| テスラはサイバートラックの遅延を「優先順位の問題」としていたが |
ただしサイバートラックの生産が開始される今、ある程度問題が解決したと考えていいのかも
さて、テスラは今年の夏からようやくサイバートラックの生産を開始する予定ですが、このサイバートラックは2019年末に発表されており、本来の予定であれば2021年に発売される予定であったものの、様々な事情によって発売が延期されていたわけですね。
イーロン・マスクCEOはその遅れについて「まずはモデルYの生産を急ぐ必要があること、ギガ・テキサスやギガ・ベルリンの稼働を開始させる必要があり、サイバートラックの生産はその次の優先順位だから」だと説明しています。
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実際にはサイバートラック生産開始遅延は「4680バッテリーの開発遅れ」
しかしながら今回、ロイターが報じた内容によると、サイバートラックの発売延期の真の理由は「搭載を予定していた4680バッテリーの開発の遅れ、それによる生産上の問題」。
テスラは以前から4680バッテリーセルの素晴らしさを説いており、このバッテリーセルは、セルの外形寸法(直径46mm、高さ80mm)にちなんで命名されていて、テスラはこの新しい電池をネバダとベルリンで製造し、モデルYやサイバートラックなどの車両に使用したいという計画を持っていたと言われます。※この4680バッテリーについては、リマックやBMWもその派生バージョンを取り入れ、もしくは取り入れる予定を持っている
イーロン・マスクCEOによると、このバッテリーセルは、サイズが大きいこと(テスラは現在2170個のセルを使用している)、新しいドライコーティング電極プロセスなどにより、最大50%のコスト削減が可能だとされていますが、テスラは、負極(マイナス電極)のドライコーティングには成功していたものの、効率向上の大部分が期待される正極(プラス電極)のドライコーティングに苦戦していたといい、その問題の解決に際して日本、韓国、中国のパートナーに助けを求めていた、というのが今回の報道の骨子です。
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テスラは「4680バッテリー」の開発完了を待つことを選択
報道によると、カリフォルニア州フリーモントで製造された第1世代の4680セルは、エネルギー密度の目標を達成することができなかったといい、この時点でテスラは、より小型のセルやエネルギー密度の低い化学組成の使用も検討したものの納得の行く結果が得られず、よって4680バッテリーのエネルギー密度の目標達成が可能となる、ならびに準備が整うまで待つ(つまりサイバートラックの生産を延期する)ことを選択したのだと報じられています。
そしてテスラは自前での問題解決ができなかったため、4680バッテリーの供給を韓国のLGエナジーソリューションと日本のパナソニックに依頼することになり、さらには材料費を下げるため、中国の寧波ロベイ・ニューエナジーと蘇州東山精密製造にも協力を依頼したとされますが、たしかにこういった内容はこれまで断片的に報じられたニュースの内容とも合致します。
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なお、テスラは2023年末までに4680バッテリーセルの生産量を500%増加させることができると確信しており、テスラは将来の自動車製造におけるバッテリーのボトルネックを回避することが現時点で最も重要な課題だと捉えていると報じられ、まさに「バッテリーを制するものは世界を制す」といったところなのかもしれません。
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参照:Reuters