| ただしポルシェ・タイカンの距離の少なさは「セカンドカー」「プレミアムカー」といった特殊事情もありそうだ |
いずれにせよ、EVはガソリン車に比較して航続距離に関するパフォーマンスが高くない
さて、米中古車ポータルサイト、iSeeCarsにって「アメリカで3年間EVを所有したオーナーに対して調査を行ったところ、年間の平均走行距離は約14,579kmで、これは内燃機関(ガソリン/ディーゼルエンジン)車よりも29%少ない数字である」ということが判明しています。
さらに、もっとも長い距離を走っているEVランキングのトップはテスラ・モデルX(16,702km)であり、1位から4位までがテスラによって独占され、iSeeCarsのエグゼクティブ・アナリスト、カール・ブラウアー氏によれば「もしテスラ車が存在しなかったら、もっとEVの年間走行距離は少なくなっていたでしょうね」。
モデル別年間走行距離はこうなっている
そして以下はモデル別の年間走行距離ですが、距離はマイル、そしてその次の数字は平均航続距離(EPA)です。
年間あたりEV走行距離ランキング
- テスラ モデルX・・・10,378マイル/ 341マイル
- テスラ モデルY・・・10,199マイル/ 316マイル
- テスラ モデル3・・・9,960マイル/ 279マイル
- テスラモデルS・・・9,340マイル/ 378マイル
- ヒュンダイ コナ・エレクトリック・・・8,260マイル/ 258マイル
- シボレー ボルトEV・・・7,753マイル/ 259マイル
- アウディe-tronスポーツバック・・・7,210マイル/ 218マイル
- ジャガー I-PACE・・・6,910マイル/ 240マイル
- ヒョンデ・アイオニック6・・・6,803マイル/ 170マイル
- キア・ニーロEV・・・6,630マイル/ 239マイル
- 日産リーフ・・・6,395マイル/ 190マイル
- ポルシェ・タイカン・・・4,846マイル/226マイル
これらのランキングを見るに、「ガソリン車よりもEVのほうが走行距離が少ない理由」にはいくつかの要因が考えられ、たとえば「セカンドカーだから」「プレミアムカーであり日常の足でないから」といった様々な理由が考えられるものの、やはりもっとも大きな要因は「航続距離」かもしれません。
これは上位のテスラの航続距離が長いことや、本来は「足」としてもっと乗られるはずの日産リーフ(航続距離が短い)の年間あたり走行距離が伸びていないことからも推測でき、つまり一回の充電あたり”どれくらいの距離を走れるか”がかなり重要な要素ではないか、ということですね(ぼくはEVに4年ほど乗ったが、電欠を恐れて遠出しなかったり、用事を早めに切り上がることが多々あった)。
EVの航続距離はもっともっと伸びないと「ガソリン車の代わりにならない」
実際のところiSeeCarsも同様の仮説を立てており、EVオーナーの年間走行距離がガソリン車オーナーと同じくらいの距離を走るには「EVは平均して161マイル(259km)の航続距離を実現せねばならない」という試算を導き出していて、これをクリアしているのはテスラの4モデルのみといった状況です(シボレー・ボルトEVはかろうじて259km)。
参考までに、アメリカで販売されるガソリン車の「満タンあたりの走行距離」は444マイル(715km)だそうですが、これは現在のEVの平均航続距離よりも165マイル(265km)長く走ることになり、もしEVでこれ(ガソリン車と同じ距離)を実現しようとするならば(プレミアムモデルのポルシェ・タイカンを除いた計算で)、現在の価格あたり平均航続距離から逆算して「105,147ドル(現在の為替レートにて1470万円)」になってしまうという数字上の遊びもあるもよう。
そう考えると「EVはまだまだ割高」だと言わざるを得ず、しかしGMやBMW、ステランティスの発言を見る限りだと、あと数年内にはそういった「ガソリン車と同等のコストパフォーマンスを持つ」EVが登場することになるのかもしれません。
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