
| 意外だが、自動車メーカーや著名チューナーでもホイールスペーサーを使用している |
ホイールスペーサーは人気の定番カスタム
ホイールスペーサーは、様々なシーンにおいて使用され、コンパクトカーのカスタム、そしてオフロード愛好家からスーパーカーオーナーまで幅広く支持されている定番アイテムでもあり、主に以下のような理由から使用されることとなっています。
- ワイドタイヤを履かせるためのクリアランス確保
- トレッド幅拡大によるハンドリング・グリップ性能の向上
- 大型ブレーキキャリパーとの干渉回避
- 「ツライチ」を実現するための美観向上
確かに、ホイールとフェンダーがツライチになるスタイルは迫力が増しますし、走りの安定感にもつながります。
しかし一方で時々報じられ、そして気になるのがホイールベアリングへの負担です。
なぜホイールスペーサーはベアリングに負担をかけるのか?
ホイールスペーサーがベアリングに負担を欠けるとされる仕組みはシンプルで、ホイールを外側にオフセットさせることで、ベアリングにかかる力の支点が遠くなり、てこの原理で負担が増えるから。
分かりやすく言えば、重いバッグを体の近くで持つのは楽ですが、腕を伸ばして持つと一気に疲れるのと同じ理屈です。
なお、同じ理由にて、アフターマーケットホイールで純正よりもインセットが小さい(アウトセットが大きい)ものを履く場合も、スペーサーと同じようにベアリングへ負荷がかかります。
ベアリング摩耗のサインとは
ホイールベアリングが傷み始めると、次のような症状が現れます。
- ゴリゴリ、うなり音などの異音
- ハンドルが左右に取られる
- バランスの悪いタイヤのような振動
これを放置すると、最悪の場合はハブやスピンドルを傷め、走行中の事故につながる危険性も生じるわけですね。
「適度なサイズ」なら大きな問題はない
結論から言えば、ホイールスペーサーは確かにベアリング摩耗を早める可能性があるものの、厚み次第でその影響は大きく変わります。
- 薄いスペーサー(例:5mm程度)なら影響はほぼ無視できるレベル
- 厚みが増すほど摩耗は早く進行
つまり「やりすぎなければ問題は小さい」と言えますが、一般には独立懸架式よりも、ソリッドアクスル(リジッドアクスル)車のほうがベアリングへの影響が少ないとも言われています。
ホイールスペーサーには二種類ある
参考までに、ホイールスペーサーには大きく分けて二種類あり、ひとつは「板状」になっていて、ハブとホイールとの間に挟んで「ロングボルトで共締めする」もの。
ただしこちらはロングボルトの強度の問題もあり、あまり「分厚い」スペーサーを使用することができない(あまり外側にホイールを出せない)といった問題も。
そしてこの問題を解決するのが「ハブ取り付け式」スペーサーで、これはハブにスペーサーをボルトにて(まずはホイールの代わりに)取り付けます。
そしてこのスペーサーには「ボルト」が生えており、このボルトを使用してホイールを取り付けるという形式で、「よりホイールを外側に出す」ことが可能となるわけですね。※ワイドトレッドスペーサーとも呼ばれる
乗り心地、フィーリングは確実に悪化する
そしてぼくの経験上ですが、ホイールスペーサーを装着すると「見た目は良くなるものの」確実に乗り心地やフィーリングが悪化することとなり、正直これは「許容できないレベル」だという印象。※驚くべきことに、ポルシェも純正にてスペーサーを用意していたことがあり、いかにポルシェ純正スペーサーであってもフィーリング悪化を避けることはできなかった
さらにワイドトレッドスペーサーだと、スペーサー自体の精度、ホイール自体の精度の差が「相乗効果によって増幅される」ことにもなりかねず、これは走行時の「ブレ」「振動」となって乗員へと不快感を与えます。
よって、ぼくがアドバイスできるとすれば、「タイヤを外に出したいのであれば、スペーサーを使用せずにホイールのオフセットを活用して外に出す」ということで、しかしこれでもベアリングに負担をかけることは間違いなく、そのため「なるべく軽いホイールを選ぶ(そのほうが車体に与える負担が小さいので)」ことをオススメしたいと思います。
まとめ
ホイールスペーサーは見た目や走りのために魅力的なカスタムですが、ベアリング寿命を縮めるリスクがあることは理解しておく必要があります。
適切なサイズと品質の高いハブセンタータイプを選べば、デメリットを最小限に抑えつつドレスアップを楽しむことができる反面、「品質の悪い」スペーサーはクルマの性能や機能、快適性を阻害する可能性があることも認識しておく必要がありそうですね。
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