| これからのアストンマーティンは「今まで」とは大きく異なり、積極的に様々な分野の様々な技術を取り入れることになりそうだ |
とくにF1からの技術移転は今後の製品づくりの「コア」となるかもしれない
さて、アストンマーティンは約束通り6月末に「今後5年間の計画」を投資家向けに発表したと言われますが、現時点ではその情報は断片的に伝えられるのみで、先日は「内装やエアコンに使用されるパーツが中国製になる」ということが報じられています。
そして今回報道されているのが「アストンマーティンの将来のEVについて」。
-
アストンマーティン「今後、中国の吉利汽車からシートやエアコン関連の供給を受ける」。開発速度向上とコスト削減を主眼に大きく方向性をシフト
| ただしそれも「既存ラインアップを入れ替え終わるまで」のことだと思われる | 現在、アストンマーティンはそのラインアップを刷新することが最大の課題である さて、先日はニューモデル「DB12」を発表し ...
続きを見る
アストンマーティンのEVは「クワッドモーター」に
今回の報道の主人公はアストンマーティンの最高技術責任者であるロベルト・フェデリ氏で、同氏によれば、「アストンマーティンの将来のEVには4つのモーターが搭載され、フロントアクスルには来年のヴァルハラに搭載されるのと同様のツインモーターが採用される」。
「現在我々は、次世代のフロント・ツインモーター・アクスルの開発方法を研究しているところです。ルシードのコンポーネントの特徴として、私たちが非常に気に入っているのはサイズです。コンポーネントのサイズは、私たちのプラットフォームに非常に適しています」とも語っており、すでに(先日提携を発表した)ルシードのエレクトリックパワートレーンを使用することを前提にした開発を行っていることを明かしています。
なお、現時点では「ニューモデルの投入を優先している」ためか、既存のルシード製エレクトリックパワートレーンを使用する可能性が大きく、しかし将来的にはルシードの技術をベースにしつつも「自前の」エレクトリックモーター含むパワートレーンを設計するとも(以前に)語られていますね。
エレクトリックパワートレーンはスポーツカーにも
そしてロベルト・フェデリ氏はこのエレクトリックパワートレーンをスポーツカーにも搭載することを示唆しており、「ヴァンテージより少し低いルーフ高で電気自動車を作れるようにしたい」とも。
一般にピュアエレクトリックカーはフロアにバッテリーを敷き詰めるのでどうしてもフロアが高くなって全高も高くなってしまうのですが、ポルシェ・タイカンはこれを解決するためにバッテリーを一部「逃し」、フェラーリはバッテリーを分散されて搭載する構造を特許にて出願し、そしてロータスはフロアではなくシート後方へバッテリーを「ミドシップマウントする」構造を採用することになるもよう。
-
フェラーリがEV用プラットフォームの特許を出願!ガソリンエンジンではできない構造を採用し、完全に新しい考え方を導入した新世代へ
| この新しいフェラーリのプラットフォームは「見れば見るほど」よく出来ているようだ | この図面を見るに、他社もうかうかしてはいられない さて、フェラーリは現在スーパーカーメーカーの中でも先陣を切って ...
続きを見る
なお、現時点でアストンマーティンがどのような手法を採用するかはわかりませんが、おそらくは「分散」型になるものと思われ、「機内持ち込みトロリーに入るほど小さく、しかし密度が高い」とされるルシードのバッテリーを有効に活用するものと見られます。
加えてロベルト・フェデリ氏は、クワッドモーター・セットアップについても述べており、電気自動車における4輪トルクベクタリングは「ガソリンエンジン採用の」DBX707が持つトルクベクタリングとは(サスペンション、シャシー、トルクベクタリングそのものの変更によって)まったく異なるものになるだろうともコメント。
-
アストンマーティンが「まさかの」米ルシードとの提携を発表。ルシードの技術を使用しエレクトリック「ハイパーカー、スポーツカー、GT、SUV」を開発
| アストンマーティンは内燃機関に固執するかのように見えたが、2030年までにはピュアEV中心のラインアップへ移行するようだ | それにしてもまさかルシードと提携するとは予想だにしなかった さて、アス ...
続きを見る
加えて「私たちの目標は、来年の初めまでに最初のプロトタイプを走らせることです。プラットフォームを代表する最初の試作車、つまり、このプラットフォームで開発したい最も複雑なモデルを、来年の初めまでに走らせることです。夏の終わりまでには、テストベンチにフルパワートレインを載せる計画を持っています」と述べ、(トルクベクタリングについて)DBXとの比較を行ったところからも”アストンマーティン最初のEV”はSUVになるだろうと見られているようですね。
さらにアストンマーティンは、フォーミュラ1が将来のモデルに影響を与え、それは空力開発にも及ぶだろうと繰り返し主張しており、「抵抗をできる限り減らすために、テールゲートにエアを吹き付けるアイデアもあります。これは航続距離に必要なエネルギーを搭載すると車重が重くなるという現象を避けるために必要なことなのです」とも。※フロントから取り入れたエアを後方へ向けて噴出させて空気の剥離を促すようだが、これもある意味ではアクティブエアロと言えそうだ
そのほか、ピレリ製の新しいサイバー・タイヤ、キャリパーのピストンを電子制御化して空気抵抗を低減するブレンボ製の斬新なコンセプトを持つブレーキシステムの採用も示唆されており、新世代アストンマーティンは「あらゆる分野から、あらゆる技術を」取り入れることになるのは間違いないものと見られます。
あわせて読みたい、アストンマーティン関連投稿
-
アストンマーティン「今後、ロードカーもF1と同じ思想で開発する。1/10秒を削るために思案をめぐらし、常にライバルを注視し、その先をゆくことでベストであり続ける」
| アストンマーティンは新しい経営者を迎え、大きく変革しつつある | そしてアストンマーティンは、過去を尊重しながらまったく新しい方向へ向かおうとしている さて、ここ最近大きく方向転換を図っているアス ...
続きを見る
-
アストンマーティン「今後の計画にセダンは一切含まれません。我々の超高級化・超高性能化戦略において、セダンは必要ではないのです」
| アストンマーティンはその方向性を大きくシフト、1台あたりの利益を最大化する方向へ | それでもアストンマーティンが「セダンを廃止する」というのは大きな驚きでもある さて、アストンマーティンは今月2 ...
続きを見る
-
アストンマーティン「我が社のミドシップカーは今後すべて限定生産になる。最も忠誠心の高い顧客に割り当て、ブランドロイヤルティ向上を図る」
| アストンマーティンの経営方針はこれまでになく明確であり、その未来はおそらく明るい | 完全な変革を終えるまでには数年がかかるだろうが、非常に強固なブランド基盤を形成するだろう さて、先日「フェラー ...
続きを見る
参照:Auto Express