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| 日産、本社ビル売却でゴーン時代に終止符。新CEOエスピノーサが進める“帝国解体”の現実 |
マクラーレン同様、日産はは「テナント」としてかつての本社へと入居
日産自動車が横浜・みなとみらいにあるグローバル本社ビルを売却する方針を固めたことが明らかに。
かつて「ゴーンが築いた家(House that Ghosn Built)」と呼ばれた象徴的な建物が、ついに外部へ手放されることになりますが、その買い手は 台湾の自動車部品メーカー「Minth Group(敏実集団)」がスポンサーとなる投資グループで、売却額は約 6億3000万ドル(約950億円) とされ、当初予想よりも約4000万ドル低い“実質的な値引き売却”となる見通しが報じられています。
本社ビル売却の背景:新CEOエスピノーサが進める“スリム化”改革
この売却は新CEO、イバン・エスピノーサによる強力なリストラ計画の一環で、「先のことよりも今」を考え、手元に現金を確保するための施策です。

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● 日産は今、巨額の赤字に直面
日産2026年3月期に 20億ドル(約3000億円)近い営業損失を計上する可能性が非常に高く、財務基盤の強化が急務とされており、不動産を保有するより手元資金を厚くする(そしてその資金で再起を狙う)判断が優先された形です。
● 売却後も日産は本社を使い続ける
売却後、日産は20年間の長期リース契約を結び「本社機能はそのまま維持」。
いわゆるセール&リースバック方式で、実質的には“大家からテナントへ”と立場が変わるという「マクラーレンと同じ」方式ですね。
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“帝国の崩壊”。ゴーン時代の象徴が姿を消す
今回の本社売却はカルロス・ゴーン時代の象徴的な終焉として受け止められ、しかし現在の自動車業界は巨大連合よりも、利益率と財務の健全性が重視される時代へと移行。
エスピノーサCEOは“帝国拡大”とは真逆の“帝国解体”を戦略に掲げているところが現代的であり、いままでの日産とは異なるところなのかもしれません。
- 本社ビルはゴーン自身が2009年にオープンを主導
- ルノー・日産アライアンスの巨大化を象徴する建造物
- 市場支配を志向した“帝国的経営”のシンボル

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ゴーン・タバレス時代の終焉。巨大アライアンスはもはや時代遅れ?
なお、この少し前にはカルロス・タバレスがステランティスを退任しており、様々な意味で時代の移り変わりが感じられるのが昨今の自動車業界。
- ゴーンの後継者的存在だった カルロス・タバレス(前ステランティスCEO)も退任
- 巨大アライアンス、巨大企業体の時代は終わりつつある
- 競争力のない商品ラインアップや、利益率の低さを隠すことはできない
自動車メーカーの価値は、「市場シェアより利益」「規模より健全性」へとシフトしており、日産も例外ではない、というわけですね。
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新しい日産は“より小さく、より強く”なる?
本社ビルの売却は象徴的ではあるものの、日産の事業そのものが縮小することを示すものではなく、むしろ・・・。
- 高コスト体質の改善
- 不採算事業の撤退
- EVへの再投資
- ブランド価値の再構築
といった“筋肉質な経営”への転換をエスピノーサCEOは目指していると言えます。
20年リース契約を結んだ投資家側が日産の存続を織り込んでいる点からも、「日産の危機は深刻だが、倒れるとは見られていない」という現実も見えますね。

まとめ:本社売却は日産にとって“終わり”ではなく“再出発”のサイン
- ゴーン時代の象徴だった横浜本社ビルを売却
- 新CEOエスピノーサによる大胆なスリム化改革
- 20年リース契約で本社機能は維持
- 巨大アライアンス時代の終焉を象徴する出来事
日産は今、歴史的な岐路に立っており、今回の本社売却は「かつての“帝国”の影に頼るのではなく、より小さく、より収益性の高い”新しい日産”へと生まれ変わるための、避けて通れない一歩」と言えそうです。
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