
| 登場当初はバカにされていた「水上航行機能」ではあるが |
水害が続くこの状況では「意外とバカにできなくなった」のもまた事実である
岩場を登り、急勾配を駆け下りる従来のオフロード性能にとどまらず、次のメルセデス・ベンツの本格オフローダーは「水の上を泳ぐ」ことを目指しているのかもしれない、というのが今回の話題。
海外自動車メディアの調査によってメルセデス・ベンツがSUV向けに「水域への入出水および水上での走行動作(スイミング動作)」を制御する革新的な特許を出願していたことが判明し、テスラのサイバートラックや中国メーカーの渡河技術が話題を集めるなか、自動車の発明者であるメルセデス・ベンツが提示した「本気の水上走行アプローチ」の全貌を見てみましょう。
この記事の要約
- メルセデス・ベンツがSUVで水域への侵入・脱出および「水上走行(スイミング動作)」を制御する新特許を出願
- ホイールハウス内の膨張式(またはフォーム製)ブロッダーにより浮力を確保し、車輪の高さや左右出力を自動調整して推進・操舵を行う
- 中国の仰望(Yangwang)U8などの水上浮遊機能を備えた高級電動SUVに対抗する、メルセデス・ベンツらしい緻密な制御技術
メルセデス・ベンツ「水上走行(水陸両用)制御技術」の概要
今回公開された特許は「水域への侵入および水域からの脱出を実行するための車両制御ユニット」に関するシステムで、単に車体の密閉性を高めて水に浮くことを目的としたものではなく、専用の浮力デバイスとアクティブ制御システムを組み合わせて水上で安定した航行を目指したもの。
これを実現するためホイールハウス(タイヤハウス)内に膨張式のインフレータブル部材や発泡フォーム部材を配置し、車載コンピューターが各輪の浮力を個別にコントロール。これにより、車内の荷重バランスが崩れている場合や強い水流がある場所でも車体を水平かつ安定して保つことが可能になるというわけですね(安定し姿勢を保ち、かつ航行することは容易ではなく、それを可能とすることは特許レベルの発明でもある)。
特徴・スペック・デザイン
特許文書から明らかになったメカニズムと制御技術のポイントは以下の通りとなっていて・・・。
| 項目 | 特徴・メカニズム詳細 |
| 浮力確保デバイス | ホイールハウス内に格納するインフレータブル(膨張式)またはフォーム構造 |
| 収納スペース | スペアタイヤの収納エリアにコンパクトに格納可能(パンク修理用コンプレッサーで膨張) |
| 車高・姿勢制御 | アダプティブサスペンションを活用し、水中での車輪の上下位置や舵角を自動制御 |
| 推進・操舵方式 | 舵(ラダー)やスクリューに頼らず、水深に合わせてタイヤの回転・高さを最適化 |
| 電動4WDの制御 | 各輪のモーター出力を独立制御し、1輪または複数輪の逆回転により方向転換・保持 |
| 接岸・脱出制御 | タイヤが岸(陸地)に接触した瞬間、トラクションを精密に制御してスリップや泥掘りを防止 |
スクリューや専用の舵を持たない通常のSUVにおいて、最大の課題は「水上での操舵と推進力」。
メルセデス・ベンツはアダプティブサスペンションによって操舵輪を水中深く沈めることで舵の役割(ラダー効果)を果たさせ、タイヤの回転を最適化して水中推進力を生み出すという方法を提案しており、電動SUVであれば、左右のタイヤを逆回転させるなどして水上での方向転換(タンクターン技術の応用)も実現可能です。
ちなみにメルセデス・ベンツはタンクターン(Gターン)にも非常にこだわっていた時期があり、ほかの自動車メーカーとはやや異なるところを目指しているのかもしれません(そしてその方向性はヤンワンのような中国の自動車メーカーと同じ方向性ということに)。
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競合比較・市場での位置付け
近年、水上浮遊機能や強力な渡河性能は(一部で)高級オフロードSUVの新たなトレンドになりつつあり・・・。
- BYD・仰望(Yangwang)U8: 緊急時に水上に浮き、ホイールの回転で操舵・進航できる緊急浮遊機能を実用化。
- テスラ・サイバートラック: 開発初期に「ボートのように水上を走れる」と主張されたが、現実的な運用には課題が残る。
- メルセデス・ベンツ(本特許): 専用の膨張式浮力ブラダー(エアバッグ状デバイス)とアクティブサスペンションの連携により、水流がある過酷な環境でも高度な安定性を追及。
既存の「緊急時に浮く」だけの機能に対し、メルセデス・ベンツの特許は自力での水上航行および「岸からの入出水時のトラクション制御」まで網羅しており、渡河や冠水路の走破性を極限まで高めた本格的なアプローチだともと言えそうです。
補足情報・新しい気付き
今回の特許において非常に興味深いのはユーザーの利便性を考慮した車載ストレージ設計で、この水上用デバイス(膨張式ブラダー)は使用しない普段の状態だと「空気を抜いて」リアのスペアタイヤ収納スペースなどに小さく畳んで保管され、膨らませる際は車載のパンク修理キット用エアコンプレッサーを活用してマグネットやクリップなどでホイールハウスにワンタッチ装着できる構造が想定されています。
「Gクラス(G-Wagen)」をはじめとするメルセデス・ベンツの本格オフローダーには、これまでも車体を上下に揺らして砂地から脱出する「リバウンドモード(サンドバウンス)」や、電動Gクラスの「G-TURN(タンクターン)」など驚きの機能が搭載されてきましたが、今回の水上走行制御は、それらに続く「未来のGクラス」における目玉機能として開発されている可能性が十分にあり、そして中国製EVへの「対抗」を考えるならば市販車に搭載される可能性は「非常に高い」のかもしれません。

結論
メルセデス・ベンツが出願した「水上走行特許」は、単なるSF的なアイデアではなく、最先端のサスペンション制御と電動パワートレイン技術を融合させた、極めて工学的に計算されたシステムです。
過酷な自然環境や予期せぬ水害時においても乗員を守り抜くプレミアムオフローダーの進化系として、次世代Gクラスなどにこの機能が搭載される日が来るのかどうか、今後の実用化に向けた動きに期待が高まるといったところでもありますね。
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参照:CARBUZZ











