| 自動車の内装には様々な発がん性物質が含まれることがこれまでの研究から明らかになっている |
ただしそこまで過剰に心配をする必要はなさそうだ
さて、自動車の内装には身体に悪影響を及ぼす物質が多数存在することがこれまでのレポートからも明らかになっていますが、今回は「およそ99%の自動車のシートにはTCIPPと呼ばれる発がん性化学物質が含まれている」との調査結果が公開されることに。
この調査はさまざまな国で(2015年から2022年にかけて)製造された合計155台の車両を調査し、これらの車のうち101台は冬期に評価され、残る54台は温度差を考慮して夏期にテストされています。
なお、対象車種については公開されていないものの、ハイブリッド車、電気自動車、ガソリン車など幅広く含まれているといい、当然ながら日常的に見かける人気車も含まれていると考えていいのかもしれません。
気温によっても発がん性物質の濃度は異なってくる
この調査によると、証左した車両の99%のシートにTCIPPが含まれることが判明し、さらに気温が高い場合、この危険な化学物質の濃度は2~5倍高くなることもわかっています。
なお、このTCIPPについては、(今回とは別の)2023年の米国国家毒性報告書にて、この化学物質に曝露された「雄と雌のラットおよびマウスにおける発がん性活性」の証拠が言及されているため、「99%のクルマにこの物質が含まれる」という事実は無視できない結果なのかもしれません。
ただ、これについてぼくらドライバーが心配する必要があるとというと必ずしもそうではなく、計測されたのは 0.2 ~ 11,600 ng/g (ナノグラム) という微量であり、これが即座に身体に影響を及ぼす可能性が高いとは言えないもよう。
しかし「ごく少量であっても」こういった物質が含まれることは憂慮すべき事実であり、さらに調査ではテストされた多くの車両にTDCIPPとTCEPという2つの物質が微量に含まれていることも指摘されています(これらがクルマのシートから発見されるのは、クルマのシートに要求される”難燃剤”に含まれる成分であるからだそうだ)。
ドライバーや乗員にできることは?
これらの化合物は主にシートフォーム(シートの中のスポンジ)に含まれており、一方でコンポーネント (フレームやレールなど) 、および室内装飾品には含まれていないとされ、研究主任のレベッカ・ホーン氏(デューク大学の毒物学者)によると、「特に、通勤時間が長いドライバーや、大人よりも呼吸量が多い子供の同乗者にとっては、この問題は懸念される」とのことで、同氏は含まれる量が微量であってもその影響を無視することはできないと主張しています。
加えて研究者らは、自動車運転者(特に屋外に駐車する運転者)は、運転中に窓を開けて車内の温度を下げ、空気の流れを良くすることを推奨しており、 エアコンの使用も効果的ではあるものの、少なくとも車内の温度が正常に戻るまでは、空気再循環の設定は避けるべきである、とも。
つまりぼくらはなるべく車内の温度を高くなりすぎないように保ち、かつ可能な限り外気を取り入れるほうが良いということになりますが、「空気の循環」という点においてはオープンカーにその利点があるのかもしれません。
参考までに、今回の調査に限らずですが、クルマの内装には様々な有害物質が含まれるというレポートがいくつか見られ、過去には「愛車の新車の匂いは有毒で、ホルムアルデヒドやベンゼンなどの化学物質が含まれており、どちらも癌と関連している」という報告もなされています。
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参照:Environment Science and Technology