| 再建にあたっては343億円相当の新規株式を発行 |
苦境ばかりが報じられるアストンマーティンですが、その苦境を脱するために2億6000万ポンドもの新規株式を発行する、との報道。
このうち11億9000万ポンドが先行して発行され、25%は新オーナーのローレンス・ストロール氏、8%は以前のメインオーナーであるプレステージ・モータースが購入することになるそうですが、これによってさらにローレンス・ストロール氏の影響力が強まることになるのは間違いなさそう(それにしても、とてつもない資金力だな・・・)。
アストンマーティンは意外と在庫車が多かった
ローレンス・ストロール氏は「需要と供給を正しいレベルに戻し、在庫を抑えることがトッププライオリティ」と語っていて、428台あった2020年第一四半期の在庫を、直近で189台にまで抑える計画を持っている模様。
アストンマーティンはこれまで「業界最速で」成長した会社として記録されていたものの、もしかするとその台数の多くは「ディーラーに負担をかけること」で達成されていた可能性もあり、それが明るみに出ることで「アンディ・パーマーCEOの予定外の解任劇」となったのかもしれませんね。
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アストンマーティンの販売台数の推移はこうなっている
アストンマーティンのグローバル販売台数(登録台数ではない)について、2015年には3,615台だったものが2019年には5,110台へと増加。
ちなみにマクラーレンは2015年に約3,200台、2019年には3,340台だったので、アストンマーティンは成長率としてはかなり高かった、と言えますね。
参考までにフェラーリは2015年に8,398台から2019年には10,391台、ランボルギーニは3,815台から8,205へと成長しています(ランボルギーニの場合はウルスの影響が大きい)。
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そしてちょっと気になったのが、「アストンマーティンの在庫車が428台」ということ。
これは3,340台という販売台数(2020年はもっと少なくなる目算)からすると相当に大きな数字で、アストンマーティンのこれまでの成長は、在庫を顧みず生産しまくった結果であり、つまり「出荷台数を多く見せていただけ」という可能性が高そうです。
なお、ランボルギーニとフェラーリは基本的に「100%受注生産」であるために在庫車というものは(特殊事情を除いて)存在せず、製造台数=販売台数だと考えて良さそう。
よって、いかにコロナウイルスが猛威をふるおうと、フェラーリとランボルギーニは「数ヶ月前に受けた注文分を生産して納車するだけ」なので販売台数が減ることはなく(ただしこれからの受注分については不透明)、しかしアストンマーティンの場合は「在庫車の販売比率が高かったため」コロナ禍においては大きく販売が減少したのだと考えることもできそうです。
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米経済誌「フェラーリのブランド力はコロナウイルスを跳ねのける。困難な状況下でも21%の上昇を見せた」
| ただしコロナウイルス前に比較すると7%下落、しかしフォードは43%も下落 | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/49785923753/in/ ...
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実際に(北米では)値引きに転じるディーラーも登場したとも報じられ、在庫車比率が高かったことも裏付けられていますが、長期的に考えると、今回のコロナウイルスの影響にて生産が一時的に停止し、そして在庫車を捌くことで需給のバランスを正常に戻すことが可能となるため、「(コロナ禍が発生せず)行くところまで行ってバブル崩壊」よりは良かったのかもしれません。
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ついにアストンマーティンが「コロナの影響で」100万円以上値引き開始との報道。加えて数年単位でリース利率”ゼロ”を打ち出す高級車メーカーも
| 北米ではベントレー、ランボルギーニがリース利率ゼロ、ポルシェは支払猶予といった対策も | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/433036211 ...
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そして、ローレンス・ストロール氏はアストンマーティンの問題について正しく認識して「本来の姿に戻そう」とするだけの判断力と行動力、そして一時的な悪化に耐えられるだけの体力(資金)を持つということになり、数年後にはアストンマーティンの救世主として語られることになる可能性も。
ただ、「成長」に関しては魅力的なニューモデルなしでは成し遂げることはできず、ここからどういった戦略を取るのか(これまでの路線継続なのか、仕切りなおしなのか)については注視を要するところですね。