アストンマーティンの税引き前利益が約30億円を記録。
以前にはロータスが25年ぶりに黒字化とお伝えしましたが、歴史のあるイギリスの自動車メーカーが揃って好調なのはうれしい限りです。
アストンマーティンにおいて、半期であっても黒字になるのはここ10年で初めてのことで、そしてこれは「DB11効果」とも言えるもの。
つまりはDB11のヒットが業績回復をもたらしたことになりますが、第二 四半期だけ見ると、なんと利益は「昨年の2倍」。
通年でも倍近くの利益を上げており、おそらく「2017年通しても」黒字化は間違いなさそうですね。
なお販売台数だと2017上半期においては67%増加の2349台。
販売価格についても「1台あたり」25%上昇したとのことで、これは高額な限定モデルが貢献しているのかもしれませんね。
国別だとアメリカ、イギリス、中国がトップマーケットとなり、まずまずのバランスでの分布です。
今後アストンマーティンにおいてはヴァンテージのモデルチェンジ(ボンドカー”DB10”に似ていて格好良い)、ブランド発のクロスオーバー「DBX」の登場が予定されており、ここからさらに成長することが期待できそうです。
アストンマーティンが公式で「新型ヴァンテージ」のティーザー画像をリリース。ボンドカー”DB10”に近いイメージ?
なお、「DB11」はV12ながらもターボエンジンを搭載したことで「アストンマーティンらしくない」と旧来のファン(一部)から否定的な反応があったものの、ふたを開けると大きな成功作に。
ポルシェの水冷化、ミニがBMWへと移行した際も同様の反応と結果で、「今までにはなかった」ユーザー層を獲得することとなり、メーカーとして「前に進むためには」何かを切り捨てたり犠牲にすることも重要である、ということもわかります(それができずに衰退してしまうメーカーも多い)。
加えてアストンマーティンの場合、異常に高額でパフォーマンスの高い限定モデル(ヴァルキリーやヴァルカン)、ヴァンキッシュ・ザガートシリーズのような「超限定で高価なモデル」を連発したことがブランドイメージを引き上げ、新しい顧客層の流入を招くことになったのでしょうね(もちろんアストンマーティンによるブランディングの一環だと思われる)。
アストンマーティンがここ10年で初めて「第一四半期単体で黒字」に。
これはもちろん「DB11効果」で、いかにDB11がヒットしたか、そしていかにヒット商品の存在が重要かということがわかります。
その結果利益はなんと9300万ポンドから1億8800ポンドへとほぼ倍増。
販売台数も75%増加の1200台となっており、尋常ならざる伸びと言えそうです。
なお日本(4月)においてはアストンマーティンの登録台数は前年比2倍以上、228%となり「31台」。
4月の国内輸入車販売。フェラーリがランボルギーニを抑え、ポルシェはなぜか前年比半減という異常事態
アストンマーティンはずっと赤字続きなるも、だからこそ「待ち」ではなく「攻め」の経営を展開。
積極的にヴァンテージやヴァンキッシュの限定モデルを展開し、その中でも「One-77」「ヴァルカン」「ヴァルキリー」といった超高価格なモデルの発表しています(ふつう赤字だったらこんな思い切ったことはできない。しかしアストンマーティンというブランドがあってこその戦略であり、ブランドの重要性もここで理解できる)。
加えてラゴンダのリブート、ラピードのEV化、ブランド初となるSUVのDBX投入など多数の新モデルを計画しており、そのための資金獲得については「煮え湯を飲まされた」中国に屈する形で中国企業と組んだり、お膝元の英国の援助を得て英空軍基地を譲り受けるなど戦略的に展開中。
あらゆる可能性を追求し前に進む姿勢、苦しい時こそ攻勢に出るという考え方、ビジネスという戦いの場においてはなりふり構わぬというアグレッシブな行動は世界中の自動車メーカーの中では群を抜いており、近年の自動車史に刻まれるほどの偉業ではないかとぼくは考えています。
なおスーパーカーメーカー(ブランド)の販売台数で言うとフェラーリが8200台、ランボルギーニが3400台、マクラーレンが3200台、アストンマーティンが3700台となっていますが、アストンマーティンについてはおそらく2107年に4500台くらいをデリバリーするのでは、と見られているようですね。
関連投稿:アストンマーティンは2015年通期で前年比2倍の赤字。これで3期連続となりちょっと危険
アストンマーチンの2015年通期は2014年に比べ、税引き前でおよそ前年比で倍の赤字となる見込み。
その額1億7200万ドルですが、2014年も赤字、2013年も赤字だったのでかなり苦しい状況だと思われます。
なお2014年の販売は3661台、2015年の販売は3615台と微減ですが、新型クロスオーバー、DBX生産のための工場建設やDB11開発の設備投資がかさんだためと思われます。
反面良いニュースもあり、DB11の受注が好調とのことで、これは会社の利益を20%ほど改善できる見込み。
ただし販売台数としては他の落ち込みがあり、トータルでは2015年と同様の台数に落ち着くと見ているようですね。
アストンマーティンが存続の危機にある模様。
2014年には2013年の3倍の赤字を計上し、いまだ状況改善の見込みが無いようです。
中国での販売減少、リコール問題、工場への投資などが累積した結果ですが、ちょっと先行きが暗い感じですね。
アストンマーティンはフォード傘下からプロドライブとクゥエートの投資グループの所有に移っていますが、ポルシェはVWアウディ、ランボルギーニもVWアウディ、フェラーリはFCA(フィアット・クライスラー)というように大きなグループに属しない独立系。
しかしながら現在まで8回もオーナーが変わるなど安定した時代がなく、したがって発表したモデルも大きな改良が出来ないまま今日に至ります(とくに電子デバイスや駆動力のコントロール。そのため馬力に対して加速が鈍い)。
このままだとどこかに買収される可能性がないとも言えず、AMGが見送ったようにほかの買い手がつかなければブランド消滅の可能性も。
ただし中国企業は興味を示すでしょうし、もしかすると英国ブランドつながりでジャガー・ランドローバーを保有するタタが興味を示す可能性も。
とくにタタにとっては、007映画での効率的なプロモーションや、ジャガー・ランドローバーにはないスーパーカーセグメントでの可能性が拓けるという意味では魅力的かもしれません。