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カーボンモノコックはもう古い?世界最高速記録ホルダー、ニュル最速EVのBYD「Yangwang U9 Xtreme」。航空宇宙技術を応用した“3Dプリントボディ”を持つことが明らかに

カーボンモノコックはもう古い?世界最高速記録ホルダー、ニュル最速EVのBYD「Yangwang U9 Xtreme」。航空宇宙技術を応用した“3Dプリントボディ”を持つことが明らかに

Image:BYD

| フェラーリF80、マクラーレンW1などが「3Dプリントされたフロントサスペンション」を持つことは知られているが |

「3Dプリントボディ」はまだまだ珍しい存在である

中国BYDのプレミアム・パフォーマンスブランド「Yangwang(仰望 / ヤンワン)」が、同ブランドのフラッグシップEV「U9 Xtreme(U9X)」に採用された革新的な3Dプリント構造ボディの詳細を発表。

同モデルは先日、ニュルブルクリンク北コースにて量産EV最速となる6分59秒157を記録しており、その裏には航空宇宙レベルの素材技術と製造精度が隠されていた、というわけですね。※3Dプリントボディの画像はこちら(IT HOME)

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■ 航空宇宙グレード素材と独自アルミ合金

BYDオートエンジニアリング研究所の楊峰(Yang Feng)氏によると、U9Xの3Dプリント構造は「新しい自動車製造のパラダイムを探る実験的プロジェクト」。

開発チームは航空宇宙分野の軽量化研究をベースにした高強度アルミニウム合金を新たに開発し、その合金は従来の鋳造アルミの3倍の降伏強度を持つとされ、剛性・安全性・軽量化のすべてを高次元で両立させています。

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Image:BYD

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■ 世界初の「Printing HyperCell」構造

U9Xのボディには、「Printing HyperCell」と呼ばれる世界初の3Dプリント構造が用いられていますが、これは内部にハニカム状のリブと空洞を組み込んだ多層構造を採用し、連続する複雑な曲面の接続課題を解決する存在です。

結果として、同重量のソリッド構造と比較してねじり剛性が200%以上向上したといいます。

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なお、フェラーリF80、マクラーレンW1、ブガッティ トゥールビヨンはフロントサスペンションに3Dプリントされたアームやナックルを採用していますが、車両の骨格にこれを採用した例は珍しく(他にはシンガー21Cくらいかもしれない)、BYDの先進性が光るところでもありますね。

BYD-yangwang-U9-Xtreme4

Image:BYD

マクラーレン
マクラーレンが米新興企業と提携を結び「AIによる設計、3Dプリントによる製造」を取り入れると発表。なおこの新興企業はブガッティとも提携済み

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■ 航空機エンジン並みの製造精度

製造工程ではレーザー選択溶融(SLM)技術を用いて0.03mm単位の高精度を実現し、さらには薄肉部品で発生する熱変形を補正する動的プロセス補償アルゴリズムを導入することで主要取り付け面の寸法公差をわずか0.1mm以内に維持。

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これは航空機エンジン部品と同等の精度だといい、驚くべきエンジニアリング上の偉業といっていいのかもしれません。

■ 時速400kmでも安定する剛性と統合性

素材、構造最適化、製造精度の組み合わせにより、U9Xの3Dプリントボディは時速400km/hでも安定した動的性能を発揮することとなりますが、このアプローチによって車両サブシステム間の統合性も高まり、ハンドリングや応答性が大幅に向上している、とのこと。

「エクストリーム」ではない通常のU9にもこのフレームが採用されていると考えてよく、どうりで「ジャンプしても」バランスを崩さずに走行ができるわけですね。

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■ 欧州でも高評価。唯一の中国ブランド受賞

なお、この技術は客観的に評価がなされており、「European Car Body Conference」において最高評価を受け、唯一の中国ブランドとして表彰されたことからもその技術的優位性がわかろうというもので、航空宇宙分野のエンジニアリングを自動車産業に応用した一例かつ先駆的存在でもあり、今後のクロスインダストリー的な製造革新の方向性を示すものであるとも考えられます。

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【まとめ】

今回、ニュルブルクリンク最速EVという華々しい記録の裏に、BYDが仕掛ける「3Dプリント製造革命」が存在していたことが明らかになり、この技術が将来的に他のモデルや量産車へ波及すれば、自動車の「作り方」そのものを変える可能性も。

もはや中国ブランドは“模倣”ではなく“革新”の最前線に立っていることを示す事象であると考えてよく、その革新の速度、そして着眼点には驚かされるばかりです。

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参照:CarNewsChina

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