| 優越的地位の濫用のようにも思えるが、現地の法関係がどうなっているのかはわからない |
ただ、多かれ少なかれ、どの業界でも似たような話はあると思う
さて、ポルシェのディーラーが顧客から訴えられたという話はときどき聞きますが、今回はポルシェのディーラーがポルシェを訴えたというかなり珍しいケースが報じられています。
報道によれば、現在ポルシェの正規ディーラーを展開している「コレクション」が、ポルシェから「単独ディーラーを建設するよう」強要され、これは自動車メーカーがディーラーに専用施設の建設を要求することを禁じているフロリダ州フランチャイズ法に触れるとして、なんと3億ドル(約430億円)もの訴えを起こしたというもの。
ちょっと日本だと理解が難しいのですが、まず日本だとポルシェの正規ディーラーは「ポルシェセンター」として”単独”にて展開しており、ほかブランドのクルマを販売したり、同じ建物や敷地を他ブランドのディーラーとシェアすることはまずないかと思います。
ただしアメリカではちょっと事情が違う
ただ、アメリカ(主に西海岸)の場合、Youtubeを見ていると、ポルシェ正規ディーラーが同じ敷地や建物にでランボルギーニやマクラーレン、フェラーリ、マクラーレン、アストンマーティンなどを販売するケースが多く、ぼくはこれについて「アメリカは高級車やスーパーカーの販売台数が多く、ディーラーとの力関係が日本含む他の国とはまったく異なるんだろうな」と考えていたのですが(つまりはディーラーの立場が強く、ディーラーのやりたいようにできる)、どうやらそうではなく、(報道を見る限りでは)これは法によって「自動車メーカーがディーラーに単独店舗を建設するよう」強要することがそもそも違法であるようですね。※カナダでも、同一店舗で複数ブランドを販売する例が見られ、同様の法律があるのかも
もちろん、自動車メーカーがこういった「単独店舗を」最新のCIにて建設するように要求するのは「ブランディングのため」ですが、ここには大人の事情も介在していて、”半ば強制に近い”要求である、とも言われています。
実際のところ、今回の例だと、ポルシェがこのコレクションに対して「ケンドールかカトラーベイに専売ディーラーを建設するよう」指示し、コレクション側は「それらの地域は郊外であり、ポルシェを購入するような客層がいない」ことを理由に断ったところ、ポルシェがこのディーラーに対して車両の割当を一部差し止めた(つまりポルシェを販売できないようにした)と報じられていて、これが事実だとすれば、ポルシェがディーラーに対して圧力をかけた、ということに。
ちなみにですが、この「差し止められた」のはプールカーと呼ばれる在庫車であり、これはポルシェ側がディーラーをコントロールするために「通常販売台数の20%の範囲内で割り当てる」もので、ポルシェの望むように活動しているディーラーには「報酬」としてこれらプールカーが割り当てられ、しかしポルシェの望まない成績しか残せなかったり、反抗的な対応をするディーラーには割り当てられない、とのこと。
アメリカのディーラー内でも意見が分かれる
なお、アメリカ国内では多く(ほとんど)のディーラーがポルシェの意向に沿っているといい、そういったディーラーからは、このコレクションだけが「ポルシェからの指示による単独ディーラー建設から(訴訟によって)免れることができる」のは著しく不公平であると述べているので、その多くはポルシェの指示に従っているということも伺えます。
また、あるポルシェディーラーは「194もの全米のディーラーに単独店舗を建設させておいて、コレクションの1店舗だけを特例として扱うことは許されないだろう」ともコメントしていて、この訴訟はコレクションにとっては分が悪いものになるかもしれません。
訴訟とともに提出された書簡の中で、ポルシェ・カーズ・ノース・アメリカCOO、ジョー・ローレンス氏は、このコレクションの拒否について、「最良のビジネス慣行に有意義に関与し、ポルシェ・ブランドを推進する気がないことを示している。その結果、私たちがコレクションへのプールカーの裁量的割り当てを保留し続けることは驚くには値しないでしょう」とコメント。
参考までにですが、この「プールカー」の影響はかなり大きいようで、というのもコレクションは2018年には全米3位のディーラーであったものの、この問題によってプールカーの割当を削られてからは(今年6月の時点で)32位にまで順位が下がっており、1億ドル以上の損失が発生していると主張しています。
ただ、ポルシェとしては、この「成績低迷」についてはプールカーの影響というよりも、ポルシェ全般の不振によるものが大きいとし、「フロリダのポルシェ・ディーラーは一般に、全米の他地域での傾向よりも急な落ち込みを経験している」と述べ、そのカウンターとしています。
この訴訟の成り行き次第では今後のフロリダでのディーラー展開手法が大きく変わる可能性もあり、成り行きには注視したいところでもありますね。
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参照:Autonews