| アストンマーティンはなんとしてもDBXを成功させなければならない |
アストンマーティンはカナダの富豪にしてレーシングポイントF1チームのオーナーでもあるローレンス・ストロール氏の出資を受け入れていますが、その額はなんと700億円超。
よく個人の裁量でこれだけの額を出せるものだと驚かされるものの(実際に出資するのは同氏が率いるYew Treeコンソーシアム)、この資金はアストンマーティン初のSUV、DBXの製造資金に充てられるようですね。
なお、アストンマーティンはDBXそして今後生産するであろうハイブリッドカー製造拠点としてウェールズに工場を建設していて、これに相当な資金を費やしたがために資金難に陥った模様(予定ではもっと早くヴァルキリーをデリバリーし、現金を得ていたはずだったのかも)。
数年前には「自動車業界最速で成長」と報じられたものの、得たお金のほとんど、もしくはそれ以上をこの生産設備とDBXの開発につぎ込んだと考えられ、アストンマーティンはとにかくお金がないと報じられていただけに、ローレンス・ストロール氏の提案は「渡りに船」だったのでしょうね。
ただ、それだけの資金を得てもアストンマーティンの資金繰りは十分ではなく、1年を待たずして資金が尽きるという報道もあり、これはまさに驚愕の事実。
もしもローレンス・ストロール氏からの援助がなければすでにアストンマーティンは倒産していたのかもしれず(アストンマーティンは過去に数回の倒産を経験している)、こういった状況を理解しながらも投資するローレンス・ストロール氏もなかなかに懐が深い人物だと言えそう。
DBXはアストンマーティンに破滅をもたらすのか、もしくは救世主か
そしてこういった状況において、もしDBXが成功しなければ、かなり高い確率でアストンマーティンは経営破綻することになると思われ、というのも「投資した金額を回収するのが不可能になるから」。
DBXの成功を見込んで建設した工場の生産設備も「遊んだまま」となりお金を産むことはなく、現在計画されている「新型ヴァンキッシュ」など多くのクルマの発売計画がキャンセルされることになるのかも。
そう考えるとDBXは「大きな賭け」でもあり、ローレンス・ストロール氏にとってもアストンマーティンへの投資は「まさにギャンブル」ではありますが、現時点でDBXの受注についてのニュースは聞こえて来ず、ということは思ったほどのオーダーが集まっていない可能性もあって、黄色信号が灯った状態なのかもしれませんね。
なお、同氏は来シーズンよりアストンマーティンブランドにてF1に参戦する計画についても公表済みですが、そうなると現在アストンマーティンがパートナーシップ契約を結んでいるレッドブルとは「ライバル関係」ということになり、こちらの提携関係は解消することになりそう。
アストンマーティン初のミドシップそしてハイパーカーである「ヴァルキリー」はレッドブルとの共同開発であり、ヴァルキリーはまだまだ開発中だとされるものの、この開発、そして今後のミドシップスポーツカーの開発にも何らかの影響が出るのは間違いなく、すでに報道された「ラゴンダブランドの再スタートの延期」とともに大きく計画修正が要求されることになるものと思われます。
アストンマーティン現CEO、アンディ・パーマー氏は強いリーダーシップにて同社を牽引してきたものの、そのアグレッシブな戦略が裏目に出たということになり、これには2008年のロータス(一気に5モデルを発売するという計画を立ち上げたが、あまりに性急すぎるとしてCEOが解任された)を思い出さずにはいられません。
ぼくとしてはアストンマーティンの復活劇、そしてアンディ・パーマー氏のストラテジーについて高く評価していただけに、DBXのヒット、そして今回の危機の払拭を期待したいと思います。