| 前者は工業製品としての究極を追求した存在で、後者は文学的な存在である |
やはりスーパーカーやハイパーカーには「ドラマ」が必要である
さて、近年は「ハイパーカー市場が飽和」しつつある状態ですが、先日「新車価格を下回った価格しかつかなかった」アストンマーティン・ヴァルキリーのように、いくつかのハイパーカーは短期的に不遇の時期を過ごすことになるのかもしれません(長期的には価格が上がると考えている)。
そこでふと思うのが、値が上がるハイパーカーと、そうでないハイパーカーの差はなんなのか」。
ハイパーカーやスーパーカーには「レーシングカーとは異なる要素」が求められる
まず、ぼくが思うのはいくつかの自動車メーカーは「ハイパーカー(あるいはスーパーカー)を、レーシングカーと同一」だと捉えている、ということ。※これは思想の問題であって、否定するつもりはない
一方ぼくは「レーシングカーと、ハイパーカー(スーパーカー)とは全く別の乗り物である」と考えているわけですが、まずレーシングカーについて、その存在意義は「絶対的な速さ」であり、ラップタイムなどの数値をもって”客観的に”その価値(優劣)を図ることが可能な存在だと認識しています。
つまりは速さこそが正義であって、「遅いけどカッコいい」レーシングカーにはまったく存在意義を見いだせないわけですね(レーシングカーが作られた本来の目的、つまり競技上での話である)。
一方、ハイパーカーやスーパーカーというのは「速さ」のみによって定義されるものではなく、たとえばその場にいるだけで場が華やぐような存在だとも考えていて、たとえば高速道路のパーキングエリアにそのクルマが入ってくると、老若男女誰もが注目するような存在だと考えています。
これはひとつのドラマであると言い換えることができるかもしれず、クルマそのものに注目する人もいれば、そのクルマから「どんな人が降りてくるんだろう」と注目する人もいるかもしれません。
レーシングカーは「製品」であるが、スーパーカーは「商品」である
それはつまり、そのクルマが持つ世界観そのものが人々の注意を惹いているとも捉えてよく、「素晴らしい絵画とそれを描いた人」「素晴らしい音楽とそれを演奏する人」のように、クルマだけではなくそれにまつわる人に対してまでもが興味を持たれる(あるいはドライバーを引き立てる)存在なのだと思います。
要するに、スーパーカーやハイパーカーは、それが持つ「世界観」が非常に重要だと考えていて、それは元フェラーリCEO、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏は自社のクルマを「手の届かない美女」と表現し、「スーパーカーには、映画の1シーンのように、ドラマチックな演出が必要なのです」としてエンツォフェラーリにディヘドラルドアを採用したことからもわかります。※フェラーリはハイパーカーという表現を使用せず、288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラフェラーリ、F80の6台のみをスーパーカーと呼んでいる
よってハイパーカーとスーパーカーにおいては「数字で測れる性能」は最優先課題ではなく、もっとも重視されるのは「芸術的な、数値では測れない性能」ということになりそうですが、この芸術的性能というのは、たとえば多くの芸術家が「自分独特のタッチ」をもって成功し、しかしいかに技術が優れていても排他性を持たない芸術家が成功できないように、「他が持たない排他性」もまた欠かすことができない要因なのかもしれません。
さらに言えば、その「独特のタッチ」が消費者に受け入れられなければ傑作とはなりえず、ここがハイパーカーやスーパーカーの難しいところなのだと考えています。※とんでもなく速いが、見た目がなにかに似ていたり、普遍的なクルマであれば、それもまたハイパーカーとは言い難い
要約するならば、レーシングカーは工業”製品”であるが、スーパーカーやハイパーカーは芸術性を併せ持つ”商品”であり、双方に求められる価値は全く異なっていて、しかしこれを同一視しているメーカーもあれば、切り分けて考えている自動車メーカーもある、ということになりそうです。
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