| イタルデザインはジウジアーロが設立したデザイン会社 |
イタルデザインは今年50週年を迎え、先日その記念として「ゼロウノ・ロードスター」発売を発表したばかり。
2010年にフォルクスワーゲン・アウディグループに吸収され、ランボルギーニがその株式を保有していますが、もとはというとジョルジエット・ジウジアーロ氏が1968年に設立した会社。
ジウジアーロ氏自身は日本でも非常に有名で、セイコーの腕時計やブリジストンの自転車をデザインしたことでも知られます。
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自動車業界でのキャリアスタートは17歳
そのジウジアーロ氏ですが、その経歴は輝かしく、高校生の頃に制作したフィアット500のデッサンをフィアットに評価され、なんと17歳でフィアット入り。
その後はかの「ベルトーネ」にスカウトされてベルトーネに入社し、後にカロッツェリア・ギアを経てイタルデザインを設立した、という経緯を持っています。
イタリアの自動車業界はやや特殊で、自動車メーカーはデザインや製造を「カロッツェリア(デザインや製造を担当する)」へと委託するのが通例であった時期もあったため、全盛期には数多くのカロッツェリアが存在し、イタルデザインのほか、ベルトーネ、ピニンファリーナ、ザガート、現在だとケン・オクヤマ氏の会社もカロッツェリアに分類されます。
イタルデザインの代表的な仕事を見てみよう
マセラティ・ボーラ(1971)
今回ここでは「イタルデザインによる代表的な車」をいくつか見てみたいと思いますが、まずは「マセラティ・ボーラ」。
これは1971年登場のミドシップ2シータースポーツカーで、シトロエンがマセラティをコントロールしていた時代の製品。
ランボルギーニやデ・トマソに対抗したモデルだとされています。
マセラティ・ブーメラン(1971)
実際には稼働しない、展示のみの車ですが、後にこれが「ボーラ」へと発展(発表年次を考えると同時進行?)。
ジウジアーロが得意とするウェッジシェイプと直線を多用した車で、ステアリングホイール内にメーターパネルを内蔵するなど、内外装ともに「ぶっ飛んだ」車。
レストアを受け、2012年、2013年も各種クラシックカーショーにて賞を獲得しています。
初代ゴルフ(Mk.Ⅰ/1974)
もしかするとイタルデザインを「代表する」といってもいいのが初代フォルクスワーゲン・ゴルフ(1974)。
これはひとつのメートル原器と言ってもよく、多くのフォロワーを生みながらもそのデザインは現行ゴルフ7にも活かされており、911やミニ同様、もはや「アイコン」とも言える存在ですね。
ロータス・エスプリ(1976)
ジョルジエット・ジウジアーロ得意の「折り紙」デザインがうまく表現された車で、シンプルな面構成を持ちながらも今見ても斬新と思えるデザインを持っています。
007「私を愛したスパイ」にてボンドカーとして登場したことでも有名。
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BMW M1(1978)
BMWがスーパーカー事業に参入すべく、ランボルギーニへと開発を委託した車。
開発にはジャンパオロ・ダラーラも加わった夢の車ですね。
残念ながら(何度か登場がウワサされながらも)後継はない、とされています。
ランチア・デルタ(1979)
イタルデザインとランチ後のつながりは深く、テーマ、プリズマといった車も手がけているものの、やはり「ランチアといえばデルタ」。
その後もHFインテグラーレなどバリエーションを増やしており、現代でも愛されている車の一つ。
ジャミロクワイ(ジェイ・ケイ)所有のランチア・デルタHFインテグラーレが競売に。予想では最高で500万円
デロリアンDMC-12(1981)
言わずと知れた、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場し一躍有名になった車。
ボディパネルはステンレス無塗装(塗装されたもの、アルマイト仕様もある)でガルウイングという特徴的な外観を持っています。
これを製造していたデロリアン・モーター・カンパニーはすでに倒産し、後継モデルはないものの、これも多くのファンを持つ車ですね。
サーブ9000(1984)
これまでのイタルデザインの作品とは大きく雰囲気の異る車で、なんとも言えない特徴的な外観を持っています。
日本でも人気のあったモデルで、ぼくも実際「サーブといえばこの9000」というイメージ。
ブガッティ ID90コンセプト(1990)
時代が時を重ねるにつれ、自動車メーカーはデザインや生産を自社で行うようになり、それまでカロッツェリアが担っていた仕事が減少することに。
そこで多くのカロッツェリアが業態転換を余儀なくされ、一部は自動車メーカー同様に生産力を強化したり、またあるカロッツェリアはよりデザインにフォーカスするように。
イタルデザインは後者で、自動車メーカーのコンセプトモデルを多く手がけるようになった時代の作品ですね。
なお、このID90コンセプトは後の「EB110」に影響を与えたと言われています。
AZTEC(アズテック/1988)
自動車メーカーの依頼ではなく、イタルデザインが単独名義で発表したコンセプトカーが「アズテック」。
アウディの直5ターボエンジンを搭載した、なんとも未来的なルックスが特徴です。
実際に18-50台(実際のところはよくわからない)が生産されており、オークションでは1億円を超える価格をつけたものも。
左右シートが分断されており、乗員同氏はヘッドホンとインカムを装着し、これで会話するという面白いクルマでもあります。
BMWナスカM12(1991)
90年代に入るといずれのカロッツェリアも「未来的な」デザインを目指すようになりますが、イタルデザインもそのひとつ。
これまでの「折り紙」デザインから一転し、曲線と局面を多用したデザインも見せるように。
なお、このナスカM12はブルネイのスルタンへと納車された、とのこと。
VIA:Motor1