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ポルシェが「中国重視戦略」を強化、「ドイツ以外で初の」統合開発センターを上海に開設。「中国のために中国で開発」戦略を推進

ポルシェが「中国重視戦略」を強化、「ドイツ以外で初の」統合開発センターを上海に開設。「中国のために中国で開発」戦略を推進

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| ポルシェ、初の海外R&Dセンターを上海に開設 |

「In China, for China」戦略の本格始動

さて、フェラーリは「戦略的な割り当て」のものと中国での販売を意図的に縮小させていますが、逆に「中国重視」戦略を掲げるのがメルセデス・ベンツ、そしてポルシェのフォルクスワーゲン、そしてアウディ。

そして今回、ポルシェが「中国・上海の虹橋CBD(Hongqiao CBD)に初の海外統合型R&D(研究開発)センターを正式にオープンさせた」と発表し、中国市場重視の姿勢を改めて強調することに。

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中国のための中国での開発:ポルシェは今後「中国専用車」を積極投入?

この施設は、同社のスローガン「In China, for China(中国のための中国での開発)」を象徴するもので、ポルシェのドイツ国外初となる本格的なR&D拠点となり、延べ床面積は約10,000平方メートルに及び、ポルシェ独自のエンジニアリング技術と中国市場特有の高速なデジタルイノベーション文化を融合させることを目的とし、すでに300名以上のエンジニアが勤務しています。

Porsche China R&D outside

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ドイツの技術と中国のデジタル力を結ぶ「戦略的ハブ」

開所式には、ポルシェAG取締役会メンバー、上海市政府関係者、そして戦略パートナーが出席し、同拠点がポルシェのグローバルイノベーション戦略における重要なマイルストーンであることを強調。

ポルシェAGのCEO、オリバー・ブルーメ氏(Dr. Oliver Blume)は次のように語っています。

「中国は電動化、デジタル化、そして新しいラグジュアリーの形を牽引しています。
この変革の課題を遠くから解決することはできません。ここ(中国)でこそ実現できるのです。
上海R&Dセンターは、ドイツのエンジニアリングと中国のデジタル未来をつなぐ戦略的な柱となります。」

Jojo Tang, Alexander Pollich, Dr. Michael Steiner, Sajjad Khan, Arno Li

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R&D、調達、品質管理を統合──“チャイナスピード”での開発へ

今回の新センターは、これまで中国国内に分散していたポルシェ・テクニカルディビジョン、ポルシェ・エンジニアリング・チャイナ、ポルシェ・デジタル・チャイナを一体化。

開発・購買・品質部門を同拠点に集約することで、より高い自律性と機動力を実現するといい、ポルシェ・チャイナ社長兼CEOのアレクサンダー・ポリッヒ氏(Alexander Pollich)によれば以下の通り。

「今日という日は、私たちの中国に対する強いコミットメントを示す重要な瞬間です。
このセンターは、デジタルライフに深く結びついた“インテリジェントなソリューション”を生み出す場であり、
中国のお客様の期待に応えながらも、ポルシェらしさを失わない品質を保証します。」

Dr.Michael Steiner&Sajjad Khan&Arno Li

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第1弾プロジェクトは「中国専用次世代インフォテインメント」

すでにこの上海R&Dセンターでは、最初の成果として「中国市場専用の次世代インフォテインメントシステム」が開発中であることもアナウンスされており、2026年半ばより複数のポルシェモデルに順次搭載される予定なのだそう。

「この拠点によって、中国の急速な技術革新を直接取り込むことができました。
開発サイクルを“数年から数カ月”へと短縮し、顧客のニーズに迅速かつ的確に応えられるようになっています。」

ポルシェ取締役(Car-IT部門) サジャド・カーン(Sajjad Khan)

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「この新しいシステムは、AI音声アシスタント(大規模言語モデル採用)や3Dインターフェース、
中国のデジタルエコシステムとの深い連携を特徴としています。
ポルシェのデザイン哲学“明快さと精密さ”をデジタルの世界に持ち込みました。」

ポルシェ・チャイナR&D責任者 李楠(Li Nan)

Porsche China R&D 3D visual

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10年にわたる現地開発の集大成

実はポルシェの中国でのR&D展開はいまにはじまったことではなく、2014年にスタートしており、同年にはポルシェ・エンジニアリング上海オフィスが開設、そして2021年にはポルシェ・デジタル・チャイナを設立。

さらに2022年にはローカルR&Dサテライトを稼働させるなど、段階的に開発体制を強化しています。

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今回の統合R&Dセンターは、その10年の積み重ねの上に築かれた「第二のヴァイザッハ」ともいえる存在で、ポルシェAG R&D担当取締役のミヒャエル・シュタイナー博士(Dr. Michael Steiner)は次のようにまとめています。

「中国での研究開発は、すでに長年にわたり進化を続けてきました。
今回のセンターはヴァイザッハR&Dの補完であり、同時に新たなイノベーションハブでもあります。
ドイツの技術力と中国のデジタルスピードを融合することで、真にユニークな価値を創造できるでしょう。」

Porsche China R&D

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まとめ:ポルシェの未来は、上海からも動き出す

フォルクスワーゲン・グループは「全体的に」中国重視の姿勢を鮮明に打ち出していますが、ポルシェが「ドイツ以外で初の」研究開発施設を設立したことには軽いショックを覚えざるを得ないというのが偽らざる心境。

現時点では(中国市場で重視される)コミュニケーションシステムの開発に重点が置かれるようではありますが、今後はこの拠点で開発された「中国専用車」が(アウディではすでに実現しているように)中国の路上を走り出すのかもしれません。

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実際のところ、ポルシェはすでにいくつかの中国専用車(過去にはパナメーラのロングボディ、スパイダーRSの排気量ダウン版、最近だとマカンのオフロード風味車など)を投入しているという実績もあり、この研究開発施設は今後の展開において非常に重要な意味を持つものと思われます。

・ポルシェ初の海外統合R&Dセンターを上海に開設
・300人規模のエンジニアチームが現地開発を主導
・中国専用インフォテインメントなど独自プロジェクトが進行中
・ヴァイザッハR&Dとの連携によりグローバル開発体制を強化

一時は中国市場での大きな落ち込みを理由に「中国市場からの撤退」をも考えたとされるポルシェではありますが、そこから一転して「中国での徹底抗戦」を選択。

電動化とデジタル化が急速に進む中、ポルシェは「中国で生まれる新しいポルシェ体験」を世界に発信する段階へと踏み出したということになり、今後の動向からも目が話せないといったところでもありますね。

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参照:Porsche

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