フォルクスワーゲンが30年続いた「雇用を維持する」という労組との協定を破棄。反発と訴訟の嵐が予想され、ついに行き過ぎた「EVシフト」への歪みとほころびが露見する

｜　フォルクスワーゲンはこのままでは「国際的な競争力を大きく失う」ことに　｜

しかしながら中国依存度の高い、メルセデス・ベンツ、ステランティスも他人事ではない

さて、先日フォルクスワーゲンが「その歴史上、はじめてドイツ国内の工場を閉鎖することを検討している」と報じられていますが、その際に触れられたのが「2029年まで雇用を維持すると定めた労働組合との協定打ち切り」。

この協定を打ち切ることはつまり「労組との約束を反故にする」ということを意味し、労組の力が強いドイツにおいてはかなり強いインパクトを持っています。

それでもフォルクスワーゲンは労働組合との協定を打ち切ったとの報道

しかしながら最新の報道によると、フォルクスワーゲンはこの協定を解消する決定に至ったとのことで、この30年間有効であった協定が2024年末に終了し、これによってフォルクスワーゲンは従業員の雇用を維持する必要がなくなり、従業員を「解雇」することが可能となるわけですね。

もちろん労働者からの相当な反発があることは間違いなく、今後多数の訴訟そしてストライキが発生することも予想されますが、フォルクスワーゲンは「それを見込んだとしても」この協定を解消せざるを得ないという判断を行ったのだと考えられ、ぼくらが思う以上に「状況はよろしくない」のかもしれません。※VWはすでに管理職を対象にコスト削減プランを導入し、これによる訴訟も経験している

ここまでフォルクスワーゲンの経営状態が悪化したのは「主力市場である中国でのシェア低下」「お膝元の欧州市場での競争力低下」、そして「EVが予想したほど売れず投資を回収できない」といった状況に置かれているためで、現在は車種削減、プロジェクトの後ろ倒し等によって立て直しを図っている最中です。

ただしこの立て直しには「1-2年」かかるという発言もなされており、しかし現在の状況を鑑みるに、「1-2年ではすまない」のかもしれません。

そして主力市場たる中国では「回復の糸口をつかめず」、よってフォルクスワーゲンの収益が改善するとすれば「（売上が伸びない以上）これ以上の人員と車種削減」を行うより他はなく、負のスパイラルに陥る可能性も考えられ、もちろんこの原因を作ったのはもちろんフォルクスワーゲン自身ではあるものの、「EVシフト」を強要した政府にも責任の一端がないとはいえず、今後は「政府の意向に従い」EVシフトを行った自動車メーカーからの悲痛な叫びが多数上がることも予想されます。

あわせて読みたい、フォルクスワーゲン関連投稿