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| アウディは数年前から「内装品質の低下」を自覚している |
記事のポイント(3行まとめ)
- 脱・ディスプレイ依存: アウディの新デザイン・ディレクター、マッシモ・フラスチェラ氏が「技術のための技術(巨大画面)」に異を唱える
- 「Audi click」の復活: 金属パーツの精密さや、操作時の心地よいクリック感など、アウディ伝統の「触覚的な質」を重視する方針
- 競合との差別化: BMWやメルセデスが中国市場を意識して華美・デジタル化を強める中、アウディは「ドイツらしい質実剛健さ」へ立ち返る
大きな画面が並ぶダッシュボードは本当に使いやすいのか?
近年の新型車、特にアウディの「A6 e-tron」などに見られる合計37インチ超のトリプルスクリーンはある意味において「テクノロジーの象徴」。
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しかし、アウディの現デザイン責任者マッシモ・フラスチェラ氏(マーク・リヒテ氏の後任)は、このトレンドに冷や水を浴びせるような発言をしています。
今回英Top Gearのインタビューに応じたフラスチェラ氏は、「巨大なスクリーンは最高の体験ではない」と明言し、彼が目指すのはかつてアウディが世界を魅了した「触覚的な質感(タクティリティ)」と「精密なアナログ操作」との融合。
デジタルに染まりすぎた自動車業界に、アウディが投じる一石の正体を探ります。
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なぜ「アナログ」が今、必要なのか?
フラスチェラ氏が「道標」として挙げたのは、最新の「アウディ・コンセプトC」。
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巨大画面から「隠せる画面」へ
現在の流行とは裏腹に、コンセプトCのセンターモニターはわずか10.4インチ。
しかも、不要な時はダッシュボード内に格納できる仕組みです。
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「技術は必要な時にそこにあるべきで、不要な時には存在感を消すべきだ」と彼は語ります。
指紋で汚れた巨大な黒いパネルよりも、精巧に作られた金属製のスイッチがカチッと鳴る「Audi click(アウディ・クリック)」こそが、ブランドのアイデンティティを形作ってきたという信念がこの根底にあるわけですね。
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アウディ次世代インテリアの方向性
今後のモデルに反映されることが期待される、フラスチェラ流の「質感」の定義は以下の通りです。
インテリア刷新の3大トピック
| 項目 | これまでの傾向(A6 e-tron等) | 次世代の方向性(コンセプトC) |
| ディスプレイ | 3枚構成(合計37.3インチ) | 小型化、または格納式で存在感を抑制 |
| 操作系 | タッチパネル、ピアノブラック素材 | 物理ボタン、金属製スイッチの復活 |
| 質感の表現 | デジタルグラフィック、装飾過多 | 厳格な精密さ、ソリッドな塊感、金属感 |
| デザイン思想 | 全方位(特に中国)への迎合 | 「ドイツらしさ」の再定義 |
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市場での位置付け:派手さよりも「本質」
ライバルのメルセデス・ベンツが「ハイパースクリーン」で豪華さを競い、BMWが華やかなライト演出で中国市場を惹きつける中、アウディはあえて「引き算」の美学を選ぼうとしています。
フラスチェラ氏は、ジャガー・ランドローバーでは「ディフェンダー」や「レンジローバー・ヴェラール」を手がけた人物。
彼が作り出すインテリアは、シンプルでありながら素材の良さが際立つもので、アウディが「ドイツらしい規律と精密さ」に回帰することは、デジタル疲れを感じ始めた世界の高級車層に強く響く可能性があります。
結論
「ブランドがすべての人に媚びようとすると、自らの本質を失う」
フラスチェラ氏のこの言葉は、現在のアウディが抱える危機感の裏返しでもあり、既存のモデルが寿命を迎え、次世代のラインナップに切り替わるまでにはまだ時間がかかりますが、将来のアウディからは「指紋だらけの巨大画面」が消え、代わりに指先に伝わる「金属の冷たさとクリック感」が戻ってくることとなるのかも。
それはスマホのようなクルマではなく、「最高級の機械」としてのクルマを愛する人々にとって、待ち望んでいた未来かもしれません。
参考までに、アウディは前任デザイナーの段階から「機械式高級クロノグラフのプッシュボタンが持つような、いかにも精密機械を操作しているというような操作感」を内装のスイッチにもたらすとコメントしており、さらには「スパッタリング」など高級感あふれる金属調の加工をいち早く取り入れた自動車メーカーでもあるため、こういった「機械」「金属」に対するこだわりが非常に強いブランドだと考えてよく、「意外に早い時期に」これらの実現を目にすることができるのでは、と推測しています。
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参照:TopGear

















