| マツダはいつもプレミアムブランド化を急ぎすぎる |
東洋経済にて、「期待のMAZDA3は、なぜアメリカで売れないのか」という記事が掲載に。
つまりはタイトルの通り「主戦場であるアメリカでは売れていない」ということになりますが、その理由について考察を行ったものとなります。
そして記事によると、マツダおよびマツダ3の状況は下記の通り。
・2019年度代第一四半期の営業利益は前年同期比-79%(69億円) ・とくに北米市場では127億円の黒字から12億円の赤字に転落 ・4-6月の北米における販売台数は-85% ・1-8月の北米における販売台数は-11% |
正直この数字は衝撃的で、かつ記事では「アメリカのマーケット自体は横ばい」であり、つまりマツダの”一人負け”になっている、と指摘。
加えてマツダの北米における販売の半分を占める主力モデル「CX-5」の販売がRAV4に食われ、かつ入魂の新型車、そして掲題のMAZDA3も先代よりも「売れていない」と述べています。
マツダはアメリカ市場で「一人負け」
なお、新型MAZDA3は4月から新型が(北米で)販売されていますが、発売初月でも前年同月比-8%(4,351台)、そして直近の8月はさらに減って-13%(4,825台)。
つまり、モデル末期であった「先代」より売れていない、ということですね。
実際のところ、マツダが巨額を投じて建設したメキシコ工場の稼働率は30%まで下落しており、つまり「フル稼働」ではなく、こちらも同様の状態が続くと赤字を拡大させる要因となるかもしれません。
ちなみに日本市場におけるマツダ3は北米ほど悪くはなく、8月だと国内登録ランキング16位(3,668台)。
この数字はマツダとしてはかなり「優れて」おり、ここ最近におけるマツダのニューモデルでは最も売れていることになります。
マツダ3の不振は「価格戦略」?
東洋経済では、マツダ3の不振を「価格戦略の失敗」と結論づけており、先代比で10%ほど高い値付に加え、北米では重要となる「販売インセンティブ」を先代の2,487ドル/台から1,613ドル/台へと引き下げていることについても言及。
このインセンティブはマツダがディーラーに対して支給する金額であり、ディーラーをこれを値引きの原資に当てて「安く」クルマを販売できることになりますが、これが縮小されたということは「値引きする幅が小さい」ということを意味します。
そしてクルマが売れなくなるとメーカーはインセンティブを拡大して「値引き販売」の傾向を強め、クルマの人気が高いと「値引きの必要なし」となってインセンティブは小さくなるわけですね。
ただ、今回のマツダ3については「売れていないのにインセンティブ縮小」というセオリーとは逆の流れとなっていて、これが負の連鎖を招いている可能性がありそうです。
現在マツダの北米法人の代表は日本人が務めていますが、就任の際に「インセンティブの小さい(インセンティブが少なくても売れる)スバルをベンチマークとするという発言を行っており、現在もこれを貫いているということがわかりますね。
マツダは昔から「プレミアム路線」
そしてマツダは以前よりプレミアム志向を持っており、「小さな高級車」ベリーサの発売、他メーカーに先駆けて展開したブランディングキャンペーン「Zoom-Zoom」など、過去にも「なんとか高価格帯、高利益体質を目指してきた」ということがわかります。
ただ、それが奏功したかどうかは判断が難しく、「魂動デザイン」「ソウルレッドクリスタルメタリック」といった戦略は大きくマツダの価値を上げたと思われるものの、エンジニアリング面では確固たる優位性を築けていないようにも思われます。
SKYACTIV思想についても消費者には伝わりにくく、「結局コレって何?」という印象が否めないのもまた事実。
そういった状況で価格を上げられても困るというのが消費者の偽らざる心境だと思われ、「今まで”安い”からマツダを買ってきたのに」という人も多いのかもしれません。
たしかにマツダは「ロードスター」というキラーコンテンツを持つものの、それ以外はどうしても「実用車」の域を出ず、実用車というカテゴリにおいて「不要な」こだわりを反映されて価格が上がるというのは”車社会”であるアメリカには到底受け入れられない可能性もありそうですね。
日本ではマツダのデザインや向上したブランドバリューを評価して新型マツダ3を購入する傾向が数字から明らかになっていて、しかしアメリカでは「マツダは単なる実用車としてしか見られていなかった」という事実が浮き彫りになったのかもしれません。
マツダは先に「品質」を向上させる必要がある?
加えてマツダは「品質」にも不安を抱えており、品質を向上させないままに「プレミアム」を目指すのは難しそう。
「プレミアムブランド」として近年成功した例としては「レクサス」がありますが、これは品質、顧客満足度ともに非常に高く、しかしマツダはこれらの評価が低いまま。
アメリカではケリー・ブルー・ブック、コンシューマーレポートなど評価機関のレポートが消費者の購買活動に大きな影響を持つと言われ、ここでの評価を上げないと市場での成功は難しい、と言われるほど。
そのためにヒュンダイはこれら評価機関への「対策」を取っていると考えられ、こういった評価レポートでのスコアを大きく向上させています。
つまり、マツダのこだわりと消費者が求めるところには乖離があり、消費者の満足度を向上させないまま、メーカー主導の「プレミアム化」を行ったとしても、消費者がついてこないということなのでしょうね。