| 中国における販売は海外の自動車メーカーにとって「諸刃の剣」でもある |
中国での「海外メーカー排除」の流れは確実に強まっていると考えていい
さて、メルセデス・ベンツが2022年第3四半期の販売状況を公開し、その中で「約40%が中国での販売だった」ことが明らかに。
まず全体(ワールドワイド)だと52万100台を販売しており、これは昨年同期比の43万4800台に比較して20%の増加です。
ただし2022年通年で見ると昨年比で-6%の1,518,200台にとどまっているようですが、この数字はまだまだ各国とも「コロナウイルスの影響から回復する途上にある」ということを意味しているのかもしれません。
世界各地域の販売状況はこうなっている
そこで今回メルセデス・ベンツが公開した世界各地の販売状況を見てみると以下の通り。
- 欧州・・・152,700台
- アジア・・・260,500台(うち中国は206,800台)
- 北米・・・83,200台
- その他地域・・・21,500台
こうやって見ると、中国の206,800台という数字は欧州の152,700台よりも多く、北米の83,200台の倍以上という数字となっており、つまりはメルセデス・ベンツの販売のうち、一つの国が40%を占めているということを意味します。
ちなみに第3四半期における中国の販売台数は昨年比で+37%ですが、通年だと-5%にとどまっており、これは今年の春先に生じたロックダウンの影響だと考えることができ、もしロックダウンがなければ中国の「メルセデス・ベンツの年間販売に占める比率」は50%くらいに達していた可能性もありそうです(ただ、今年の残りをこの調子で伸ばしてゆけば、それが現実のものとなるかもしれない)。
中国依存は諸刃の刃
なお、現在どの自動車メーカーにとっても中国への依存度は非常に大きく、とくにメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダあたりは「かなりの数値」だと報じられています。
一方でシトロエン、スバル、アルファロメオなどその依存度が小さいブランドも存在するものの、これら(依存度)が将来的にどう動くのかは現時点では全く不明。
ちなみに中国では、輸入車に高額な関税を課すために現地での生産を行わねば”売れる”範囲の価格にクルマを収めることが難しく(高くても売れるポルシェやフェラーリ、ランボルギーニはまた別の話ではある)、よって各自動車メーカーは中国にて工場を建設する必要が出てくるわけですが、その場合は「基本的に」中国企業に議決権を超える比率の株式を持たせる必要があり、結果的に中国側にてコントロールされることが多くなります。
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この結果何がおきるのかというと、日本や欧州、アメリカなど海外の自動車メーカーの技術が中国に移転してしまうということで、中国の自動車メーカーはこれによって力をつけることになるわけですね。
そして力をつけた中国メーカーは合弁相手を「切り捨て」、自社ブランドでの展開に切り替える例も出てきているのが現在の状況となっていて、つまり海外の自動車メーカーは中国によって「利用されただけ」と捉えることも可能です。
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さらには中国のバッテリーメーカーが自動車を作る場合もあり、そうなると海外自動車メーカーはコスト的に中国産EVに太刀打ちできなくなってしまい、自動的に市場から締め出されるということを意味します。
もちろん海外の自動車メーカーもこういった「中国の想定したシナリオ」どおりにならないよう様々な策を講じているものの、ブランド力のあるメーカー以外は遅かれ早かれ中国市場を諦める必要が出てくるのかもしれません。
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