| 市場に「媚びた」クルマを作るようになってファンに見放されたのかもしれない |
さて、ここ最近の日本国内自動車登録状況を見ていて気になるのがホンダの凋落ぶり。
2021年2月の販売ランキングTOP10には一台もホンダ車が入らず、頼みの綱のフィットは12位に沈み、ライバル関係のトヨタ・ヤリスに比較して販売台数が約1/4という状況です。
さらに2021年2月の販売だとトヨタの129,741台に大きく差をつけられているのはもちろん、日産の28,229台にもおよばない23,885台という数字。
なお、TOP10のうち8台はなんとトヨタで、残る2台はホンダではなく日産であり、もはやホンダは見る影もないといった状況となっています。
なぜホンダはこんなことになってしまったのか
そこでなぜホンダがこういった事態に陥ったのかを考えてみたいと思いますが、ぼくとしては「単にホンダが面白いクルマを作らなくなったから」なんじゃないかと考えているワケですね。
かつてのホンダは「ホンダにしかできない」クルマを多数リリースしており、ほかの自動車メーカーが真似しようと思っても真似できないレベルの独創的なクルマも存在したと認識しています。
少なくとも、以前は「何かに似ている」と言われるようなクルマや、CX-ハリアーと揶揄されるクルマを作るようなメーカーではなかったはずです。
-
名車(迷車?)の多いホンダ!ホンダファンのボクが「これまでの革新的な車」を並べてホンダの起こしたパラダイムシフト、そして問題を探る
| ボクはホンダの考え方が大好きだ | さて、ぼくはホンダファンの一人ではありますが、「ホンダのスポーツカー」というよりは「ホンダの思想」のファン。そしてホンダのどういったところに魅力を感じているのか ...
続きを見る
ホンダのクルマはもはや面白くない
ただし現在のホンダは楽しい車を発売するよりも「売れるクルマ」に注力する傾向があり、S2000後継モデルについても「今はそんなことをやっている余裕はない。それよりもカネになるSUVが先だ」と社長自ら発言したことも。
そして、そういった「クルマ好きが好むようなクルマを後回しにして、売れるクルマを優先する」姿勢は消費者にも伝わってしまうことになり、これがホンダの価値、そしてファンのロイヤルティを下げたのだとも思われます。
トヨタは逆に面白いクルマを作る自動車メーカーに
逆にトヨタの場合だと、豊田章男社長に代わった後は「面白いクルマ」づくりを行うようになり、たとえばGRスープラやGRヤリスもそのひとつ。
かつてトヨタは「スポーツカーを持たない」時期すらあったものの、今では「多数のスポーツカーを抱えるメーカー」となっており、そこがクルマ好きを刺激したり、スポーツカーに興味がない人に対しても「なんか楽しいクルマを作っているらしい」ということを認識させるに至っているのかも。
なお、ぼくは「スポーツカーを作るメーカーが面白い自動車メーカー」だと言っているわけではなく、スポーツカーのような「売れずに無駄な」「ビジネスとしては成り立たない」クルマを作るメーカーの姿勢(そして、その余裕を作り出すための経営手腕)を評価しているわけですね。
そしてホンダは「利益追求主義で、無駄を排除する人間味のないメーカー」として人々の目に映ることになり、これは日産が支持を失っていったのと同じ理由だとも考えています。
ホンダのデザインは凡庸になった
そして「デザイン」についても同様の傾向があると考えていて、最近のホンダのデザインは無味無臭。
たとえば「現行オデッセイや、ステップワゴンの顔を思い出せるか」というとぼくにとってそれは難しく、「新型フィットはどんなクルマなのか」も思い描くことが難しい、と言う認識。
一方でトヨタ・アルファードやヤリスだとそのフロントを思い出すことができ、明確に頭の中で描写できなくとも、実際にそのクルマを見ると「あ、アルファード」といった感じで認識できる人も多いかと考えています。
参考までに、BMWは4シリーズにて大きなグリルを採用し、酷評されながらも「20%の人だけに気に入って貰えればいい」とコメント。
つまりは万人受けよりも一部の人にだけ強烈にアピールできればそれでいいと考えたのだと思われますが、アウディやメルセデス・ベンツが販売を伸ばせない中、ジャーマンスリーでは唯一「2ケタ成長」を記録しています(2021年2月の日本国内において)。
-
BMWのデザイナーが新型4シリーズのキドニーグリルについて語る!「批判があるのは承知の上だ。そもそも4シリーズは万人に向けてではなく、20%の人に対してだけデザインされたものだ」
| ボクはどうやらその20%に入っているらしい | さて、色々と話題となった新型BMW 4シリーズ。その話題の中心はなんといっても巨大な「バーチカルキドニー」ということになりますが、今回BMWのチーフ ...
続きを見る
誰からも嫌われないようすれば、誰からも好かれなくなる
逆にホンダは「より多くの人に気に入られようと」して低刺激なデザインを採用してしまい、それと同時に個性を失ってしまったのかもしれません。
これは人間においても同じことで、とくに欠点もないものの個性もない人にさほど惹かれたり、その人を記憶に留めることはなく、しかし欠点はあっても強烈な個性を持つ人のことは(好き嫌いは別にして)よく覚えているのと似ています(少女漫画だと、だいたい主人公の少女が「なにアイツ」と初対面時に反感を抱いた男性のことを後に好きになる)。
そしてこの凡庸さは実際にセールス面にも現れていて、北米ではこれまでずっといい感じで争ってきたトヨタRAV4に対し、ホンダC-RVはその優位性を明確に失うことに。
-
こんなはずじゃなかった!ホンダCR-VはトヨタRAV4の1/10へと販売が転落。ホンダはどこでどう間違ったのか
| ホンダは過去の成功体験から抜け出せずにいたのかもしれない | 先日、ふと気になったのが「トヨタRAV4とホンダCR-Vとの販売動向」。そのうちひとつは日米で売れ行きに差があること、そしてもう一つは ...
続きを見る
そして日本市場においても「ヴィッツとフィット」で見られた抜きつ抜かれつの争いも「ヤリスとフィット」では明確に勝敗が分かれています。
-
自動車デザインに異変アリ?トヨタの奇天烈なデザインが支持され、ホンダのスマートなデザインが不人気になってしまった現状を考える
| ここまで自動車に「個性」が求められるようなった時代は今までにない | さて、最近の国内自動車登録ランキングを見ていて思うことがあり、それは「アクが強いクルマばかりが売れるようになったな」ということ ...
続きを見る
ホンダの純血主義も成長を妨げる
なお、ホンダは他社と手を組みたがらないことでも知られ、なんでもかんでも独自で開発したがる傾向も。
ハイブリッドシステムやEV、FCVについても同様で、これがホンダの収益を大きく圧迫し、そのため余裕がなくなって他のチャレンジ(上述のスポーツカーなど)を行いにくくしています。
特にハイブリッドやFCVについてはトヨタとの競争となってしまい、結局はトヨタの後塵を拝することになるわけですが、最初からトヨタと組んでこれらを開発していればコストを抑えることができ、抑えたコストをもって「ホンダらしい」別のチャレンジができたんじゃないかと思うわけですね。
これは「アシモ」についても同様で、単独ではなくボストンダイナミクスとでも協業していれば、少なくともアシモ事業部を売却するなど損失を抑えることができたのかもしれません。
現在ホンダは北米においてGMとの提携を行っているものの、日本では「トヨタ、スズキ、スバル、マツダ」が手を組む中で取り残された状態にあり(日産はルノーと三菱とアライアンス関係にある)、ここから状況をひっくり返すことは難しいかもしれません。
現に、FCAとPSAとが合併してステランティスが誕生するにあたり、ホンダはその規模を相対的に縮小させていますが、現代において「規模」とはすなわち開発能力を意味することになり、ホンダは今後「開発能力に劣り、コストの高いクルマしか作れず、収益性の悪い会社」となり存在感を弱めてゆく可能性が高そうです。
-
「日産とホンダとの合併話」は本当にあった!日本政府が両者の行く末を懸念し「合併しては」と持ちかける
| たしかに昨年末~年始に同様の報道はあったが | 英フィナンシャル・タイムズによると、2019年末に「日本政府関係者が日産とホンダとの統合を模索していたが、計画が頓挫した」との報道。この合併話につい ...
続きを見る
ホンダは経営を誤った
こういった事象を鑑みるに、ホンダは完全に経営を誤ったと考えていて、プライドの高さゆえ他社との協業ができずコスト高体質を招いてしまい、コスト高体質によって余力がなくなって「市場に媚びた」クルマしか作れないようになった上、そういった「媚び」が消費者に伝わってしまい、面白くない自動車メーカーだと認識されてしまうようになったのだとぼくは考えています。
-
ホンダNSXが米にて名実ともに「もっとも売れないスポーツカー」に!年央で販売終了となったBMW i8よりも売れず、"これでいいのかホンダ?"
| ただしホンダは「これでも問題ない」というか「想定通り」と捉えているようだ | さて、2020年は自動車メーカーにとってタフな年であり、これまで肩を並べてきた自動車メーカーにとっても大きな差が生じた ...
続きを見る
合わせて読みたい、ホンダ関連投稿
-
なぜホンダ・オデッセイはスマート路線から押し出しの強いデザインへ転じたのか?クルマもいまや「インスタ映え」の時代へ
| ホンダはこれからデザインを大きくシフトさせるかもしれない | さて、ホンダ・オデッセイがフルモデルチェンジ。クルマのスペックについては多くのメディアが報じているので、ここで改めて述べるまでもありま ...
続きを見る
-
CR-V、フィットがRAV4/ヤリスに惨敗のホンダ。無味無臭な都会派デザインを捨て「マッチョになる」ことを検討中
| 現代では「個性的なクルマ」のほうが売れやすい傾向にあるようだ | ホンダは先日、マイナーチェンジを受けたピックアップトラック(これでも北米ではミッドサイズらしい・・・)、リッジラインを発表したとこ ...
続きを見る