| 最初から機能が内蔵され、「課金」によって機能をアンロックして使用できるようになる仕組み |
クルマの機能のサブスク化については「成功する」と見る向きと「失敗する」と見る向きに分かれている
さて、欧州の自動車メーカーを中心に広がりつつある「クルマの機能のサブスクリプションサービス」。
もとはというとテスラが導入したサービスであり、テスラのクルマは「バッテリーサイズ」「駆動方式」という物理的な差異以外についてはいずれのグレードも同じ機能を持っており、しかしオプション価格を払うとその機能を(自動運転などが)使用できるようになります。
他のクルマとどう違うのかというと、一般的なクルマであれば、オプション費用を支払うと、そのオプションを「新たに取り付ける」ことになるのですが、テスラの場合は「使用が制限されているというロックを解除するだけ」であり、上述の自動運転であれば、オプション料金を支払って、そのためのカメラ他デバイスを「追加する」のではなく「もともと装着されているものを利用できるようにする」という概念です。
つまりは最初から「全部入り」のクルマを作っておき、納車するときは最小限の機能しか使えず、しかしお金を払えば内蔵される機能を使えるようになるというもので、これはスマホゲームの課金システムを連想するとわかりやすいかもしれません。※こういったクルマの機能への課金については、一回だけ払えばいいものや、月ごとに契約するものもある
BMW、アウディはすでにサブスクリプションサービスへと移行中
なお、BMWはフォード、フォルクスワーゲンとともにサブスクリプションに将来性を見出している自動車メーカーのひとつで、現在のところは一部の国に限定されるものの、「シートヒーター、ステアリングヒーター、オートマチックハイビーム、アダプティブクルーズコントロール」をセットにしたサブスクリプションサービスを導入しています。
ただ、これについては(当然のことながら)大きな批判を浴びており、しかしBMWは「すぐに顧客は慣れるだろう」とも。
さらには自動車用接続サービスのプロバイダーであるVNCオートモーティブ社も同様の見解を示しており、「時間の経過とともに浸透する妥当」という見解を示しています。
こちらについては、Netflix、Amazon Prime、Spotifyなどのサービスが普及したお陰で、現代の消費者はサブスクリプションモデルに慣れていて、そのため自動車のサブスクリプションサービスにもスムーズに移行させることができると主張。
考えようによっては消費者にもメリットはあるが
さらに「月額制」であれば、冬期のみシートヒーターを使用するなど、「高価なオプションに前払いする」よりも、(消費者にとって)メリットが感じられるケースもあるといい、しかしクルマとソフトウエアもしくはゲームとが異なるのは、クルマの場合は「そのモデルによって物理的な限界の差がある」ということで、モデルごとにその機能や性質も異なり、そもそも全ての機能が等しくいずれのクルマに備わっているわけではない、ということですね。
参考までにですが、最近だとアウディQ4 E-tronのオーナーがエアコンの「Sync」ボタンを押したところ、インフォテイメントシステムに「その機能はお買い上げいただいておりません」という表示がなされたという投稿がありましたが、将来的にはそういった事例が多くなり、その後に続いて購入を促すメッセージが表示されるようになるのかもしれません。
サブスクで成功するのは「一定条件」を揃えた自動車メーカーのみ?
テスラのように、モデル数が少なくパーツや設計の共通化が容易な場合はともかく、数十種類もラインアップがあり、金額も大きく異るクルマを揃えるフルラインアップメーカーだと、モデルごとに「最大限の機能を持たせて」設計・製造すると非常に大きな手間、そしてコストがかかり(そもそもチップが足りずに機能を省かないといけない状態でもあり、機能満載は物理的に難しい。かつクルマも重くなる)、そして消費者がそれを利用しなければ「赤字」になるという可能性も(それを見越して新車価格を高く設定するのは本末転倒であり、消費者への冒涜のようなものである)。
さらにYouGovの調査だと、英米の自動車消費者の30%がサブスクリプションを受け入れるというレポートも公開されていますが、同社によれば、今後自動車は「個人で所有するものではなく」一時的にレンタルしたり、一定期間のレンタル契約を結んで乗ることになるだろうとのことで、特に若いドライバーはクルマを所有しなくなる可能可能性が高い、と見ているもよう。
ただ、ここでもうひとつ考えなくてはならないのは、「クルマ本体のサブスク」については根付かなかったと考えてよく、実際に、参入した多くの自動車メーカーが引きあげていること。
これはクルマの需要期とそうでないときに差があり、需要期に合わせて(レンタル用の)クルマを所有していると、閑散期にはそれらを持て余して維持管理費用がかかったり、その他諸々の理由にて「モトが取れない」からだと思われます(そして借り手がいなければ在庫の山になり、さらには価格競争から企業が疲弊してしまう)。
この状況にて「全部入り」のクルマを作ってクルマ本体もサブスクに、機能もまたサブスクにというのはちょっと無理がある(リスクが大きい)とも考えていて、デジタル業界における成功と、自動車業界での将来性とを結びつけるのはちょっと無理があるんじゃないかとも考えています。※ゲームの課金とは異なり、クルマのサブスク機能のほとんどは、なくてもやり過ごせるようなものばかりだろうとも思う。実際にテスラのFSDのサブスク申し込み率はかなり低いと報じられている
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参照:Bloomberg, etc.