| 今までの「ゼロクラウン」「クラウン ビヨンド」はクラウンをリセットし、既存イメージを書き換えるための挑戦だった |
そしてもう、「今なんとかしないと」どうにもできないところまで来たのかもしれない
さて、先日2022年モデルとしての新型クラウン発表を前に特別サイトをオープンさせたトヨタですが、今回はYoutubeへと”ティザーCM「ポートレート編」”と題された動画を公開。
ここでは文字通り、フルモデルチェンジ版となる新型クラウンの各部を捉えた画像が提示されていますが、「いつかはクラウン?」「What is CROWN?」「おわりか、はじまりか」「CROWN? CROWN!」といった文字も踊ります。
トヨタ自身が「クラウンの伝統を打破したい」
こういった動画の内容を見ると、トヨタ自身が「これまでのクラウンの伝統や、支持してきた顧客をいったんリセットしたい」と考え、自らクラウンの存在に疑問を投げかけ、新しくイチから作り直したクルマだということを容易に理解でき、トヨタのなみなみならぬ決意も伝わってくるようです。
クラウンというと1955年から販売されている伝統のモデルで、ある意味ではトヨタの象徴でもあり、「いつかはクラウン」のコピーに代表されるようにステータスシンボルでもあったわけですが、ここへきて大きな変革を遂げるということになりますね。
なぜ変革が必要なのか
そこでなぜ変わらなくてはいけないのかということについてですが、世の中には変わることで成功したブランド、変わらないことで失敗したブランドも多数存在します。
これはクルマに限らないことであり、ファッションブランドだと「コラボ」によってそのブランドへと新しい顧客を呼び込むことがメジャーな手法で、ルイ・ヴィトンやCPカンパニーがシュプリームとコラボしたり(これらはコラボ前後で客層がまったく変わってしまった)、またルイ・ヴィトンがナイキとコラボしたり、グッチがアディダスとコラボしたり、スウォッチがオメガとコラボしたり、はたまたユニクロが様々なブランドとコラボするのも同様です。
これらによって「今まで自身のブランドに興味を示さなかった人や、見向きもしなかった人、接点のなかった人」とのコンタクトポイントを作り、そこから新しい顧客として取り込んで育成することがブランドの成長にとって欠かせないわけですね。
そして自動車業界において「変わらずに失敗した」例だとC7世代までのコルベットがあり、コルベットはもともとベビーブーマー世代向けに企画されたクルマではありますが、各世代にて新しい客層を取り込むことができなかったため、そのまま「当初の客層であったベビーブーマー世代とともに客層が老朽化し」主要顧客層が70代くらいになってしまっていた、と言われます(アメリカではコルベットのドライバー=白髪というイメージがあるらしい)。
そしてその「70代の主要顧客層」がクルマを買わなくなってしまうと、それとともにコルベットの寿命もつきてしまい、よってシボレーが考えたのが「これまでの客層を切り捨ててミドシップ化し、新しいユーザーを取り込んで未来へ向かう」というもの。
実際のところ、オプション群からも「それまでの客層に人気だった」メッキホイールなどを”時代遅れ”だとして一掃してブラックアクセントを取り入れるなど現代風にフルモデルチェンジし、結果的には大成功を収めています。
そのほか、ロールスロイスも「常に自身の築いてきたイメージを上書きし続ける」ことで新しい顧客を獲得し続け、ベントレーやメルセデス・ベンツ、BMW等のラグジュアリーカーメーカーに比較して顧客の平均年齢が20歳ほど若い、とも言われていますね。
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反面、「変わらないこと」で失敗したのがアルファロメオで、「スポーツセダンが大好きなおじさん」しか買わないようなクルマづくりをしてきたために客層を極端に狭めてしまい、自ら販売の機会を失い続け、気づけば「ピークの1/18」という販売台数にまで落ち込むことに。
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こういった例を見ると「変わらねば失い続ける」ということがよくわかるかと思いますが、トヨタもクラウンについて「変わらなければ顧客の高齢化とともに販売も先細りする」と考えたのはまちがいなく、そして今までにもそういった例が見られ、だからこそ過去に「ゼロクラウン」「クラウン ビヨンド」なるコピーを掲げたりしたのかもしれません(クラウンを何度かリセットしたり、これまでのイメージを書き換えようと努力してきたことがわかる)。
そして今回については、「ちょっとやそっとの変化では状況を好転させることができない」と考え、ほぼイチかバチかの覚悟にて「ハイライダークーペ風セダン」という、まだほとんど馴染みのない、しかし今後流行るかもしれないボディ形状へとスイッチするのだと思われ、ぼくとしてはこういったチャレンジを支持したいと思います。
このチャレンジが成功するのかどうかはわかりませんが、仮にうまくゆかなかったとしても(キャッチコピーのように「おわり」になったとしても)ここまで大きな話題を呼んだことは注目に値し、発表後はさらに大きなインパクトを与えることになるのは間違いなく、「トヨタがやりやがった・・・」という爪痕を残すことも確実となりそうです。
トヨタが公開した”ティザーCM「ポートレート編」”はこちら
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参照:トヨタチャンネル