| 現代の自動車は様々な方面からの規制によって変化を強いられている |
さて、新車から新車の匂いが無くなるという報道。
この報道によると、新車の匂いが規制によって薄められる、もしくは姿を消すことになるだろうとのことですが、正確にいうならば、匂いそのものが規制されるわけではなく、「匂いのもと」となる物質が規制されるようですね。
この「新車の匂い」は、内装の張り材な充填物、そしてそれらを接着する際に使用される揮発性物質に起因するもので、ホルムアルデヒド、スチレン、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、アクロレイン等といった揮発性有機化合物がその匂いの元だとされています。
揮発性有機化合物はアレルギーの元凶にも
そしてこれら揮発性有機化合物(VOC)は揮発して大気中に霧散するわけではなく、気温が低下すると車内に再吸収され、また気温が高くなると放出されることになり、つまり乗員は「ひたすらこの有機性化合物を吸収し続ける」ということに。
これはすべての人に対して害をなすわけではないようですが、人によって目の痒みや頭痛を引き起こしたり、呼吸に影響が出る場合もある、とされています。
なお、こういった症状を訴える人はアジアに多いとされ、韓国で実施されたアンケートでは51.5%の人が症状を訴えたそうで、それに対応すべくこれらの使用制限が設けられている、とのこと。
ちなみに最近、ヒュンダイのクルマが「臭くてたまらない」というクレームが頻発して話題となりましたが、これはぼくの推測だと、規制されたVOCの代わりの接着剤から発せられるもの(自動車ではないが、ほかの業界で同様の経験がある)。
特定の代替接着剤(植物由来のもの)は一定の湿度や気温になると匂いが発せられ、それは生ゴミのような耐えがたい臭さとなるわけで、問題となったヒュンダイ車でも”ドブのような臭さ”だと表現されています(ヒュンダイの案件は現在調査中とのこと)。
世界最大の市場、中国では「規制」にまで発展
そして中国でははなぜかこの新車の匂いが嫌われているようで、米調査会社であるJDパワーが実施したアンケートでは、2年連続で「新車の匂い」が(新車に対する)不満要素のナンバーワンとなっており、しかし同じ調査を米国で行うと「新車の匂い」は全体の不満の中で21位にとどまる(つまりほとんど不満に感じていない)、とのこと。
なお、欧米ではむしろこういった新車の匂いが好まれる傾向にあり、「オーデコロン」ならぬ「オーデ”ニューカー”」なる製品の人気も高いという話もあるほどです。
しかしながら、現在中国は世界ナンバーワンの自動車市場なので、各自動車メーカーとも中国の嗜好に合わせるよりほかなく、中国生産のクルマに加え、中国へと輸出する車両についてもなんらかの対応を行う必要がありそうですね。
実際に2021年7月からは「8人乗りまでの乗用車に対し、揮発性素材を使用しないこと」が義務付けられるといい、自動車メーカーは否応なしに変化を強いられるということになりそうですが、もしかすると、2021年以降は、ヒュンダイのクルマのように、臭いというクレームが世界規模で、かつ同時多発的に聞かれるようになるかもしれませんね。
参照:Autocar