働かなければお金が入ってこなくなるだけだ
blogよく、人工知能やロボットが普及すれば「働かなくても良くなる」と言われますよね。
要は人間がやることをロボットがやるから、というわけです。
しかし、ぼくは「それはどうかな?」といつも考えるのです。
ロボットが人間の代わりになることは否定しませんが、それで働かなくても良くなるというのは別問題だと思うのですね。
人工知能やロボットは自分のかわりに「タダ」で働いてくれるわけではない
たとえばAさんという人がいるとします。
Aさんは普通の会社員でなにかの営業さんだとします。
人工知能が普及すると、このAさんは人工知能が作るポートフォリオや企画書に太刀打ちできず、職を失うことになるかもしれません。
実際に職を失ったとして、Aさんは「働かなくても良い」のではなく「働けなくなった」ということになりますが、失職すると収入がなくなるので餓死することになります。
これは「働かなくても良い」わけではないということですね。
では、「働かなくても良いようにするにはどうするか」ですが、Aさんが自分のかわりになる人工知能を持つ必要があります。
そういった人工知能がAさんの所得で持てるのかどうかということですが、人工知能が普及すればそれは可能になるかもしれません。
普及したとして、Aさんが人工知能を購入して「自分のかわり」に働かせ、自分は楽をしようと考えたとします。
人工知能はAさんの代わりに働きますが、人工知能はAさんのかわりにどれくらい稼げるのか?ということですね(人工知能を購入した分を取り戻せるくらい稼いでもらわないと意味はない)。
そしてマネーサプライが一定だとすると、お金の量も一定なので、誰かのところへより多くのお金が流れることになります。
この場合の「誰か」はより優秀な最新型の人工知能かもしれませんが、Aさんが購入した人工知能よりも優れた人工知能があれば、Aさんはこの人工知能をアップデートするか買い換えるより他無く(人工知能もハードウエアの性能に依存すると考えられるので)、そうなるとそのお金はどうするの?となりますよね。
Aさんの人工知能はすでに旧型で、新型の人工知能にお金を持ってゆかれたとすると、もうお金を稼ぐ手段がないわけです(人工知能のアップデートをすればいいのですが、そのためにお金を稼いでいるような状態になる)。
じゃあ政府はお金を刷ればいいじゃない、となりますが、そうするとインフレになるだけで、刷った分だけ新しい人工知能に持って行かれるだけで根本の改善にはなりません。
結局は人工知能を作った側が儲けるだけで、庶民は今以上にワリを食うことに
こういった構図を考えると、一番儲かるのは「人工知能をつくった側」ということになり、自分たちが最大限の利益を得られるように人工知能のリリースは制限すると思うのですね。
機能やバージョンを限定したり、毎年バージョンアップして定期的に収入を得られるようにする、つまり家電やパソコン、もっとわかりやすく言うとiphoneのような感じです。
アップルは儲かるがアップルユーザーは別に儲からないのと同様で、人工知能が出来たとして、人工知能を販売する側が利益を得るだけなんじゃないかと思うわけですね。
これを肉体労働に置き換えるとどうかということを考えてみますが、清掃員だと仕事を清掃ロボットに取って代わられることになり、しかし清掃員がロボットに仕事を奪われるだけの話で、ロボットが自分のかわりに稼いでくれる、ということではないですよね(ロボットはタダではない)。
たとえば優秀な工作機械が入ったせいで自動車の組立て工が不要になりデトロイトが寂れてしまった(販売的側面もあるかとは思いますが)のと同様で、ロボットが普及することで、今後より人間の生活が苦しくなるだけ(そしてロボットを作る会社が大きくなるだけ)なのかもしれません。
ロボットを買って自分の代わりに働かせたら?
この場合、自分が働かずにロボットを働かせてお金を得る方法は「ロボットを購入する」ということになりますが、一般の努めびとが人間の代わりになるほどのロボットを購入できることはまず無理だと思われ、そもそもロボットをそんなに生産する材料や施設はどこにあるのか?と考えられます。
生産する電力も材料も不足し、となるとやはりロボットの生産は一気には進まないだろうということですね。
仮にそれが進んだとして、自動車くらいの価格で買えるようになったとして、メンテナンスや買い替えの必要が出てきますし、ロボットもどんどん進化するので「同じコストで二倍の面積を掃除できる」お掃除ロボが登場すれば、せっかく買った自分のロボットも無用の長物になります。
この場合もやはり儲かるのは「ブレードランナー」でレプリカントを提供するタイレル社やウォレス社のような「供給元」となるわけで、ロボットが働いたからといって自分が楽になる、働かなくて良くなるわけではない、ということです。
自前のロボットを持っていなければ「ロボットに取ってかわられる」だけの話で、自分が無用の存在となる可能性がある、ということは認識する必要があります。
つまり自分の生活するお金はだれが払ってくれるのかということですが、自分の仕事をうばったロボットがそれを払ってくれるわけはなく、自分は餓死を待つだけということになりますね。
人工知能やロボットは戦争ではなく「経済を崩壊させる」ことで人類を危機に陥れる?
人工知能やロボットを手に入れるにはお金が必要で、それがある人しか人工知能やロボットを手に入れることはできず、そして手に入れた人工知能やロボットもメンテナンスや買い替えを行う必要があり、そうしないとまたほかに仕事を奪われるということですが、そのお金を誰かが払ってくれないかぎりは(それは絶対にない)自分が「働かなくても良い」未来が来るとはぼくには思えないわけです。
自動車が発明された→これで歩いて移動しなくてもすむ、と考えても自動車を買わなければ歩いて移動しないといけないのと同じで、人工知能やロボットも自動車と同じで「タダ」ではない、ということに。
公共交通機関のように公共用の人工知能やロボットも出てくるかもしれませんが、それらを利用して「働かなくても良くなる」というのはちょっと考えにくいですしね(”公共”なので専有できる時間と範囲が限られる。限られた時間と範囲で獲得できるお金は通貨の量が一定であれば、一人の生活をまかなえるほど十分であるとは考えにくい)。
人が生きてゆくには経済活動が必要で、そうなるとお金の出処が必要となるわけですが、自分が働かないとそのお金はどこからも出てこないということです。
この問題をクリアするには社会国家化して国が国民のロボットを支給し、生活必需品は配給制にでもすれば良いかと思いますが、そんな未来もだれも望んではいないかもしれません。
ぼくは人工知能は人間の考える以上の速度で進化し、それはロボットも同様だと考えていますが、人工知能は人間が築いてきた「経済」というものを破壊してしまうインパクトを持ちうるとも考えていて、その意味ではスカイネットのように武器を使わなくても人類を(経済的に)壊滅状態にできるかもしれませんね。