| アメリカでのトラック人気を考慮すると、フルラインアップカーメーカーとしては避けて通ることはできないだろう |
ただしブランドイメージの毀損や市場との相性、独自性の演出は必須
さて、アウディがなんと公式に「ピックアップトラックの導入を検討している」と発表。
これはアウディCEOであるマーカス・デューズマン氏が年次メディアカンファレンスにて言及したもので、「必ずやるとは約束できませんが、検討はしています」という言葉によって伝えられ、近いうちにピックアップコンセプトを発表することについても触れています。
つまりはけっこう高い実現可能性を持っているとも考えられますが、その場に同席していたベントレーのエイドリアン・ホールマークCEOは、ベントレーのポートフォリオにピックアップを加えることについては「ちょっとね」といった感じで冗談交じりにコメントしたようですね(よって、同じグループと言えど、ベントレーにトラックが加わることはなさそうだ)。
アウディ初のピックアップトラックはどんなクルマに?
そこで気になるのが、アウディ初のピックアップトラックがどんなクルマになるのか。
現時点ではその詳細が公開されておらず、一部報道は積載量1トン程度のトラックになるといい、となるとトヨタ ハイラックス、いすゞ D-Max、三菱トライトンくらいのサイズだと考えられ、フォードF-150やトヨタ・タンドラのようなフルサイズ・ピックアップではなさそうですね。
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そうなるとフォルクスワーゲンが販売するアマロックと多くを共有する可能性もあり、しかし逆に「フルサイズの電動ピックアップになる」というウワサもあるもよう。
つまりはフォードF-150ライトニング、リビアンR1T、テスラ・サイバートラック、GMCハマーEVと競合するクルマということですが、このサイズだと(テスラが小型サイバートラックを検討していると言われる通り)アメリカ以外では販売ができずに販路を狭める可能性もありそうです。
ただ、そのアメリカでは「トラックしか売れていない」状況なので、ワールドワイドで販売することを捨て、アメリカ市場に特化した製品を投入するのもひとつの手なのかもしれません(ただ、そこで売れなければかなり辛いことになる)。
なお、アウディはVWグループの持つMEBや、ポルシェとの共同開発によるPPEアーキテクチャを含む多くのEVプラットフォームを利用することができ、どちらもAWD機能を提供し、サイズについてもフレキシブルというメリットを享受できるほか、アウディ自身も2026年に以降はガソリンエンジン搭載モデルを発売せず、2030年代前半にはオールエレクトリックに移行すると宣言しているため、やはり新しいピックアップトラックは「エレクトリック」になると考えるのが妥当かもしれません。
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そのデザインはAI:Trailコンセプトとの共通性も
そしてアウディの新しいピックアップトラックについては、2019年に発表されたコンセプトカー「AI:Trail」から影響を受けると言われていて、しかしさすがにここまでエクストリームにはならないであろうことも想像がつきます。
このAI:Trailについては「オフロード」「自動運転」をキーワードとして掲げ、車両を駆動するのは4つのレクトリックモーターで、全長は4.15メートル、全幅2.15メートル、全高は1.67メートル、そしてタイヤは22インチサイズ、最低地上高はなんと24センチ。
渡川能力は50センチ、車体重量は1,750キロとアナウンスされています。
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プレミアムカーメーカーとピックアップトラックとは相性が悪い?
なお、プレミアムカーメーカーがピックアップトラックを発売した例としては「メルセデス・ベンツXクラス」が存在しますが、こちらは正直なところ「失敗作」。
メルセデス・ベンツとしても「売れるかどうかわからない」と考えたのか、自社による新規開発ではなく、日産ナバラやルノー・アラスカンと車体を共有するという手法にて製品化を行い、2017年7月に投入するものの、その「中途半端な出来栄えの割に高価」なところが敬遠され(つまりは購入する理由に乏しい)、2020年5月に短い生涯を閉じています。
「スポーツカーを購入するならスポーツカーメーカーが作るクルマを」と多くの人が考えるのと同様、ピックアップトラックについても「オフロード車メーカーや、実績のある自動車メーカーのクルマ」をと考える人が大勢を占めるのは間違いないものと思われ、いかにアウディの知名度とブランドイメージを持ってしても「普通の」ピックアップトラックでは全く売れない可能性もあり、よって「アウディならではの」「買う理由が明確な」ピックアップトラックを企画することが重要なのかもしれませんね。
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参照:Autocar