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巨大スクリーン全盛の時代に「異議あり」。なぜタッチ操作から「物理ボタン」へと回帰するのか?ヒョンデ、フェラーリらが示す「新しいインテリア」とは

巨大スクリーン全盛の時代に「異議あり」。なぜタッチ操作から「物理ボタン」へと回帰するのか?ヒョンデはじめ数社が示す「新しいインテリア」とは

Image:Hyundai

| 物理スイッチの回帰には「操作性」「安全性」「操作する満足感」など様々な理由が存在する |

ほぼすべての自動車メーカーが「物理ボタンへの回帰」傾向を強めるのは間違いない

この10年間で、多くの自動車メーカーがインテリアに巨大なタッチスクリーンを採用してきましたが(おそらくそのきかっけとなったのはテスラである)、最新のメルセデス・ベンツGLC(EQテクノロジー搭載車)では、39.1インチという圧倒的サイズのスクリーンに主要機能が集約されています。

さらに中国自動車メーカーの多くは、ドアミラー調整やヘッドライト操作までインフォテインメントスクリーン内に組み込むケースもあり、「操作の複雑化」が懸念されている、というのがこれまでの自動車業界を取り巻く状況です。

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Image:Mercedes-Benz

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なぜ「物理ボタンへの回帰」が行われるのか?

ただ、この流れからひとつの変化が生まれており、それが今回の主題である「物理スイッチへの回帰」。

この理由にはいくつかが存在し、まずひとつは「安全上の理由」であり、たとえばオーディオのボリュームを下げようと思っても、メインスクリーンにタッチしてオーディオに関する項目をよびだし、そこから音量、さらにスライダーやボタンを操作して音量を下げるというプロセス(階層)を経ていると「運転中の注意が削がれてしまう」わけですね。

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一方、従来の「ノブ」を用いたオーディオ音量コントロールであれば、そのノブ(つまみ)を回すだけで音量をコントロールすることが可能であり、これだと「直感的に、そして一瞬で」操作が完了します。※機能を呼び出すタッチ式ではなく静電式スイッチであっても、感度が悪い、フィードバックがないので操作を受け付けたかどうかわからないといった問題が指摘されている

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実際のところ、多くのユーザーが上述のような「全部タッチ式」になってしまった操作系(あるいは静電式)に対しては不満を噴出させており、こうした不満に対応しようというのが(物理式スイッチへの)一つの理由です。

そしてもうひとつは「安全性に係る評価」であり、ユーロN CAPでは、すでに「タッチ式でしか主要操作ができないクルマの安全性評価を引き下げる」と発表していて、これは実際にタッチ式操作が「危険」であるということを示すとともに、自動車メーカーとしては「安全性評価が下がると、そのクルマが売れなくなる」という商業上の懸念が考えられ、この観点からもやはり”直感的に操作できる”物理ボタンへの回帰が始まっています。

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そのほか、ブガッティ・トゥールビヨンのように「100年経ってもその価値を維持できるよう、すでに時代の淘汰を受けて生き残った物理スイッチや機械的な操作を用いる(現代のタッチ式スイッチは将来的にホログラムなどに置き換えられる可能性もあり、そうなると今は”最新”でも、未来では”古臭い装備”になる)という例も。

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さらにいくつかのプレミアムカーメーカーは、たとえば機械式クロノグラフの「プッシュボタン」、あるいはロレックス・デイトジャストの「日付調整」のように、操作した際の感覚を記憶に残すことを考えており、感性に訴えるという意味において物理ボタンの復活そして導入を考えている、と言われています。

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アウディ グランドスフィア
アウディがインテリアのデザインについて180度翻意。物理ボタンをなくすとしていたものの「今後も、機械式腕時計のように、操作する楽しみを求めて物理ボタンを残す」

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ヒョンデ「コンセプトスリー」の新しい方向性

そこでIAAモビリティで発表された「(ヒョンデ コンセプトスリー)Hyundai Concept Three」は、従来の潮流に逆行する、そして物理スイッチへの回帰という最新のトレンドに対する新しい提案。

インテリアにはカスタマイズ可能なウィジェットを配置し、重要な情報はフロントガラス下部に直接投影(これはBMWがノイエクラッセで示した方法に近い)することで、ドライバーは視線を大きく逸らさずに必要な情報を確認できます。

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ヒョンデ
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ヒョンデ・デザインセンター長のサイモン・ローズビー氏は「シートヒーターやエアコン、音量調整といった頻繁に使う機能まで階層化されたメニューに隠すべきではない」と強調。

タッチスクリーンは残るものの、使い勝手を重視し、物理ボタンを再評価する姿勢を示しています(タッチ式、あるいはデジタル、そしてそれらとアナログとの新しい共存だとも受け取れる)。

「巨大スクリーンの時代は終わるのか?」

さらにヒョンデは今後18か月以内を目処として、市販モデルにてタッチスクリーン依存を減らしていく方針を打ち出しています。

これはジェネシスを含むブランド全体の哲学にも関わる大きな転換点で、「18ヶ月以内」ということは、フルモデルチェンジを待たず、マイナーチェンジにてこの対応を行ってゆくということになりそうですね。

 「私たちの哲学は“視線は道路に、手はステアリングに”。頻繁に使う操作は直感的に行えるべきです」

ヒョンデ・デザインセンター長 サイモン・ローズビー

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同様の動きはフォルクスワーゲンでも見られ、顧客からのフィードバックを受け、デジタル主体の内装から再び物理ボタンを復活させつつありますが、「コンマ数秒を争う」フェラーリにおいても同様の傾向が見られ、ハイパーカー「F80」を皮切りとして(296スペチアーレ、そしてアマルフィでも)ステアリングホイール上には物理スイッチが復活しています。

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つまるところ、それぞれの自動車メーカーがそれぞれの理由にて「タッチ式」操作、そして巨大なインフォテイメントスクリーンの採用から距離を置くという流れがいま生じているわけですね。

まとめ:安全性と直感性を重視する新たな潮流

ヒョンデ「コンセプトスリー」は、アイオニック3のデザインへと発展するものと見られており、自動車業界はこれまで「スクリーンの大画面化」に進んできたものの、ユーザーの利便性と安全性、そして満足度を考慮した「物理操作回帰」という逆方向の流れが始まりつつあります。

今後、他メーカーもヒョンデやブガッティ、フェラーリ、そしてフォルクスワーゲンの動きに追随し、様々な観点から、それぞれのブランドが、そのブランドの方向性にマッチした方法にて、次世代インテリアの在り方を再定義していくのかもしれません。

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参照:Hyundai

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