| ベントレーは100周年記念の年にとんでもない隠し玉を持ってきた |
ベントレーがなんと、1920年代つまり「戦前に作られた」クルマを復刻し販売する、と発表。
このクルマは1920年代終盤に4台のみが作られたベントレー4.5リッター・ブロワー(Bentley 4 1/2 Blowers)。
このうち2台は1930年のル・マン24時間レースにカーナンバー「8」と「9」として出場し、とくに9号車はコースレコードを記録するなど他を圧倒する走りを見せたといいます(残念ながら途中でリタイヤ)。
そして今年の春に、ベントレーは100周年記念の一環として、このカーナンバー9のブロワーへのオマージュとして「ベントレー・コンチネンタルGT ナンバー9エディション・バイ・マリナー(Bentkey Continental GT Number 9 Edition by Mulliner)」を限定発売。
ベントレー史上もっとも特別、そして豪華な限定モデル!ベントレー・コンチネンタルGT ナンバー9エディション・バイ・マリナーが100台限定にて登場
つまりベントレーはこの「ブロワー」を重要資産のひとつとして認識しており、今回12台のみを当時の素材や製法のまま「追加生産」する、と決めたようですね。
貴重な当時の「現存する」ブロワーを分解してパーツをすべてアーカイブ
その「ブロワー」の追加生産を行うのはベントレーのパーソナリゼーション部門、「マリナー」。
まずはベントレーのエンジニアたちがこの「シャシーナンバーHB3403」を分解し、それをリスト化するとともに3Dスキャンを行ってデジタルモデルを作成することに。
ただし現代の技術を使用するのはここまでで、「新車のブロワー」の製造は当時の技術と工作機械を用い、ハンドメイドにて行われる、と発表されています。
基本的には「当時のまま」製造されるものの、現代の安全基準を満たすために(ということは登録と走行も可能)一部しかし最小限の変更が加えられる、ということにも言及されていますが、ベントレーは、ドラムブレーキ(ディスクブレーキの実用化は後にジャガーが行うことになる)やリーフスプリング式のサスペンションまでもが当時の構造や素材を再現されることになるとも述べており、エンジンも4,398ccスーパーチャージャー(240馬力)を忠実に再現。
ベントレーは「これは我々にとって新しいチャレンジで、自動車業界にとってもはじめて戦前のクルマを復刻するという特別なプロジェクトへの第一歩」と発表。
あわせて12人のラッキーなオーナーたちはベントレーの歴史の一部になるともコメントしていますが、現時点ですでにその12人が決定しているのかどうかは不明です(価格も公表されていない)。
なお、「マリナー」 は現在ベントレーのパーソナリゼーション部門として活動していますが、もともとベントレーとは別の会社で、1559年から事業を開始(ベントレーよりもずっと古い)。
その後1923年にベントレー車のカスタムを手掛けたことで両者は提携し、1959年にマリナーはベントレー傘下へと収まっています。
その歴史を考えると、今回のプロジェクトはまさにマリナーにとってはそのルーツへの回帰ともなりそうです。
ちなみに当時は「車体とエンジンを自動車メーカーから買い」、その後に自分の好きなボディを架装するのが一般的だったといいますが、このベントレー・ブロワーを作ったのは”ベントレー・ボーイズ(ベントレーの愛好家でパトロンとも言える)”の一人、ヘンリー・ラルフ・スタンレー”ティム”バーキン卿。
上述のル・マン24時間レースに参戦するために作った、つまり「レースに勝つための」マシンがこのベントレー・ブロワーだった、というわけですね。
なお、ベントレーは今年100周年を迎え、さまざまな試みに挑戦中。
2019年に製造されるクルマのエンブレムすべてを「記念仕様」としたり、各種限定モデルを発表したり、2900万円の「記念ブック」を発売したり。
その価格2900万円!ベントレー100周年記念本が発売に。購入者は自分の写真をページ内に入れて「ベントレーの歴史」となることが可能
その中でも今回の復刻は「最大の目玉」となりそうですが、その制作過程や完成したクルマが公開される日を楽しみに待ちたいと思います。
ほかにはこういった「継続生産」も
なお、こういった継続生産の「はしり」となったのはジャガー。
1954年に「生産を予定していたが、工場が焼けて生産できなくなった」XKSS、D-Typeの「作れなかった予定台数」を生産したことが始まりです。
その価格は「1台数億円」とも言われるものの、希少価値、歴史的な意義を考えると”それでも安い”ほど。
そのほか、アストンマーティンも1960年代に生産されたDB4 GTザガートを継続生産しています。
ただ、今回ベントレーが言うように「戦前のクルマ」を再生産したという例はなく、自動車史に残るプロジェクトだとも言えそうですね。
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