| フェラーリF12tdfの車体デザインはフェラーリの内製へ、そしてそれまでとは考え方が大きく変わる |
エアロダイナミクスに関する考え方が「よりモータースポーツに近く」なったように思われる
さて、オートカヴァリーノさんにて特別展示中の「V12スペシャルモデル」のトリオのうちの一台、F12tdfを画像とともに紹介したいと思います。
なお、展示されるのは「599GTO」「F12tdf」「812コンペティツォーネ」の3台ですが、いずれも同じオーナーさんの所有であり、そしていずれも「ホワイト」という素晴らしい仕様を持っています。
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フェラーリF12tdfはこんなクルマ
このフェラーリF12tdfの「tdf」とはツール・ド・フランスを指しており、これは1950年代〜1960年代に開催された公道耐久レース。
フェラーリはこの大会へと250GTベルリネッタにて参戦し4度の連続優勝を飾ったことから(主催者によって)ツール・ド・フランス=tdfの名称使用権を得たと言われています。※このF12tdfは、当時の250GT tdf以来、58年ぶりにtdfの名を持つフェラーリとなった
このツール・ド・フランスの内容は過酷極まりなく、ワインディングそしてサーキットなど様々なステージを含むコースを1日に数百キロも走行したとされ、スプリントとは異なって車両の耐久性、そしてなによりもドライバーに負担をかけない扱いやすさが要求されたそうですが、それだけにこの競技で優勝するにはあらゆる困難に打ち勝たねばならず、その結果獲得した勝利は何ものにも代えがたい価値があったことが容易に想像できますね。
ベースとなるF12のデザインはピニンファリーナではあるものの、このF12tdfのデザインはフェラーリのインハウス、つまりチェントロスティーレ(デザインセンター)によるもの。
大きな特徴はこの「進化版エアロブリッジ」なるフロントフェンダー上のブレードとその周辺の構造で、ベースモデルのF12ベルリネッタに備わるエアロブリッジの効果をさらに突き詰めた構造です。
上から見るとよく分かるのですが、フロントフードを伝った、もしくは内側から排出されたエアがフェンダー上へと流れ、そしてこのカーボン製のブリッジをくぐってサイドに流れる様子が理解できると思います。
正面から見ても、フロントフード上のエアが左右に流れてブリッジの下をくぐること見て取ることが可能です。
なお、こういった「クルマの中を風が抜ける」という構造につき、フェラーリのチェントロ・スティーレの指揮を執るデザイナー、フラビオ・マンツォーニ氏が得意とするもので、同氏がデザインしたコンセプトカー「テンソ(下の画像)」にも見られ・・・。
最新作であるプロサングエにも用いられています。
そのほか、形を変えてSP3デイトナにも採用されるなど、「ボディの外側だけではなく」「車体の中を流れる」風をコントロールするのがチェントロスティーレがデザインを担当するようになったのちのフェラーリの特徴なんじゃないかと捉えています。
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そしてF12tdfのフロントセクションは非常に複雑な形状を持ち、レーシングカーからフィードバックを得たスプリッターやダイブプレーンに・・・。
フロアウイングやルーバーなど。
このF12tdfはとことんエアロダイナミクスが追求されていますが(これはフェラーリの限定モデルにおける特徴でもある)、サイドスカートにもウイングレットが装着され(珍しい下向き)・・・。
リアサイドウインドウにもスポイラー付き。
なお、リアスポイラーはF12ベルリネッタに比較して60ミリ長く、30ミリ高いという構造を持っています。
そしてリアフェンダーにはフェラーリのレーシングカーの象徴とも言える3本スリットが備わり、ホイールハウス内の圧力を抜くことでダウンフォースを生成することに。
リアディフューザーはアクティブフラップ付きで、エアチャンネルは「3つ」。
水平方向にエアを流すことで気流を増加させ、垂直方向のフィンでボルテックス(渦)を生成するという仕組みです。
こういった調整によってF12ベルリネッタ比で30%ものダウンフォースを発生することを可能としていますが、「リヤウイング無しで」この数値を達成していることは特筆に値するかもしれませんね。
フェラーリF12tdfはビークルダイナミクスにも磨きがかけられる
ただ、フェラーリF12tdfは「エアロダイナミクスに磨きがかけられた」だけのクルマではなく、当然ながらビークルダイナミクスも大幅に強化されています。
それも「足回りを固めただけ」ではなく根本から再設計されたと表現するのが妥当であり、フロントタイヤは225からなんと一気に275に(ちょっとしたスポーツカーの後輪の幅である)。
なお、近年のスポーツカーはフロントタイヤが非常に太く(GRスープラもけっこう太い)、F12tdfはそういったトレンドの先駆けと言えるかもしれません。
そのほか後輪操舵システム「バーチャルホイールベース」もF12tdfにでデビューしたデバイスであり、こういった装備を見てもF12tdfは、F12ベルリネッタとは別のクルマだと考えた方がいい、ということがわかりますね。
もちろんエンジン出力も大幅に引き上げられていますが(740馬力から780馬力)、F1マシンからフィードバックを得た可変長式トランペットを採用したほか、ギア比が6%短縮されて加速が向上し、ダウンシフトでは40%、アップシフトでは30%の変速スピード向上が図られています。
0−100km/h加速は2.9秒、最高速は340km/h以上というスペックを誇り、しかしF12tdfの本当の凄さは数字に現れにくい横方向の加速(コーナリングG)やカーブの脱出速度や安定性に現れるのだと思われ、それを実現するための数々の「特別仕様」を見るに、その流通価格が「とんでもなく高い」理由がよくわかるかと思います。
貴重なフェラーリF12tdfを見せていただいたオートカヴァリーノさん、そしてオーナーさんにはお礼申し上げます。
オートカヴァリーノ
- 兵庫県神戸市東灘区向洋町東3-6-5(六甲アイランド)
- 兵庫県神戸市中央区新港町11-1(ブティックショールーム)
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フェラーリF12tdfを見てきた際の動画はこちら
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