| それにしてもよく当時の車両の記録が現代にまで残っていたと思う |
そして当時のベントレー・スピードシックスを再現した技術者や職人には脱帽である |
さて、ジャガーやアストンマーティンなど英国の歴史ある自動車メーカーにてちょっとしたブームとなっているのが「コンティニュエーション」シリーズ。
これは「継続生産」を意味しますが、以前に「生産を予定していたものの、何らかの理由で生産できなかった」クルマを今この時点で生産するというもので、当時の工具や当時の素材、そしてパーツを使用して「当時のままに」作り上げることを目的としています。※ベントレーは「レプリカ」「復刻」ではなく、あくまでも継続生産だとコメント
もとはというとジャガーが「火事で作れなくなってしまった」XKSSの追加生産を(2016年に)行うと発表したことに端を発し、ジャガーはその後D-Type、そしてC-Typeの生産を行っています。
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ベントレーも「ブロワー」を”継続生産”
なお、こういった継続生産もしくは追加生産につき、歴史ある自動車メーカーならでは、そしてアイコニックなクルマそしてその背景ありきということになりますが、長い歴史を誇るベントレーもその「素材」には事欠かず、まずは1929年の「ブロワー」の継続生産を成功させ、そして現在は1930年の「スピードシックス」の生産を進行中。
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そして今回、そのスピードシックスの継続生産第一号車が完成し、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにてこれを公開するとしていますが、なんとスピードシックスが新車として生産されるのは93年ぶり。※この一号車はエンジニアリングのテストに使用されるプロトタイプ(ベントレーではカー・ゼロと呼ぶ)で、顧客納車用ではなくベントレーがテスト・保管するための車両
ベントレーはこのスピードシックスの生産に際し、ベントレーのアーカイブから集められたオリジナルのドローイングやメカニックのメモをもとに製作しており、プロジェクト開始からこの1号車の完成にまで10ヶ月を要しています。
加えてベントレーは「1930年のル・マン24時間レースに参戦した車両と全く同じ仕様」を再現すべく、上述の資料に加え、ベントレーの自身が所蔵する1930年製のスピードシックスや1930年にル・マンに出場した、通称「オールドナンバー3」からもデータを収集し、エンジンだけでも(ブロワーですでに用意したパーツに加え)600もの部品を新設計したのだそう。
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さらにはパーツのみではなく当時のペイントやレザーを再現することにも心血を注ぎ、このカー・ゼロは当時のボディカラーそして内装色をもって仕上げられているそうですが、2台目以降の「顧客スペック」については”お客様一人ひとりの快適なニーズに合わせたパーソナルフィッティングサービスが提供される”と紹介されており、たとえば自身のお気に入りのベントレーに合わせた仕様へとカスタムできるのかもしれません。
ちなみにベントレー特有の「マトリックスグリル」につき、当時のル・マン24時間レースのコースはあまり状態が良くなく、先行車の跳ね上げる石でラジエターが損傷することも少なくはなかったそうで、よってグリルを守るためにこのグリルが考案された、と紹介されています(ベントレーはル・マン24時間レース第一回目から参戦している)。
ベントレー・スピードシックスはすべて完売済み
もちろんこの「継続生産」となるスピードシックス(12台)はすべて完売済みとなっており、今後半年をかけてパーソナルフィッティングを行った後に生産を開始することになりますが、最後の一台の納車が完了するのは2025年を予定している、とのこと。
このスピードシックスは、6½リッターモデルのスポーティバージョンとして1928年にデビューしており、ロードゴーイングバージョンでは、SUキャブレター2基と高圧縮比が採用され、出力は標準の147馬力から180馬力にまで向上しています。※イギリス車は独特の数字での表し方をすることがあり、ベントレーでは「0.5」を「½」、ジャガーでは12気筒を「ダブルシックス」と呼んだりする
ベントレーは182台のストリートバージョンを生産していますが、少量が生産されたレーシングバージョンではさらに圧縮比を高め、出力が200馬力にまで高められることになり、もちろん今回生産される12台はこの「200馬力バージョン」。
ちなみにですが、今回ベントレーがスピードシックス「カー・ゼロ」を当時の設計図を元に、当時のままのパーツと工法で組み立てた結果、その出力は「205馬力」だったといい、いかに当時正確に出力を計測していたか、そしていかに現代のベントレーの職人が正確にそれを再現したかがわかりますね。
内外装の細部を見るに、当時は高圧プレス機やCNC切削機もなく、よって職人が板を叩いてパネルを成形したり、”手動にて”パーツを削ったり、そしてさらに研磨していたのだと思われますが、それだけにいずれのパーツも味わい深い作りとなっています。
欧州のことわざに「手だけを動かすのは労働者であり、手と頭を働かせるのが職人で、手と頭と心でモノを作る人は芸術家である」というものがあるそうですが、当時ベントレーの製造にかかわった人々、そして当時のクルマを現代に再現しようとする人々はみな「芸術家」なのかもしれませんね。
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参照:Bentley