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フェラーリ、2025年第二四半期の決算が「予想に届かず」過去最大級の株価下落を記録。これは終わりの始まり」か?

フェラーリ

| よくよく見れば「減収減益」ではなく「増収増益」ではあるが |

単に「増収増益」の幅がアナリストの予想に届かなかったようだ

さて、イタリアの高級スポーツカーメーカー、フェラーリ(Ferrari N.V.)が2025年上半期の決算を発表。

「上半期」というタームで見ると売上高と利益両方の面で「好調」ではあったものの、同時に発表された「第二四半期」の決算内容では(以下の通り)市場予測を下回ったことが明らかになり、フェラーリ株は一時10%超の下落となって「(ぼくが知る限りでは)過去最大級の下げ幅」を記録することに。

  • EPS(1株当たり利益)が予想を下回る: アナリスト予想の2.40ドルに対し、実際のEPSは2.38ドル
  • 売上高が予想を下回る: アナリスト予想の18.2億ドルに対し、実際の売上高は17.9億ドル

しかし、フェラーリは2025年通期の業績見通しについては引き続き強気な姿勢を維持し、新製品の発売や電動化への継続的な投資についても強調しています。

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フェラーリの2025年上半期はこんな内容であった

そこで今回発表された決算内容について見てゆきたいと思いますが、フェラーリが提出した報告書によると、「売上高と利益の両方で大幅な成長を記録し、そのブランド力と戦略的な製品展開が成功を牽引していることが明らかに」。

以下は数字面でのハイライトですが、フェラーリの2025年上半期は、主要な財務指標において力強い伸びを示したことがわかります。

そして第2四半期も消して悪い数字ではなく、実際には「成長」しているものの、その成長が期待値を下回ったことが懸念材料として捉えられており、これは「成長を続ける企業」の宿命といえそうです。

純売上高: 2025年上半期の純売上高は35億7800万ユーロに達し、2024年上半期の32億9700万ユーロから8.5%増加。第2四半期単独の純売上高は17億8700万ユーロで、前年同期比4.4%増

営業利益(EBIT): 2025年上半期の営業利益は10億9400万ユーロとなり、前年同期の9億5300万ユーロから14.8%の大幅な増加を記録。EBITマージンも30.6%と、前年同期の28.9%から改善し、第2四半期単独でもEBITは5億5200万ユーロで、これは前年同期比8.1%増。

純利益: 2025年上半期の純利益は8億3700万ユーロ。

一株当たり利益(EPS): 基本的な一株当たり利益は2025年上半期に4.68ユーロを記録。これらの数字は、フェラーリが高級車市場において確固たる地位を築き、持続的な成長を実現していることを明確に示すもの。

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売上高の成長を牽引する3つの主要要因

純売上高の増加は、主に以下の3つの要素によってもたらされています。

自動車とスペアパーツ: 純売上高は、2025年上半期に30億4300万ユーロとなり、前年同期比で1億8700万ユーロ(6.6%)増加。この増加は、より豊かな製品ミックスと国別ミックス、そしてパーソナライゼーションからの貢献増が主な要因。

スポンサーシップ、コマーシャル、ブランド: スポンサーシップ契約、コマーシャル収益、ブランド管理活動からの純売上高は、2025年上半期に3億9600万ユーロに達し、前年同期比で8300万ユーロ(26.6%)の大幅増。これは、新たなスポンサーシップとライフスタイル活動、そして2024年のF1ランキング向上によるコマーシャル収益増に起因。

その他: その他の純売上高は、2025年上半期に1億3900万ユーロとなり、前年同期比で1100万ユーロ(8.7%)増加。これは主に金融サービス活動からの収益増によるもの。

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車種と地域別の出荷状況:戦略的な市場配分

2025年上半期の総出荷台数は7,087台で、前年同期の7,044台から43台増加しまています。

パワートレインの内訳:

     内燃機関(ICE)モデルが53%を占める一方、ハイブリッドパワートレイン搭載モデルが47%を占めることに。

     第2四半期単独では、ICEモデルが55%、ハイブリッドモデルが45%。

出荷を牽引した主要モデル:

    ◦ 296 GTS

    ◦ プロサングエ

    ◦ ローマ・スパイダー

    ◦ 12チリンドリファミリー

    ◦ SF90 XXファミリー

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出荷が減少したモデル:

    ◦ 296 GTB

    ◦ SF90 Spider(ライフサイクルの終盤)

    ◦ デイトナ SP3(2025年第3四半期に納車完了予定)

    ◦ 812 コンペティツォーネ A(2025年第1四半期に段階的廃止)

地域別売上高の変動:

    ◦ EMEA(欧州、中東、アフリカ)地域での純売上高は1億7700万ユーロ増加し、地域全体の成長を牽引。

    ◦ アメリカ地域では4000万ユーロ増加。

    ◦ APAC(アジア太平洋)地域では600万ユーロ増加。

    ◦ 中国本土、香港、台湾では3600万ユーロ減少。 これらの地域別ミックスは、各市場における意図的な製品および販売量配分を反映。※中国への供給を絞っている

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フェラーリの将来展望と戦略:さらなる成長への道筋

そして今後の展望については以下の通り。

主要な方針と想定される要素

    ◦ ポジティブな製品ミックスと国別ミックス、強力なパーソナライゼーションの継続。

    ◦ レーシング活動からの貢献向上(スポンサーシップ増、2024年のF1ランキング向上によるコマーシャル収益増)。

    ◦ ライフスタイル活動の収益成長率拡大と、開発・ネットワーク拡大への投資。

    ◦ 継続的なブランド投資、レーシングおよびデジタルトランスフォーメーション費用の増加。

    ◦ サプライチェーンの課題によるコスト増。

    ◦ パテントボックス税制変更に伴う実効税率の上昇。

    ◦ 強力な収益性による堅調な工業フリーキャッシュフロー生成(設備投資による相殺は限定的)。

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まとめ:フェラーリの未来

以上がざっとした今回の決算内容の要約ですが、フェラーリの2025年上半期決算報告は、その卓越した財務パフォーマンスと戦略的な経営が実を結んでいることを明確に示しています。

さらには高級車市場でのリーダーシップを強化し、ハイブリッド化・電動化への投資を加速させつつ、F1活動やブランド管理を通じて収益源を多様化させることで、フェラーリは持続可能な成長軌道に乗っていることもわかります。

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ただ、懸念としてはラグジュアリーマーケット自体の世界的縮小、そして自動車業界のトレンドとしての、そしてとくにハイパフォーマンスカーにおいて顕著な「電動化回避」の流れというもの材料も。

しかしながらフェラーリは(エルメスと同じように)代替品のない、比類なきブランド価値を誇っており、さらには小規模自動車メーカーならではの柔軟性を武器として「先が見えない」この時代を乗り切ってゆくであろうと考えています。

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参照:Ferrari

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