| ついに日産シルビアが復活?いやそれはない? |
「日産シルビアがアルピーヌA110ベースで復活か」という噂が表面化。
なぜアルピーヌ?ということですが、現在日産とルノーは同じアライアンス下にあり(三菱も)、お互いのプラットフォームや技術を利用可能なところから出てきた話だと思われます。
ちなみに「シルビア復活」の話はこれまでも何度か出てきてはいるものの、日産は「一つのカテゴリに多くのモデルを投入しない」方針を持っており、たとえばスポーツカーだとGT-R/フェアレディZ、ミニバンだとセレナ、コンパクトカーだとノート、SUVだとエクストレイルといった具合に「各カテゴリには強いモデルが一つあればいい」という戦略を採用しているように見えます。
それによって自社内での競合や販売リソースの無駄を削減し、しかしその「ひとつの」モデルにリソースを集中させ、価格的にもメリットを持たせているように見えますが、その意味でも「シルビアの投入は日産にとって無駄そのもの」なのではないか、と考えています。
つまりシルビア登場は”ない”だろうということですが、それではあまりに夢がないので、復活の可能性について考えてみましょう。
現在、スポーツカーは冬の時代
なお、ご存知の通り今はスポーツカーにとって「冬の時代」。
要は売れないということですが、逆にマクラーレンやフェラーリ、ランボルギーニ、アストンマーティンといったスーパースポーツカーメーカーは「春を謳歌」している状況でもあります。
なぜスポーツカーとスーパースポーツカーでここまで差が開いたのかということですが、単に「スポーツカーが必要なくなったから」とも言えます。
かつてはスポーツカーの他にあったのは「セダン」「ワゴン」といった選択肢で、ちょっと「オッサンくさい」ものばかりでしたが、今ではミニバンやSUVといった選択肢があり、とくに、かつてスポーツカーを好んだ「アクティブな層」はSUVに流れているのかもしれません。※昔はただ、オッサンくさくないクルマの選択肢が”スポーツカー”だった
そしてスポーツカーは「スポーツ走行しか取り柄がない」のでスポーツ性能を高める必要があり、となる価格も「高く」なりがち。
しかし実際はスポーツ走行を行う人は(スポーツカーユーザーにも)ほとんどいないと思われ、であればスポーツカー並みの加速性能を持ち、しかし価格の安い、そしてオッサンくさくないSUVへと興味が移るのは当然とも言えそうです。
そんなワケでスポーツカーは存在意義を失ってしまい、しかし「スーパースポーツは、スーパースポーツしか持ちえないルックスや、絶対的な性能がある」ために自身の存在意義を保持し続けているのかもしれません。
スポーツカーはとにかく高価
上でも触れたとおり、スポーツカーはやはり高価になりがち。
高性能なエンジンはもちろんですが(今ではコンパクトカーでもエンジンは高性能なので、これらの流用も可能)、そのパワーを受け止めるだけのサスペンションやブレーキ、ボディも必要。
となるとどうしてもパーツのコストが高くなり、しかしここを削ると「スポーツカーがスポーツカーたる要件」を満たせなくなり、存在自体が無意味になりますし、少数とは言えどもサーキット走行を行う人もいるので、その際に満足できる性能を持たせる必要があります。
つまり、スポーツカーは「多くの人が走らないであろうサーキット」走行に耐えうる性能を持っていないといけないということになり、多くの人は「使わない性能にお金を払う」ということにもなりますが、これが「割高」に感じられる一つの要素。
逆に「等身大」のミニバンやSUVだと、”実際に使用する環境での”価格性能比がスポーツカーに比べて割安になると考えられます。
よってBMW Z4とトヨタ・スープラのように「数がそんなに出ない(利益も出ない)」ことを前提にスポーツカーを作ろうと考え、開発費を折半することでコストを下げるというケースが出てきていますが、今回の「シルビアとアルピーヌA110」も同様の考え方だと言えそう。
ただ、アルピーヌA110は基本的に「すべて専用設計」とも言っていいクルマで、ミドシップレイアウトのプラットフォームはもちろん、ブレーキやホイール、シートやシートレール、タイヤまでも専用品。
そのためベーシックモデルで790万円というプライシングなっていて、もしこれを「日産シルビア」に転用するにしても、プラットフォームはそのまま使用する必要があり(改修したほうがコストがかかる)、これは「削れない」コスト。
エンジンとトランスミッションはファミリーカーから流用することができるかもしれませんが、まさか「CVT」は使えず、やはりルノーのDCTを使うことになると思われ、ここも「あまりコストが下がらない」ところですね。
一方でサスペンション、ブレーキ、ホイール、タイヤ、シートなどは日産の他モデルから流用できる部分があると思われ、これによってコストは多少下がるかもしれないものの、再設計や調整の手間を考えても劇的なコストダウンは望めず、どうやっても市販価格は「500万円くらい」になってしまうのかもしれません。
そして500万円という価格は「あまりに割高」だと思われ、というのも中古でポルシェ・ボクスターやアウディTTS、BMW Z4などが余裕で買えるから。
500万円なのに「妥協の産物」であるシルビアを新車で購入するよりは、「妥協なく作られた」ポルシェ・ボクスターやケイマンの型落ちを購入したほうがまだいいんじゃないかとも考えていて、そういった意味でも「ハンパな性能と、ハンパな価格を持つ」スポーツカーの存在意義は薄くなってきているのかもしれませんね。
なお、日産シルビアの変遷はこんな感じ。