| たとえ日産からのラブコールがあったとしても、トヨタはそれに応じることはなかったであろう |
日本の自動車メーカーはいずれも価格やターゲット、製品があまりに「似過ぎており」合併によるメリットを出しにくい
さて、2024年の自動車業界は「ホンダと日産との歴史的な経営統合(合併)話」の登場にて幕を閉じることとなっていますが、今回その裏では「日産がパートナーを探す際、(日産最大のライバルであった)トヨタはまったくそれに関与しなかった」ことが明らかに。
これは今月ラスベガスにて開幕した家電見本市「CES」にて豊田章男トヨタ自動車会長が語ったもので、以下のように述べています。
「日産はトヨタに対して合併の話を持ちかけてきていません。仮にそうしたことを考えていたとしても、それは明らかに独占禁止法に違反することになります。おそらく彼らはそのことを考慮し、実行しなかったのでしょう」
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もし実際にトヨタと日産との合併話があったとしても「実現しなかったであろう」
さらに豊田章男会長は「日本政府や、これらの企業が活動している他の国々が、長年にわたって同じ規模で競ってきた2社の合併に反対する可能性があるだろう」とも語っており、トヨタと日産との合併によって「支配力が強まり」、それをよく思わない向きが存在することにも言及しています。
なお、豊田章男会長は、富士山の麓にあるトヨタの新しい「ウーヴンシティ」の計画を宣伝するためにCESに出席したそうですが、電気自動車やソフトウェア定義車両への移行を進める中において今後の自動車業界に対する意見も述べ、「もし未来が分かっていたら、投資をして非常にリッチになっていたでしょう。しかし、未来は不透明です。これから何が起こるかは分かりません。この時代に経営をしていることは、非常に面白く、挑戦的です」とも。
現在の日本の自動車メーカーはそれぞれ異なる状況にあり、トヨタは依然として非常に大きな利益を上げていて、世界で最も売上の多い自動車メーカーとして君臨していますが、特に中国の自動車産業の台頭により逆風にも直面しています。
ハイブリッド車では引き続き支配的な立場を維持しているものの、完全電動車(EV)では遅れを取っており、中国市場でのシェアを急速に失っているという実情もあり、テスラやリビアン、そして中国の自動車メーカーのように、車両を(オンラインにて)アップデートして性能を常に最先端に置いておくという技術についても後塵を配しているというのが現状です。
そしてホンダも利益を上げ、売上も好調ではあるものの、電動車分野での追い上げが必要だと認識しているようで、CESでは新しい電動モデル「0 サルーン」「0 SUV」を発表したばかり。
一方、日産は長らく日本の2番目の自動車メーカーでしたが、販売や利益が低迷し続け、昨年には「再建のためには12〜14ヶ月しか残されていない」という上層部の話が大きな衝撃を与え、その後に出たのが「ホンダとの合併話」。
これが実現すれば、世界で3番目に大きな自動車メーカーが誕生する予定となり、さらには三菱もホンダと日産と話し合いを行っており、三菱が合併に参加する可能性が高いと見られています。
そしてトヨタは、すでにパートナーシップを結んでいるいくつかの”小規模な”自動車メーカー(スバル、マツダ、スズキ)との関係を強化しているようですが、豊田会長は、今の時代、自動車市場でのシェア争いだけが競争の本質ではないとも警告しています(ある意味、勝者の余裕ではある)。
「トヨタにとって、自動車業界を考えるとき、過去は他社とどれだけボリュームを増やせるかという競争があったと思います。しかし、おそらくその競争の性質は変わってきています。今は、クルマをどう変えるかという競争です。(日産とホンダの合併については)実際にそれがどう展開されるか、彼らがどう協力して、競争力のある製品をどう開発するかを楽しみにしています。もしそのような興奮する製品がこの合併から生まれたら、それは日本だけでなく、世界の競争にとって良いことだと思います。」
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