| 問題はこのポルシェ911スペシャル・エクスペリメンタル・プロジェクトが今後の展開にどうつながるのか |
現時点では新型ポルシェ911「ダカール」との関連性は薄いように思えるが
さて、ポルシェはおよそ30年以上前に初めて全輪駆動システムを搭載してパリ・ダカールラリーで走らせ、1985年に優勝を果たしていますが、今回は992世代の現行911カレラ4Sをベースにしたオフローダーを2台作成し、「世界で最も高い場所を走行したクルマになった」と発表。
このチャレンジの舞台となったのは、地球上で最も高い火山だとされるチリのオホス・デル・サラドの高地で、2台の911「特別実験(スペシャル・エクスペリメンタル)プロジェクト」はマイナス30度を記録する中、最高高度6,007メートルに到達することに成功しています。
ドライバーはル・マンとパイクスピークの覇者、ロマン・デュマ
ポルシェ911スペシャル・エクスペリメンタル・プロジェクトをドライブしたのはル・マン24時間レース優勝、そしてパイクスピークでも史上最速記録を持つロマン・デュマ(フォルクスワーゲングループと関係が深い)。
同氏を含むチームは2台の特別仕様車にて高みを目指し、氷と岩に阻まれてそれ以上進めなくなったところで実験を終了していますが、ロマン・デュマは「今日のボクらより高いところにまで登ったクルマは世界中どこを探してもないはずだ。これよりも上に行けるのは飛行機だけだと思う」とコメント。
続けて「チームにとっても、クルマにとっても、学ぶべきことは多かった。ボクたちは常に自分たちに厳しくあり、最初のテストでは本当に深いところにまで追い込まれたが、このマシンはいつでも安心してドライブできた」とも。
ポルシェ911スペシャル・エクスペリメンタル・プロジェクトはこんなクルマ
この特別な実験用プロトタイプは上述の通り911カレラ4Sがベースとなっていますが、エンジンはノーマルのままで(3リッター・ツインターボ・フラットシックス)、しかし悪路走行に備えて冷却システムを車体上部に移動させています。
さらにはポータルアクスル化によって車高を上げて(911のポータルアクスル化はこれがはじめてではなかろうか・・・)大型オールテレインタイヤを装着し350mmの地上高を確保。
さらには低速域での正確なコントロールのためにギア比を下げ、火山の鋭利な岩からアンダーボディを守るために軽量なアラミド繊維のアンダーボディーシールド、そしてリアには金属製の保護プレートとバーを特別に追加しています。
特筆すべきは「ポルシェワープコネクター」なるデバイスで、これはもともとモータースポーツ用に考案されたものだそうですが、この装置は4輪の間に機械的なリンクを形成し、アーティキュレーションを受けても、一定のホイール荷重を発生させることができるというもの。
そのほかマニュアル操作にて切り替え可能なデフロック、ステアバイワイヤシステムによって優れたトラクションとコントロール性を実現ている、と紹介されています。
さらに、911のフロントにはウインチが追加され、ボディは12インチ幅(310mm)のホイールとタイヤを装着するためワイド化されていますが、それでもうまく「911らしさ」を保っているのは興味深いところでもありますね。
ちなみにカラーリングは2台それぞれで異なり、1台は新型レーシングカー「ポルシェ963LMDh」と同じもの、そしてもう1台はポルシェのデザインチームがこの車両専用にデザインしたグラフィックを持っています。
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インテリアに目を移すと、乗員を保護するためのロールケージやカーボンファイバー製シート、ハーネスなどが追加されています。
ポルシェ911スペシャル・エクスペリメンタル・プロジェクトは何を示すのか?
911モデルラインのディレクターであるミヒャエル・レスラー氏によると、「世界が見たこともないような911を作ることは、エンジニアリングに熱心な小さなチームによって可能になった”魔法”のようなものです。911の素晴らしさはすでにサーキットで、そしてもちろん公道でも証明されています。しかしこのプロジェクトでは、私たちは道路のないところに焦点を移しました。私たちの理論を試すということは、それが機能するかどうかを確認するために、可能な限り過酷な環境を見つけることを意味します。そして世界で最も高い火山で、私たちはその理論を証明することに成功したのです」。
ただ、ちょっと謎なのは、今回のポルシェ911スペシャル・エクスペリメンタル・プロジェクトが何を意味し、どこに向かうのかということ。
ポルシェが行うことには必ず意味と目的があるはずですが、この「過酷な高所を目指す」実験がいずれかのモータースポーツもしくは市販車に反映されるのかどうかは気になるところです。
現在ポルシェは911のハイライダー、911サファリもしくは911ダカールの発表に備え準備を進めている段階だとは思われるものの、911ダカールは極限の状況下でのオフロード走行性能を追求したわけではなく、よって今回の「ポータルアクスル、ローギアード」な911が911ダカールに直結するというのはちょっと考えにくかもしれません。
ただ、上述の通りこのプロジェクトにも「向かう先」があるはずなので、遠くない未来になんらかの新しい計画が発表されることになるのかもしれませんね。
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参照:Porsche