
| やはり中国向けのクルマは中国で開発するのが「一番」 |
トヨタ中国、「中国R&D 2.0」で電動化・AI戦略を本格始動
トヨタ自動車と広州汽車(GAC)との合弁会社であるGACトヨタが、自社開催による「テクノロジーデイ」にて中国市場向けの次世代戦略を発表。
この新戦略では、以下の要素に重点が置かれています。
- 電動化(BEV・PHEV・ハイブリッドの拡充)
- 次世代ソフトウェア・電子プラットフォーム開発
- Huawei(ファーウェイ)・Xiaomi(シャオミ)・Momenta(モメンタ)とのAIパートナーシップ
- 中国主導の車両開発体制(中国R&D 2.0)
将来へ向けたトヨタ中国のビジョン
今回の発表はつまるところ「中国で売ろうとするならば、日米欧が主導して開発したクルマではまったく役に立たない」「中国で売るクルマは中国で企画・開発すべき」という結論に基づいたもので、これは「今まで中国市場においても日本主導の展開を行ってきたが、中国勢に押されてクルマが売れなくなり、しかし中国主導にて開発したクルマを発売したら爆売れした」マツダEZ-60や日産N7の例を見れも明らかです。
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実際のところ、日米欧では「クルマは自分で運転するもの」という考え方に基づいた企画がなされ、そこでは「運転の楽しさ」「ドライバビリティ」という要素が重視されるものの、中国だとこれとは逆に「クルマは単なる移動手段であり、移動時間を自分のために使いたい」という感覚が強いといい、クルマを「快適な部屋」「スマホの延長」として捉える傾向が主流だと言われます。
こういったギャップがある以上、日米欧で企画開発され販売されるクルマを中国に持ち込んだとしても中国の消費者に対して高い訴求力を発揮できるとは思えず、さらには「中国市場にマッチした」クルマを提供する中国の自動車メーカーに勝てようはずもないわけですね。
よって現在、いくつかの自動車メーカーは「中国市場は独自の嗜好を持つガラパゴスとして」扱うこととなっているわけですが、トヨタもその流れに乗ることとなり、実際のところ次世代カムリ、シエナ、ハイランダーを中国チーム主導で開発中であるとも報じられ、驚くべきことにこれらは「中国で開発され、そこからグローバルモデルへと転用される」。
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アウディが「発表したばかり」のコンセプトカーをもう生産開始。これまでに考えられないようなスピード感はやはり「中国の自動車メーカーとの合弁による賜物」か
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つまり、これまでの”グローバル統一開発”から”中国市場起点の独自開発”へとシフトし、中国市場向けの最先端技術と商品力の強化を目指しつつ、そこで得た知見を世界中の他の市場へ活かすというフローへと切り替えるということになり、トヨタは「中国市場を切り捨てるのではなく」、中国市場と自動車業界を活用するという方向へと舵を切ったということになりそうです。※一部の自動車メーカーはプライドのためにこういったシフトができず、中国市場から撤退を決めている
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中国にて日産が発売した「N7」が異例のヒット。「現地自動車メーカーとの協業」によって生産する現地専用EVは日本メーカーにとっての救世主に?
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Image:TOYOTA
2つの新プラットフォームと次世代バッテリー管理システム
そこで今回発表された「具体的な」動きは以下の通り。
BEV専用プラットフォーム(コンパクト〜ミッドサイズ)
- すでに新型「bZ3X」にて採用
- 空間効率と革新的な技術を重視
マルチエネルギープラットフォーム(最大5,300mm対応)
- BEV、PHEV、REEV(レンジエクステンダーEV)に対応
- 第1弾はプレミアムセダン「bZ7」(LiDAR搭載、2026年3月発売予定)
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最新バッテリー管理システム(BMS)
- AI診断・熱暴走防止・リアルタイム寿命管理を実現
- 新型絶縁・抑制構造で安全性向上
次世代ハイブリッド戦略:3つの開発路線
- 第5世代「インテリジェント・ハイブリッド・デュアルエンジン」システムを量産開始
- 第6世代ハイブリッドを開発中
- 高性能PHEV(2027年導入予定)
- 次期型中国製シエナ、ハイランダーに搭載
- 加速性能と長距離効率を両立
シャオミと車載AI分野にて連携|クロスデバイス体験を実現
そして物理的な車体構造やドライブトレーンのみではなく、「ソフト」分野でも強化を図ると発表していますが、これも「クルマのスマートフォン化」を強く求める中国市場へと対応するためで、トヨタはシャオミとグローバル初のAIエコシステムに関する提携をアナウンス。
- bZ7ではXiaomiのスマートデバイス(タブレット・スマートスピーカー)と車両がシームレスに連携
- シャオミのAIoT(AI+IoT)プラットフォームと統合し、家からクルマへの一貫したスマート体験を提供
ファーウェイのHarmonyOS搭載|次世代AIアシスタントも共同開発
さらにインフォテイメントシステムについてはファーウェイとの定型も発表。※ファーウェイはジョイントにて電気自動車を発売しており、現地ではシャオミ同様、トヨタのライバルでもある
- bZ7はファーウェイ製「HarmonyOS 5.0」+Kirinチップ搭載
- 15.6インチ大型インフォテインメントスクリーン採用
- Tencentと共同でAI音声アシスタントを開発
- 個人識別・行動予測に基づき、2028年までにインテリジェント自動化を実現
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モメンタと共同開発|高度運転支援(ADAS)を進化
加えて「他の国や地域では重要視されないが、中国では非常に重要な」自動運転システム、運転支援システム、快適装備についてはモメンタと提携。
- bZ3XにMomentaの「6.0インテリジェントドライビングシステム」を搭載予定
- 約50項目の新機能を追加
- 声やジェスチャー入力対応、AIシミュレーションを活用した予測型運転支援
- 将来的にリアルタイムシナリオ再構築と乗員とのインタラクティブ運転支援も導入予定
- 車内AIと運転支援を統合した「協調進化型キャビン・ドライビングモデル」を開発
- ドライバーの姿勢・疲労・視線をリアルタイム解析し、車両の動作が自動で適応
- 電磁ダンパーとデュアルチャンバーエアサスを組み合わせた新「デジタルシャシーコントロール」導入
- 車体揺れ6%低減
- 制動ショック50%低減
- 快適性と高速走行安定性を向上
中国主導の開発体制「中国R&D 2.0」が本格始動
これらによって、今後中国にて発売されるクルマは「他の地域や国のそれ」とは全く違うものとなりそうですが、ここで獲得したノウハウがほか市場向けのクルマに生かされることが期待され、今後トヨタのクルマは思わぬ進化を遂げるかもしれません。※トヨタは非常に大きな会社ではあるが、こういった決断や動きは非常に速く、同業ライバルとの提携も抵抗なく行う傾向がある
つまりは中国のライバルを「敵」と捉えるか「味方」と捉えるかで今後の命運が大きく左右されるのが現在の状況ではありますが、わずか3年前であれば、日米欧の既存自動車メーカーが「中国の自動車メーカーに教えを請う」とは夢にも思えず、時代の変革スピードの速さを実感するとともに、「これからはいったいどうなるんだろうな」という期待を抱かずにはいられない今日このごろです。
Image:Toyota
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参照:CarNewsChina