
| やはりテスラが何を考え、何をしようとしているのかは想像外にある |
【この記事の要約:30秒でわかるテスラの現状】
- 異例の「自虐」発表: テスラが自社サイトで、市場の予測(-10%)よりもさらに低い「前年同期比15%減」の販売予測を公開
- 補助金の崖: トランプ政権による7,500ドルのEV税額控除が9月末で終了。Q3の駆け込み需要の反動が直撃
- 刷新と政治: 人気車種「モデルY」の生産ライン刷新による一時的な停滞と、マスク氏の政治活動によるブランドイメージ低下
- 逆転の一手: 補助金喪失を補うため、機能を削ぎ落とした「400万円以下」の格安モデルを投入
2025年12月30日、テスラは投資家向けサイトに驚くべきデータを掲載し、通常こういった場合だと企業は市場の期待を煽るものですが、テスラは逆に「アナリストたちの悲観的な予想」をあえて自ら強調することに。
第3四半期(Q3)には過去最高の販売を記録したテスラに一体何が起きているのか?
「成長の限界」か、それとも「巧妙な戦略」の予告なのか、激動の2025年を締めくくるテスラの現在地を探ってみたいと思います。
数字で見る衝撃:テスラ vs 市場予測
テスラが公開した「コンセンサス(アナリスト予想のまとめ)」は、ウォール街の一般的な予測よりもさらに厳しいもので・・・。
2025年第4四半期(Q4)納車台数予測
| 情報元 | 予測台数 | 前年同期比 |
| ブルームバーグ集計 | 約445,061台 | -10% |
| テスラ自社公開平均 | 約422,850台 | -15% |
このままの数字で着地すれば、テスラにとって2年連続での年間販売台数減少(2023年:181万台 → 2024年:179万台 → 2025年推計:164万台)が確定し、成長を至上命題としてきた同社にとって、これは極めて異例の事態であるといえるかもしれません。
なぜテスラは苦戦しているのか?3つの主要因
① 「補助金の崖」:7,500ドルの消滅
まずテスラの主要市場である米国では、トランプ政権によるEV税額控除(最大7,500ドル)の廃止が2025年9月30日に前倒しされ、これによりQ3(第3四半期)には「駆け込み需要」が発生し記録を更新。しかしQ4はその反動で需要が蒸発し、実質的に約100万円の値上げとなった影響は甚大に。
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② モデルYの刷新「プロジェクト・ジュニパー」
テスラの屋台骨である「モデルY」の新型(通称:Juniper)への切り替えに伴い、各工場の生産ラインを再編。年初からの生産調整が響き、年間通しての供給力にブレーキがかかった。
③ イーロン・マスク氏の政治的役割
マスク氏がトランプ政権下で「政府効率化(DOGE)」の旗振り役など、政治的に極めて偏った立場をとっていることが、リベラル層の多いEV購入検討者の一部を遠ざけているという分析もある。
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「4万ドル(約600万円)以下」の捨て身の対抗策
補助金がなくなった今、テスラが繰り出したのは「装備の徹底的な簡略化」による値下げではあるものの、今回の「悲観的な予想」を見るに、これが奏功していないことがわかります。
- 新型「スタンダード」モデルの投入:
- モデル3: 約36,990ドル〜
- モデルY: 約39,990ドル〜
- 削られた機能:後席用スクリーン、アンビエントライト、プレミアムオーディオ、さらにはFMラジオまでがカット。一部ではサイドミラーの手動化まで噂されるほどの徹底したコストカットにより、補助金なしでも「安さ」で勝負する構えを見せる
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結論:これは「サンドバギング(逆転劇の仕込み)」か?
テスラがわざわざ自社で「低い予想」を公開したことについて、業界内では「ハードルを下げておいて、少しでも上振れたら『予想を上回った!』と株価を上げるための演出ではないか」という見方(サンドバギング)も根強くあります。
しかし、中国BYDが年間販売台数でテスラを追い抜くことが確実視される中、2026年は「自動運転(ロボタクシー)」や「人型ロボット」といった、自動車販売以外の分野での成果に期待する向きも多く、Q4の決算発表の結果、そレに対する投資家の反応が「テスラの現在地(評価と期待)」を示すことになるのかもしれません。
ただ、ここ最近ののテスラの動きで興味深いのは、「SpaceX(スペースエックス)」に関する動き。
テスラの不調を宇宙事業の成功やCybertruck(サイバートラック)の法人需要で補うという「イーロン・マスク・エコシステム」、そして史上最大規模のIPOになるとウワサされるスペースXの上場とテスラへの波及効果が、どこまで投資家を納得させられるかが焦点だというわけですね。
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参照:Tesla















