| まさかインディ500にこんな習慣があり、そしてこういった背景があったとは |
ちなみに唯一牛乳を拒否したドライバーはエマーソン・フィッティパルディ
さて、ぼくは全然知らなかったのですが、多くのモータースポーツでは表彰台(ポディウム)の上で勝者がシャンパンファイトを行うものの、インディ500ではシャンパンではなく「牛乳を飲む」のだそう。
もちろん直近の第107回大会でもその伝統が守られることとなり、チーム・ペンスキーのジョセフ・ニューガーデン選手(初優勝)もその習慣に従ったわけですが、なぜ(モナコGP、ル・マン24時間レースとならび3大レースの一つに数えられる)インディ500の優勝者は(一般にはなかなか飲めない)高価なシャンパンではなく、”庶民的な”ミルクを飲むのかという理由が解説されています。
その伝統は1933年に始まった
アメリカ酪農協会(American Dairy Association Indiana)によると、その起源は1933年にあるそうで、同年のインディ500の勝者であるルイス・マイヤーが2度目のインディ500優勝を果たし(後にインディ500初の3連覇を成し遂げる)、表彰式のためにポディウムに上がるものの、4時間以上のドライブによってくたくたになっていたルイス・マイヤーが要求したのが「グラスに入ったバターミルク」。※バターミルクは、クリームからバターを製造した際に残る液体で、広く欧州で飲まれているようだ。ぼくは飲んだことないけど
なお、ルイス・マイヤーがバターミルクを求めたのは、「幼少期より、暑い日には牛乳を飲むのが一番である」と教えられていたからだといい、インディ500の優勝という栄光のその瞬間に、何千人もの人の前でバターミルクをゴクゴクと飲み干したのだそう。
そしてこの「一見して奇妙な光景」に興味を示したのが酪農協会で、「インディ500の優勝者に牛乳を飲んでもらう」というイベントを定着させようと試みるのですが、第二次世界大戦によるレースの中断、サーキットの所有権移転などでその伝統がいつの間にかなくなってしまい、しかし1954年、アメリカ酪農協会が「ビクトリーレーンで牛乳を飲めば、ドライバーに400ドル、チーフメカニックに50ドルの賞金を出す」という太っ腹な声明を出すとともにこの伝統が復活し、ついに1956年にはトニー・ハルマンによって公式祝賀行事の一環として取り入れられ、さらに今まで受け継がれているわけですね。
優勝ドライバーにミルクを渡す役目には「役職」が与えられる
現在では、各ドライバー(優勝候補)はレース前に牛乳の好みを聞かれ、無脂肪乳、2%、全乳から選ぶことができるそうですが、アメリカ酪農協会によると、最も人気があるのは「全乳」。
そして優勝者にミルクを手渡すのは、オフィシャルミルクパーソンという役職を持つプロフェッショナルで(下の画像だと、ホルスタイン柄のキャップを被っている人だと思われる)、酪農協会はルーキーエレクト、ルーキーミルクパーソン、そしてオフィシャルミルクパーソンといった感じで3年をかけて育ててゆく、と紹介されています。
なお、ルーキーミルクパーソンはチーフメカニックとチームオーナーにミルクを届け、ミルクをを落とさずに渡すことができるという信頼が得られたのち、翌年には晴れて優勝者にミルクを届けるという栄光を授かることができるそうで、今年のオフィシャルミルクパーソンはケリー・エステス、ルーキーミルクパーソンはアレックス・ノイエンシュワンダーだとも合わせて紹介されています。
ちなみにですが、1956年以降、この「優勝者がミルクを飲む」という伝統を守らなかったドライバーが一人だけおり、それは1993年に優勝したエマーソン・フィッティパルディ。
エマーソン・フィッティパルディはミルクを拒否し、代わりにオレンジジュースを飲んだそうですが、この行為にインディ500のファンが大いに怒ることになり、エマーソン・フィッティパルディは「母国ブラジルの柑橘類産業を振興するための行為だった」と釈明せざるを得なくなってしまい、”二度と同じ過ちを犯さないように”と開催側からきつく注意されてしまったようですね。
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