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テスラの上海工場から「100万台目の」車両が輸出され英国へ。2019年の着工からわずか5年での快挙、その背景にあるのはイーロン・マスクも評価する「チャイナスピード」

テスラ

| 中国ではビジネスの速度が他の国とは「まったく違う」 |

いくつかの特殊性は存在するが、それさえクリアすれば他の国とは全く異なる展開スピードを実現可能

さて、テスラは現在カリフォルニア、テキサス、そして上海とベルリンに工場(ギガファクトリー)を持ちますが、もっとも高い生産能力を持つのがギガ上海。

そして今回、その上海ギガファクトリーから100万台目の車両が「輸出された」と報じられ、2019年の稼働開始からひとつのマイルストーンを達成したということに(ここでは中国国内向けのほか、アジア各国や欧州向け等の輸出用車両を生産しており、この工場の累計生産台数は100万台をとうに超えている)。

やはり「チャイナスピード」はワケが違う

なお、テスラおよびイーロン・マスクCEOは中国に早くから着目していて、中国がEV生産を始めた初期こそはほかの自動車メーカー同様に軽視する傾向が見られたものの、その後は中国を重要な開発、生産、販売拠点として認識するようになり、そこで2019年1月にこの上海(自由貿易区内の臨港新エリア)へと工場の建設を開始しています。

そして特筆すべきはテスラが「中国資本と提携せず、自己資本のみで中国に工場を建設した」最初の自動車メーカーであるということ。

それまで中国では「中国に工場を建設するならば、現地企業との合弁会社を設立し、50%以上の株式をもたせる必要」があり、これを行うと技術が盗まれる他様々なリスクが生じ、しかし工場を中国内に作って現地生産を行わないと「自社製品を中国へと輸入」しなければならず、となると関税等によって製品の価格が売れず、必然的に海外の自動車メーカーは(中国でクルマを売ろうとするならば)中国に工場を(現地企業との合弁にて)作らざるを得なかったわけですね。

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中国(上海)
中国がついに「現地企業との合弁を設立せよ」規制を撤廃。海外自動車メーカーは自社資本100%で進出できるようになるものの、中国の庇護も受けることができなくなりそう

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実際のところ、フォルクスワーゲン、BMW、トヨタ、メルセデス・ベンツ、ホンダなど多く(ほとんど)の日米欧の自動車メーカーはこの合弁企業経由にて自動車製造に関するノウハウを抜かれてしまったとも報じられていますが、テスラはこの状況を回避しており、これがいまでもテスラが中国にて高い競争力を誇る一因なのかもしれません。

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一方のテスラはこの工場の建設、そして稼働開始、また運用について「中国から多くを学び」、その内容は政治的な駆け引き、中国人の勤勉さ、そしてもちろん中国市場のポテンシャルやリスク、ライバルの台頭による危機意識など様々な分野にわたります。

実際のところ、イーロン・マスクCEOは「アメリカ人は早く家に帰ることばかりを考えているが、中国人は家に帰ることを考えずに仕事をする」とも述べていて、中国以外から見ると「奇異に見える」イーロン・マスク氏の言動は中国の自動車業界の想像を絶する成長速度を目の当たりにしたからなのかもしれません。

参考までに、「100万台めの」輸出車両はモデル3だといい(ギガ上海ではモデル3とモデルYを製造している)、そのシップ先は「英国」。

現在テスラのギガ上海では「(さらにスピードアップして)30秒につき1台がラインオフ」するというスピードをもって稼働がなされていますが、イーロン・マスクCEOは販売のみではなく生産拠点としての中国を重要視していて(工場の立ち上げから稼働開始までのスピードも速い)、同じ上海地区には新しく電池工場「メガパック」の建設を進めており、2025年はじめから稼働を開始する、とも伝えられています。

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