1896年に「タクシーを発明」し、長らくタクシー業界と提携関係にあったメルセデス・ベンツ。「ブランドイメージにそぐわない」として今後タクシー業界とは縁を切ることに

｜　日本では「メルセデス・ベンツとタクシー」とはイメージ的に結びつきにくいが　｜

それだけに欧州へ行くと「ベンツのタクシー」の多さに驚かされる

さて、意外ではあるもののドイツではタクシーの多くにメルセデス・ベンツが採用されており、そしてそのカラーは「アイボリー」。

よって、ドイツではホワイトを（メルセデス・ベンツの）ボディカラーに選ぶと「タクシーのようだ」と言われることが多いという話を聞きますが（日本でヤリスの”白”を選ぶと営業車のように見えてしまうのと同じ現象なのかもしれない）、それくらい「ベンツのタクシー」が一般的だというわけですね。

しかし現在ドイツではメルセデス・ベンツのタクシー向け販売が急落

そこで今回報じられているのが「メルセデスベンツのドイツにおけるタクシー販売が、2023年と比較して1月から8月の間に前年比で71％減少し497台しか売れていない」「それによってタクシー市場での同社のシェアは2019年の52％からわずか18％にまで落ち込んだ」という事実。

つまり、ドイツはじめ欧州市場における伝統的な「タクシー＝ベンツ」という認識が大きく変化していて、メルセデス・ベンツのタクシー市場における支配力が急速に薄れているということを意味しますが、この販売の急減は単なる偶然ではなく、戦略的な決定に基づくものなのだそう。

市場調査データによると、2024年の最初の8か月間に販売された497台のメルセデス・ベンツ製タクシーは、Eクラスが127台（90％減）、Bクラスはたった1台（95％減）で、唯一、Vito（ミニバン）だけがある程度の需要を保っています。

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そしてこの傾向はさらに続くと見られ、最終的に今年の（タクシー市場における）メルセデス・ベンツのシェアは13％にまで落ち込むとされ、しかしこれはタクシーが売れていないわけではなく「タクシー運営業者が他ブランドにシフトしているため」。

メルセデス・ベンツにかわるドイツのタクシー市場における新しいリーダーはフォルクスワーゲンで、その主な要因はトゥーランやキャディ（バン）の成功だとされ、トヨタも（タクシー仕様の）特別バージョンのカローラやRAV4を通じ、メルセデス・ベンツよりも多くのタクシーを販売しています。

なお、もともとドイツにメルセデス・ベンツのタクシーが多いのは「1896年に、ダイムラーが運賃メーターを装備したモーターキャリッジを初めて発明し、現代のタクシーを生み出たため」であり、その流れもあって2010年代後半までメルセデス・ベンツとタクシー業界とは伝統的なパートナーシップを結んでいたと言われます。

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しかしメルセデス・ベンツは「タクシー仕様」車の販売縮小を明言

なお、この「タクシー専用車」は通常の市販モデルとはまた異なる仕様を持っていて、つまり自動車メーカーにとっては「特別に製造しなければならないクルマ」。

そして昨年、メルセデスのCEOオラ・ケレニウス氏は「タクシーモデルの提供を中止し、タクシー運営者への特別割引も行わない」と発表し、その意図として「広範なテストと市場分析の結果、乗客輸送における販売および設置率は、持続可能な工場ソリューションには不十分だと判断しました」コメントしています。

加えて、メルセデス・ベンツの上層部が、「タクシーはブランドのラグジュアリースタンダードには合わない。BMWやアウディもこのセグメントを避けている」と語ったことも報じられ、その市場規模の小ささ（年間で6,000～7,000台だといわれる）、そしてブランドイメージの観点からタクシー業界への提供を中止するのだということに。

よって今後欧州では「タクシー」の様相が一気に変わってしまうことが想像できますが、ちょっと寂しいような気もしますね。

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