、誰が見ても一目で「フェラーリ」と分かる躍動感と美しさを備えており、結果として市場で大成功を収めているわけですね。

車種デザイン担当スタイルフェラーリらしさの評価
プロサングエフェラーリ・チェントロ・スティーレ4ドア・高車高スポーツ非常に高い(伝統と革新の融合)
ルーチェ(新型EV)LoveFrom(ジョニー・アイブ)4ドア・EVリフトバック低い(ミニマリズムへの過傾倒)

プロサングエであれほど見事なSUV化を成功させた自社チームがいながら、なぜ初のEVという最重要局面で自動車デザインの経験が浅いプロダクトデザイナーにすべてを委ねてしまったのか。この経営陣の判断こそが、熱狂的なファンやメディアのフラストレーションの根源にあるとも見られており、「もしフェラーリが内部のデザインチームにてルーチェをデザインしていたならば」と考える人々が出てくるのも無理はないことなのかもしれません。

フェラーリ プロサングエのフロントフードオープン(シルバー)
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結論

フェラーリ・ルーチェは決して技術的に劣ったクルマではなく、1,000馬力を超える圧倒的なスペックや未来的なインテリアなど、ハイパーカーとしての資質は十分に備わっています。

しかし、フェラーリが初のEVに求めた「スマートフォンのような産業革命」というアプローチは、結果としてブランドが60年以上にわたり築き上げてきた「理屈抜きの美しさとエモーション」を削ぎ落としてしまったこともまた事実であり、未来を急ぎすぎるあまり、ファンがなぜこのブランドを愛しているのかという原点を見失ってしまったというのが一般的な評価なのかもしれません。

ルーチェに課せられた使命は、地球上で「最も美しいエレクトリックフェラーリ」になることだけでよかったはずで、しかし考えすぎてしまったばかりに複雑化してしまい、インダストリアルデザインの結末として誕生した「車輪の付いたiPhone」にしか過ぎないクルマになってしまったのがルーチェだとも考えられているわけですね。

ただ、フェラーリはこういった評価を予想していたはずであり、そしてそれは「おおよそ予期していた通り」であるとも考えていて、つまりフェラーリは「これまでのフェラーリとは異なる存在」を作ろうとし、意図的に「フェラーリの法則」から逸脱したのではないかとも考えているのですが、どこかでその真意が語られる日を期待したいと思います。

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜エアコン操作部

Image:Ferrari

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参照:Motor1

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