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新型コルベットをシャシダイに載せた結果558馬力を発生。しかし「絶対にそんなに出ない」とボクが考えるその理由

2019/10/29

| ロスを考慮するとエンジン単体で650馬力。どう考えても6.2リッターV8のLT2ではそんなに出ない |

カーメディア、Motor Trendが新型C8コルベットをシャシーダイナモに載せてパワーチェックを行ったところ、なんと558HPを発生。
これはシボレーが公称値として公開した「495HP(500PS)」を大きく超える数字です。

なお、メーカー公称値はシャシーダイナモにクルマを載せた状態、つまり「軸出力」ではなく、エンジンに補機類を取り付けていない「エンジン単体」での数値となるため、シャシーダイナモで計測すると、補機類、トランスミッション、ドライブシャフト等によって(MRの場合)15%程度が駆動ロスとして失われるとされ、これを考慮するならば、新型コルベットのエンジン単体では「656HPくらいを発生している」ということに。

自然吸気エンジンは「一定の数字」を超えることはできない

この「558HP」を記録したのは5速ギア使用時で、現在シボレーはギア比を公開していないものの、モータートレンドによると、「おそらく1:1(直結)に近い」。
ちなみにその後数回パワーチェックを行っても561HP、556HPという数字が出たそうですが、正直なところ、これは「ありえない」数字。

最近計測されたほかのクルマだと、BMW M5やマクラーレン720Sなど「大きく公称値を超えるクルマ」があり、しかしそれらは「ターボエンジン」。
ターボエンジンは加給を行うため、条件が揃えば巨大なパワーを発生することがありますが、今回のコルベットに積まれるエンジンは自然吸気6.2リッターV8(LT2)。

自然吸気エンジンの場合、パワーはほぼ排気量に依存することになり、たしかに6.5リッター自然吸気エンジンから800馬力を発生するフェラーリ812スーパーファスト、同じく6.5リッター自然吸気エンジンから770馬力を絞り出すランボルギーニ・アヴェンタドールSVJといったクルマもあるものの、これらのピークパワー発生時のエンジン回転数は8500RPM。

なぜ回転数が重要なのかということですが、自然吸気エンジンの場合、エンジンパワーは「回転数×トルク」で決まるためで、一般にパワーを上げるには回転数を上げるしかないため。※JAFの解説がわかりやすい

ちなみに新型コルベットについてはピークパワー/トルク発生時のエンジン回転数が明かされておらず、レブリミットも不明。
ただしピークトルクは470lbという(公式サイトでの)記載があり、これはフェラーリ812スーパーファストの529lbの「89%」。
仮に新型コルベットに搭載されるエンジンが8500回転まで回ったとすると「712馬力」を発生することになりますが、LT2のレッドゾーンは6500-7000回転くらいだと(これまでのモデルから推測するに)思われ、となるとこれはフェラーリ812スーパーファストの76-87%くらい。
これ(76−87%)にトルク差を乗じた712馬力をかけると、C8コルベットのエンジン単体での出力は541-619馬力くらい、という計算となります。

これにパワーロス分の15%を考慮すると459-526馬力という数字が導き出され、となるとC8コルベット公称値の「500馬力」に近い数字になるので、なんらかの理由でシャシーダイナモに異常値が出たのでは、と考えるのが妥当です。

出力の高いNAエンジンは非常に高価

なお、自然吸気エンジンでパワーを出すには、上述のように「回転数を上げるしかない」ということになり、回転数を上げるには各パーツの高い精度が必要になるため、必然的にエンジンが高価になります。
よって多くのクルマは「ターボ」もしくは「スーパーチャージャー」によって加給を行い、回転数を上げずにパワーを稼ぐことになるわけですね(回転数を上げると二酸化炭素排出量が増え、パーツの損耗も大きいという問題もある)。

感覚としては、自然吸気エンジンにおいて、排気量の10%以上の馬力(2000ccであれば200馬力)が出ていれば「かなり精度の高いエンジン」と考えていいという認識ですが、フェラーリ812スーパーファストは排気量の12.4%、ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJも11.8%という数字を持っていて、これらは相当にハイチューンな部類。

参考までに、ホンダS2000に搭載されていたF20Cは排気量2000ccに対して出力250馬力なので、なんと12.5%という驚愕の値を誇ります(レブリミットは8300回転)。

これまで紹介してきたパワーチェックの結果をまとめてみると下記の通り。

マクラーレン600LT(ターボ/MR)・・・カタログ値600馬力に対して574馬力、ロスは4.3% 。ロス15%で逆算すると、660馬力くらい発生している

マクラーレン720S(ターボ/MR)・・・カタログ値720馬力/実測698馬力、苦労ロスは3%。逆算するとエンジン単体では800馬力くらい出ている

アウディRS4(ターボ/4WD)・・・カタログ値450馬力/実測460馬力、逆算するとエンジン単体で580-610馬力くらい発生

BMW M5(ターボ/4WD)・・・カタログ値600馬力/実測625馬力。逆算するとエンジン単体では781-840馬力くらい出ている

トヨタGRスープラ(ターボ/FR)・・・カタログ値340馬力/実測345馬力、逆算すると383PS~405PSくらいを発生

フォードGT(ターボ/MR)・・・カタログ値647馬力に対して実測値525馬力、ロス19%

アルファロメオ・ジュリア・クワドリフォリオ(ターボ/FR)・・・カタログ値510馬力/実測392馬力、ロス23%

ランボルギーニ・ウラカンRWD(自然吸気/MR)・・・カタログ値580馬力/実測492馬力、ロス15%

ホンダ・シビック・タイプR(ターボ/FF)・・・カタログ値320馬力/実測295馬力、駆動ロス8%

コルベットZR1/C7(スーパーチャージャー/FR)・・・カタログ値755馬力/実測値654馬力、ロス13%

ポルシェ911(992 ターボ/RR)・・・カタログ値450馬力/実測値424馬力、ロス6%

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