| 希少性を維持し、かつ利益総額を向上させるには、もっとも利益率の高い「貴金属、宝飾系」に乗り出すしかない |
すでにその流れははじまっている
さて、価格高騰が続く腕時計業界ですが、その方向は現在「宝飾腕時計」へと向かっているように見えます。
この傾向は半ば「必然」とも言えるもので、なぜかというと「高級腕時計は大量に生産すると価値が下がり、しかし営利企業である以上利益を稼がないとならず、この問題をクリアするのが宝飾腕時計のような高額(高単価・高利益)商品だから」。
ただし高い製品を作ればなんでも売れるというわけではなく、そこにはブランド力が伴う必要があり、よって現在ロレックスやパテックフィリップ、オーデマピゲなど高いブランド力を持つ腕時計ブランドの主力はステンレスから貴金属へ、そして宝飾腕時計へと移っているように思われます。
かつては男性用腕時計では宝飾腕時計なぞ「もってのほか」だったが
なお、機械式腕時計ファンのほとんどはその腕時計の評価を「ムーブメント」で決めており、自社製(マニファクチュール)でないとダメだとか、どの複雑機構がどうといった機能面で評価していて、よって「貴金属」「宝石」といった、機械的な性能に無関係なところにお金をかけて高価になってしまった腕時計は「邪道」とされていたわけですね(腐食しないという理由や、慣性を利用するため巻き上げ用ローターに比重の重い金を使用するといった、構造的機能的メリットがある場合は例外であるが)。
そのため、ロレックス・デイトナにおいても、コンビモデルやダイヤ入りモデル、金無垢モデルが店頭で購入できる時代、セカンダリーマーケットで「定価割れ」だった時代が長く続いていたものの、今ではそれも「過去の話」となっていて、それは金無垢ゴールドダイヤルやアイスブルーのプレミア価格を見てもわかるとおりであり(ある程度恣意的に相場をコントロールしているはずだ)、とにかく腕時計メーカーは高価格モデルに重心をシフトしているのは間違いなく、そしてその手段が「貴金属」「宝石」ということに。
なお、貴金属や宝石を高価格のために手段として用いるのは「ムーブメントの高性能化・高付加価値化」には限界があるためで、ミニッツリピーターやトゥールビヨン、永久カレンダーを搭載したとしても、それだけで「何千万も」の価格を提示することは難しく、しかし貴金属+宝石だと容易に何千万のプライスタグを掲げることが可能であり、かつ「製造が容易」というメリットも存在するわけですね。※リシャール・ミルのような、素材や加工方法、構造に究極を求める手法も可能だが、二番煎じになってしまう
よって、ブランド力を高めた腕時計メーカーがこぞって向かうのが”超複雑時計に比較して簡単に製造でき、利益率が高い”「貴金属」「宝石」系腕時計であり、今はまだ宝石入り腕時計について多くの人が否定的ではあるものの、あと数年もたてば(貴金属系腕時計が高い評価を得るようになった流れと同様)宝石入り腕時計が非常に高く評価される時が来るだろうとも考えていて、今は宝石入り腕時計を「キャバクラ通いをするオッサンが身につけるもの」と断じて切り捨てている若者も、少し後にはロレックスの正規店に列をなして「ダイヤ入りデイトジャスト入ってないですかね」とスタッフを問い詰めることになるのかもしれません。
オーデマピゲも宝飾系ラインアップを大幅拡充
そこで今回取り上げたいのがオーデマピゲの新作腕時計、ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー(Ref. 26598BC.ZZ.1220BC.01)。
これは見ての通りベゼルにずらりとダイヤが並べられたモデルですが、おそらく今後オーデマピゲの人気モデルはステンレス製ではなく、こういった貴金属+宝石モデルに推移するんじゃないかと予想しているわけですね。
このモデルのケース18金ホワイトゴールドで、これにブラシ加工と面取りを行っており、ベゼルには32個のバゲットカットダイヤモンドが並びます。
搭載されるムーブメントはパーペチュアルカレンダーを備えるキャリバー5134。
なお、現在の腕時計業界における文字盤カラーの流行はブルーを経てグリーン(派生でカーキ)、そしてベイビーブルーもしくはアイスブルーとなっていますが、そんな中でオーデマピゲは「そこまで強く流行を意識せず」比較的独自路線を歩むブランドでもあります(逆に流行に敏感なのはオメガ、そしてブライトリング)。
そして「流行に乗る」よりは「流行を創り出す」ことに重点を置いているためか新しい試みも多く、カラー面だと「パープル推し」もそのひとつですね。
そしてこちらの「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ(Ref. 26393OR.OO.A002KB.02)」もやっぱりパープル。
ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン エクストラ シン (RD#3) “50周年記念”(Ref. 26660ST.OO.1356ST.01)もやっぱりパープルです。
ただし流行は「レインボー」へ
そしてぼくが予想するのは「宝飾腕時計は今後、レインボーへ向かうだろう」ということ。
最近はダイヤモンドへの着色技術の向上によって容易に(思い通りの)カラーを再現できるようになったと言われますが、そういった背景もあって腕時計業界ではレインボー仕様が急増中で、特にウブロにはその傾向が顕著です。
もちろんオーデマピゲもこれに追随。
パテック フィリップもレインボーモデルを投入していますね。
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ぼく自身は宝飾系腕時計に(今のところ)興味はないものの、しかしこういった腕時計を身につける気分を味わってみたく、ネタ半分で購入してみようと考えることもあるのですが、まだまだ(宝飾系腕時計の)セカンダリーマーケットが成熟していないために売却時には大幅に(一部モデルを除いて)損をすることになるため、なかなか手を出せずにいます。
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