
Image:TOYOTA
| 同じメーカーがブランドをまたいで「共通パーツ」を使用することは珍しくはないが |
この記事のポイント(要約)
- 驚きの共通点:トヨタの次世代フラッグシップ「GR GT」の内装に、レクサスISのパーツが流用されている
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「流用」は悪ではない:実はマクラーレンやランボルギーニも行っている、スーパーカー界の「伝統的な手法」
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戦略的逆流:古い車から取ったのではなく、GR GTのために開発された新パーツをISが先に採用した可能性も
トヨタ最高峰の「GR GT」に、10年以上前のレクサスの面影?
さて、CARSCOOPSが発見したところによると、世界中のファンが注目するトヨタの次世代ハイパーカー「GR GT」、そしてレクサスのもっともベーシックなセダン「IS」の内装との間に大きな共通点があり、具体的には同じパーツを使用していることが明らかに。
GR GTの圧倒的な外観には誰もが見惚れますが、公開されたインテリアの細部に目を向けるとある種の「デジャヴ(既視感)」を覚えるのも事実であって、実のところこのスーパーカーの車内にはレクサスで最も安価なセダン「IS(ただし9月9日に発表された新型モデル)」との共通のパーツが隠されているもよう。
一見「コストダウンか?」と思ってしまうものの、ここではその意図について考察を巡らせてみましょう。
Image:Lexus
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GR GTとレクサスIS:どこが「共通」しているのか?
具体的にどの部分がレクサスISと同じなのか?公式画像から明らかになった主なポイントをまとめると以下の通り。
- エアコン吹き出し口(レジスター):ISの最新モデルで採用された「航空機風」のベントがそのままGR GTにも配置
- スイッチ類:ウインドウやミラーの操作スイッチは、トヨタ/レクサスの既存パーツに非常に近い
- センターコンソールのトグルスイッチ:デザインはより無骨にアレンジされているものの、ISのスイッチ配置と非常に近い設計思想が見て取れる
Image:TOYOTA
車種概要:GR GTの圧倒的なポテンシャル
ただしGR GTは「高級車」ではなく、レースに勝つために生まれたマシンでもあり、そのため本質的な性能に関わらない部分には既存の信頼性の高いパーツを使うという合理的な判断がなされているのかもしれません。
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こちらはレクサスISのエアコン吹き出し口。
Image:LEXUS
こちらがGR GT。
「走りにはさほど重要ではない」部分にかけるコストを削ることで、可能な限り求めやすい価格へと調整したり、クルマ全体でのコスト配分を「走り」へと振っているのかもしれませんね。
Image:TOYOTA
そしてこちらはセンターコンソールの操作部で、まずはレクサスIS。
Image:LEXUS
こちらはGR GT。
GR GTの場合はステータス表示をインフォテイメントディスプレイが担当するためにISとは一部異なるものの、基本的な配置は同じです。
Image:TOYOTA
GR GT の注目スペックと特徴
| 項目 | 特徴・詳細 |
| 開発コンセプト | モータースポーツ直結のホモロゲーションモデル |
| 主要素材 | カーボンファイバーを多用した軽量ボディ |
| インテリア | スエードとカーボン、デジタルメーターの融合 |
| 戦略の噂 | 新パーツをGR GT用に開発し、それをISのマイナーチェンジに「先行投入」した説も |
スーパーカー界では「パーツ流用」は当たり前?
「高額なクルマなのに専用設計じゃないの?」とガッカリする必要はなく、実は歴史に残る名作スーパーカーの多くが「意外なパーツ」を流用しており、ランボルギーニ・ガヤルドも当時のアウディとキーやスイッチ類は「ほぼ共通」、そしてランボルギーニ・ウラカンにもアウディやフォルクスワーゲンと同じパーツが使用しており、さらには「ウラカンよりもアウディに使用されるパーツのほうが高い質感を誇る」場合も(これもやはり、走りに直結しない部分にはお金を掛ける必要がないというランボルギーニの判断なのであろう)。
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そのほか、有名どころだと以下のような例もありますね。
- ランボルギーニ・ディアブロ:ヘッドライトは、日産の「フェアレディZ(Z32型)」のものを流用
- マクラーレンF1:伝説のハイパーカーではあるものの、テールランプは「大型バス」のものを流用
- ジャガーXJ220:テールランプは「ローバー200」のもの、サイドミラーは「シトロエンCX」からの流用
- ロータス・エスプリ:テールランプが「ハチロク(AE86)」からの流用
- ブガッティ・ヴェイロン:ドアミラーはアウディTTからの流用
これらに共通するのは、「本質的な走行性能(エンジンやシャーシ)には徹底的にコストをかけ、スイッチやライトなどの汎用品は信頼できる既存品を使う」という潔い設計思想であり、この思想があったからこそ「名車が名車たり得た」のだとも考えられます(何でもかんでも専用設計とすれば開発期間やコストが異常に嵩み、信頼性も高いとはいえないものとなる可能性がある。逆の観点から見ると、こういった”流用”はクルマの設計を知り尽くしているからこそ可能となる)。
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さらにはアストンマーティンが「自社による開発」と「他社からの供給」を明確に分け、汎用性の高いパーツを「他社からの供給に頼り」、その反面、自社の得意分野、そして自社でしかできない部分に開発リソースを集中させるという判断を下したのも同様の理由だといえそうですね。
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結論:この共通点は「トヨタの信頼」の証である
よって、GR GTにレクサスISのパーツが使われていることは決して「手抜き」ではなく、むしろ過酷なサーキット走行にも耐えうる品質を「普段使いで乗れる」レクサスISが既に備えているということの裏返し。
なお、自動車業界では、既存の部品を組み合わせて新しいクルマを作ることを「パーツビン(部品箱)・エンジニアリング」と呼びますが、これは開発コストを抑えるだけでなく、すでに何万キロも走行テストされた「壊れない部品」を使えるという大きなメリットがあるためです。
最新のEVベンチャーが苦戦する「スイッチがすぐ壊れる」「雨漏りがする」といった問題を、トヨタのような老舗メーカーが回避できるのは、まさにこの「部品箱」の歴史があるからというわけですね。
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