| この危機を乗り切るためには、ランニングコストを圧縮し会社としての効率性を高めるしかないだろう |
しかしそれには大きな困難を伴う
さて、たびたび報じられる通りフォルクスワーゲンは現在非常に苦しい状況にあり、「コスト削減」「競争力のある製品開発」という両面から対策を行っていると報じられます。
ただ、「競争力のある製品開発」はすぐに効果が出るものではなく、開発に(早くて)十数ヶ月、そしてそこから市場へと投入し資金として回収できるにはさらに数ヶ月がかかるうえ、「売れるという保証はない」という不確実性をはらんでいるのもまた事実。
一方でコストカットは即効性があり「出てゆくお金」を絞ることで財政を確実に好転させることができるため、フォルクスワーゲンはここに注力していると言われます。
ただし「当然ながら」労働者は反発
現時点でのフォルクスワーゲンが労働者(労働組合)へと提示した条件としては「10%の賃金カット、かつ工場閉鎖の可能性(恒久的解決策)」。
一方で労組が提示したのは「2026年までのボーナスの放棄を含むコスト削減案(暫定的解決策)」。
現在これらが正面から衝突することで「合意に至らず」幾度もの交渉が行われているわけですが、労働組合側も「ボーナス放棄」というかなりの譲歩を示しているので、「かなり会社が苦しい」ということを重々理解しているものと思われます。
現在は「11月末の交渉を終え、次回の交渉を12月に控えている」状況だそうですが、フォルクスワーゲンのドイツ各工場(合計9つ)の労働者は「警告のため」12月2日からストライキに入っており、12月に行われる交渉が合意に至らなければ「延長」される可能性があるもよう。
「グループの財務状況は、1970年代や1990年代の危機の時のように赤字にはなっていません。過去の(高いツケを支払った)失敗を修正するために行動し、投資する余地があると見ています。しかし、合意に至らなければ、これはフォルクスワーゲンにとって最も厳しい賃金交渉になるでしょう。」
IGメタル(労働組合)交渉責任者 トルステン・グリューガー
フォルクスワーゲンはあくまでも賃金カットを主張
労働組合の提案に対し、フォルクスワーゲンは「短期的には良い影響があるかもしれませんが、これらの措置は今後数年間の企業の持続的な財政的支援にはつながりません」と述べ、フォルクスワーゲンとしては、これらの措置が単に時間を稼ぐものであり、同社にはその余裕がないとも付け加えています。
よってフォルクスワーゲンは(即効性がある対策としての)全体で10%の賃金削減を求めており、これによりコストを大幅に削減し、利益率を高め、中国の安価な競合他社と競り合えるようになると考えているわけですね(加えて、ドイツ国内の工場が初めて閉鎖される可能性もまだ残されている)。
この状況を招いたのは「ヨーロッパと中国での需要の減少、そして経営上の判断ミスや高コスト体質」だと見られ、フォルクスワーゲン自身としても「コロナウイルスのパンデミック前の状態まで需要が戻ることはない」と予測しており、現在は過剰な生産を抱え、ランニングコストを”恒久的に”抑えたいと考えているのだと考えてよく、それが「賃金カットと工場閉鎖」に結びついているわけですが、労働者としても(工場閉鎖によって)解雇されたり、基本給をカットされ生活水準が下がることは避けたいはずで、そのため「”一時的な”ボーナス放棄」を提案していて、しかしここが「合意に至らないポイント」なのでしょうね。
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