| 最近のアストンマーティンは自社の強みを極限まで生かした製品開発を行うようになり、非常に魅力的なクルマを作るようになった |
加えて自社ラインアップ間での差別化も適切に行われ、いずれのモデルにも「積極的に購入する理由付け」がなされる
さて、アストンマーティンが待望の新型ヴァンテージを発表。
まずその特徴をまとめると以下のとおりです。
新型アストンマーティン ヴァンテージの特徴
- 665馬力を発生する4リッター新型V8ツインターボエンジンを搭載
- 前後重量配分50:50
- 業界をリードするアクティブ ビークル ダイナミクス、ビルシュタイン DTXアダプティブ ダンパー、電子リア ディファレンシャル (E-diff)、専用に開発された21インチ ミシュラン パイロット S5 タイヤ装備
- まったく新しいインテリア構造と特注の最先端のインフォテインメントシステム
- 0−100km/h加速3.4秒、最高速325km/h
- 納車は2024年第2四半期に開始予定
新型アストンマーティン・ヴァンテージはこんなクルマ
アストンマーティンは”スーパーツアラー”と自ら称するDB12 / DB12ヴォランテを発表して間もないところですが、そのDB12に対するヴァンテージのポジションは「スーパースポーツ」。
つまりはGTカーではなくピュアスポーツを標榜したのがこのヴァンテージということになりますが、それを実現するのはアストンマーティンいわく「息をのむようなパワー、カミソリのような鋭いハンドリング、細かく調整されたフロントエンジン」。
なお、アストンマーティンがはじめて「ヴァンテージ」の名を使用したのが1964年の「DB5”ヴァンテージ”」。
その後1970年代にはじめて独立したモデルとしてヴァンテージが登場することとなり、今に至るまでこのヴァンテージの名は完璧なスタイル、忘れられないパフォーマンス、比類のない個性の代名詞となっています。
今回の新型ヴァンテージはアストンマーティンの111年の歴史の中で最もダイナミックな時代を反映した意欲作であり、アストンマーティンのアメデオ・フェリーサ最高経営責任者(CEO)は新型ヴァンテージの発表に際し以下のようにコメントしています。
「高性能車の世界では、極めて重要な変化の時期を迎えており、我々にとって、伝説的なブランドを築き上げてきたDNAに忠実であり続けることが不可欠です。ヴァンテージの名を冠したクルマには、それにふさわしい要素がたくさんあります。だからこそ、この最新モデルに対し、最も純粋かつ明確な形で高性能を追求するという揺るぎない取り組みを行ってきました。 クラス最高のパワーとスピードがその確固たる地位を確立し、ヴァンテージの完璧にバランスのとれたフロントエンジン・リアドライブのシャーシは中毒性のあるパフォーマンスを発揮します。 主張のあるスタイリング、まったく新しいインテリア、最先端のインフォテインメントを備えたヴァンテージは、あらゆる点で世界トップクラスです。
新型アストンマーティンヴァンテージのパフォーマンスは驚異のレベルに
新型ヴァンテージに積まれる4リッターV8ツインターボはおなじみメルセデスAMGの供給によるものではありますが、最高出力665PSと800Nmという巨大なトルクは先代に比較して155PSと115Nmの増加(それぞれ30%と15%の向上)に相当します。
これらの高出力は、アストンマーティンのエンジニアによる広範なチューニング、変更されたカムプロファイルの採用、圧縮比の最適化、大型ターボ、冷却の強化によって達成され、印象的な新しい数値を生み出し、よりシャープで、より直感的でなキャラクターを備えたエンジンへと変貌を遂げることに。
このエンジンに組み合わせられるのはZF製の8速オートマチックトランスミッションで、レスポンスと楽しさを最大化するためのチューニングが施され、よりパンチの効いたインギア加速を実現するためのファイナル ドライブ レシオ短縮 (3.083:1)、変速スピードを向上させるためのトランスミッション シフト キャリブレーションなどが盛り込まれています。
加えて、新しいローンチコントロールシステムの導入によってタンディングスタートの加速が”完璧”なものとなり、このローンチ コントロールはパワートレイン、トランスミッション、エレクトロニック スタビリティ プログラム (ESP) と完全に統合されることになりますが、アジャスタブル トラクション コントロール (ATC) システムによってスリップ量を調整することも可能となり、つまりはドリフトコントール機能を備えるようですね。
新型ヴァンテージではパワートレーンのみではなくシャシーも強化されており、再設計され再配置されたフロントボディクロスメンバー、フロントエンジンクロスブレース、リアサスペンションタワーの強化(29%剛性が向上)、フロントとリアのアンダートレイの修正、ダンパーのフロントとリアの取り付け剛性向上等が行われ、これらによって精度、ハンドリングバランス、ドライバーへのフィードバックが目に見えて向上し、全体的な洗練性が高まったのだそう。
このほか、力配分の帯域幅が500%増加したインテリジェント アダプティブ ダンパー、電子パワーアシスト ステアリング システム (EPAS) 、ヴァンテージ専用に設計されたミシュラン・パイロットスポーツ S5タイヤ、 21インチ鍛造アルミホイールといった装備もアナウンスされています。
アストンマーティンにて最高技術責任者を務めるロベルト・フェデーリ氏は「2024年現在、真に優れたスポーツカーを作る技術とは、ドライビングエクスペリエンスを強化する方法で最先端のテクノロジーを適用することを指しますが、これはドライバーを運転のプロセスから排除するものではありません。新型ヴァンテージは従来のモデルに比べてパワーとトルクが大幅に向上していることで話題になるでしょうが、愛好家や純粋主義者を魅了するのは、そのような途方もないパフォーマンスを展開する鮮やかな方法です。 業界をリードするアクティブ ビークル ダイナミクスを活用した、完璧にバランスの取れたフロント エンジン後輪駆動シャーシにより、完全な機能と進歩性および活用性を組み合わせています。 力強いスタイリングと調和し、最新のコネクテッドテクノロジーとインフォテインメントを満載した、まったく新しい超高級インテリアによって完成される由緒ある伝説の完璧な現代的解釈がこのクルマなのです」と語っており、新型ヴァンテージはまさに「ドライバー中心」のクルマだと考えて良さそうですね。
なお、新型ヴァンテージは全幅が30mm拡大されてより力強いスタンスを持つに至り、グリル開口部は38%大きくなるなど完全に再設計されることに。
ヘッドライトは新しいマトリックス LEDランプを備えた完全なる新設計を持ち、これによってその表情が仙台に比べて「よりアストンマーティンらしく」なったように思えます。
加えてサイドストレーキの「復活」、フレームレスドアミラーと、新しいドアハンドル、リアバンパー上のサイドベント、より大きな直径を持つクワッドエキゾーストテールパイプも新型ヴァンテージの外観における大きな特徴。
アストンマーティンの最高クリエイティブ責任者(CCO)、マレク・ライヒマンによれば「アストンマーティンには刺激的なモデル名が数多くありますが、ヴァンテージほど興奮とダイナミズムを呼び起こすものはありません。 新しい車のパワーとパフォーマンスの大幅な向上を捉えるために、筋肉質を高め、彫刻的なフォルムをシャープにして、その体格を強調しました。 私たちは One-77 スーパーカーからインスピレーションを得ましたが、その意図と効力をより明確に表現したいと考えました。 ひと目見ると、本物のパンチが詰まっていることがわかりますが、その生のパワーを支える洗練さをほのめかす、フォルムとプロポーションの優雅さが漂っています。 瞬間的な視覚的インパクトとゆっくりと燃え上がるカリスマ性のこのバランスは、運転体験を反映しており、ヴァンテージの本質を完璧に捉えています」。
用意されるボディカラーは21色、そしてすべてのアストンマーティンモデルと同様に、ヴァンテージの顧客は「Q by アストン マーティン パーソナライゼーション」 を通じて無限のオーダーメイドやカスタマイズの可能性を探ることができ、「Q」のデザイナーや職人のスキルを活用することで1つの小さな特徴的なディテールから真のワンオフを作成するための完全オーダーメイドに至るまでのカスタムが可能となることにも言及されています。
新型アストンマーティンヴァンテージのインテリアはこうなっている
上述の通り、新型ヴァンテージは「本質的にはハードコアなスポーツカー」として馬割れ変わっていますが、これはデザイン、快適性、装備に関して犠牲を払うという意味ではなく、新しいアストンマーティンの流儀に従って最高級の素材で覆われ、最先端のコネクテッド テクノロジーとオーディオ パートナー(バウワース&ウィルキンス)が開発した素晴らしいサラウンド サウンド システムによって「息を呑むような超高級なインテリア」が実現されています。
インテリアの核となるのは「すっきりとした切れ目のないライン」で、これを端的に表すのはエアコンベントに統合されたインフォテインメントスクリーン、そしてセンターコンソールの下部にある物理スイッチの配列だとされ、これらは新型ヴァンテージにおける「機能美と触覚品質」の象徴。
ちなみに標準オーディオは11スピーカーからなる390Wのアストンマーティン・オーディオシステムですが、オプションではBowers & Wilkins製ハイエンドオーディオを選択でき、これはもちろんヴァンテージの内部容積と形状に合わせて音響設計がなされ、アルミニウム ダブル ドーム ツイーターと Continuumミッドレンジ スピーカー含めて15スピーカーを内蔵しています(出力は1,170W)。
ヴァンテージは、アストンマーティンの次世代インフォテインメントを搭載した2番目のモデルとなり、これは 社内で作成され、DB12で初めて導入されたもので、完全にゼロから開発されています。
iOS および Androidデバイスをサポートし、これらを統合するのは10.25インチサイズのマルチスクリーンシステムであり、この下にはギア選択、ドライブモード選択、エアコンなどの主要な機能操作用のボタンが配置されることに(もちろんフルデジタル化しないのは、利便性を考慮してのことである)。
新型ヴァンテージの生産は2024年の第1四半期に開始され、最初の納車は2024年の第2四半期中に開始される予定だとされており、日本においても価格含めての正式発表が追ってなされることになりそうですね。
新型アストンマーティン・ヴァンテージのプロモーション動画はこちら
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参照:Aston Martin