
| トヨタとマツダが「思わぬ方面で」協業を開始 |
スイープ(Sweep)とは?──異なる種類のバッテリーを一括管理
EVやハイブリッド車の「売り文句」のひとつとして、車両寿命を迎えたバッテリーを建物用の定置電源に再利用できるという考え方がありますが(日産もリーフから外したバッテリーの再利用を行っている)、トヨタは10年前からこの仕組みを概念として掲げています。
そして今回、ついにそれを具現化する新技術「スイープ(Sweep)エネルギー貯蔵システム」の実証実験をスタートさせたという発表がなされ、しかもそのテスト場所はトヨタの工場ではなく、ライバルであるマツダの広島本社工場なのだそう。
マツダの広島工場ではどういった試みを?
「Sweep(スウィープ)」の最大の特徴は、異なる化学組成・容量・劣化度のバッテリーを同一システムで利用できる点ですが、これは接続された各バッテリーの電力供給をマイクロ秒単位でオン/オフ切り替えできる仕組みにより実現。
従来のテスラ「パワーウォール」のように、新品かつ同一セルを揃える必要はなく、品質にばらつきのある「中古バッテリー」を共存させることができるという特徴を持っています。
例えるなら「腕時計のボタン電池、単三乾電池、古いスマホのバッテリーパックをまとめて使える」ようなもので、さらにはバッテリーパックに内蔵されたインバーターをそのまま活用できるため、別途パワーコンディショナーが不要となり、これは直接コスト削減と効率向上につながります。
- 古いプリウスのバッテリーと最新bZシリーズのバッテリーを混在利用可能
- 劣化具合が異なる200個のパックを同時に活用できる
- 12V鉛バッテリーすらもシステムに組み込める
マツダ広島工場でのフィールドテスト
実証実験の舞台は、広島市にあるマツダ本社工場で、この工場が選ばれたのは「日本で唯一、自動車メーカー自らが運営する大規模発電設備を備えている」ため。
ここでは1,500MWhの太陽光発電を建物の屋根に設置しているそうですが、これは中規模の村を賄えるほどの発電量で、EV「MX-30」のバッテリー充電にも活用されていること、今回のテストではこの発電電力を旧EVバッテリーに蓄電し、天候や需要変動に応じて電力を安定供給する狙いがあることについても触れられています。
Image:TOYOTA
目指すのは「資源の安定調達」と「持続可能なサプライチェーン」
トヨタによれば、バッテリーの再利用は日本の自動車業界が取り組むべき「7つの課題」のひとつであり、再生可能エネルギー活用の要となると主張しており実際に2022年、トヨタは四日市の火力発電所において10万kWhの供給力を追加する計画を発表しましたが、今回のマツダ工場でのテストは、その実現に向けたステップであると見られます。
まとめ──バッテリーの「第二の人生」が本格化
EVシフトが進む中、使用済みバッテリーをどのように再利用するかは業界全体の「大きな課題」。
トヨタの”スイープ”は、異なるバッテリーを効率的に組み合わせられるという点で革新的であり、マツダとの協業によってその実用性がさらに高まる可能性が指摘され、「走るためのバッテリー」が「街を支えるエネルギー」へ──その未来が現実に近づきつつあるようですね。
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参照:Toyota