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【VWの幻の電動スポーツカー】フォルクスワーゲンが極秘開発していた「SP2オマージュ」、そのスケッチが今になって公開される

【VWの幻の電動スポーツカー】フォルクスワーゲンが極秘開発していた「SP2オマージュ」、そのスケッチが今になって公開される

Image:Stepan Rehak

| 2017年、ディーゼルゲートの裏で極秘に進められていたもうひとつの“ID.”。フォルクスワーゲンが描いた夢のEVスポーツカーとは? |

このスポーツカーが実現していたら、また現在とは異なる展開となっていたのかも

2017年、世界がディーゼルゲート問題に揺れる中、フォルクスワーゲンはそのイメージ回復の一環として「ID.シリーズ」コンセプトを次々と発表していましたが、このID.シリーズは「当時のVWのラインアップとの関連性を切り離し、名称やデザインを一新」することにより、新しいフォルクスワーゲンを生み出そうという狙いのもと進められたプロジェクト。

その目的は当然ながら「スキャンダルまみれの当時のフォルクスワーゲン」を連想させないようにすることであったのですが、この目的のために用いられたもうひとつの手段が「(全く新しいイメージを創出するのとは真逆に)古き良き時代のVWを連想させる」。※パワートレインに「電動」を選んだのも、ディーゼルとの決別を示すためである

つまるところ、「いまのフォルクスワーゲンを忘れ、かつての”真摯な、人々に寄り添うクルマづくりをしていた”VWを思い出して欲しい」ということになり、実際にこの思想によってワーゲンバスの現代版「ID. Buzz」が誕生しています。

フォルクスワーゲン「SP2」の精神を継ぐ、幻の電動クーペ

そうした「VW再生計画」がデザイン主導にて進められる中、同社デザインスタジオの奥深くでは、「ID. Buzz」「ID. Crozz(のちのID.4)」とはまったく異なるプロジェクトが静かに進行していたといい、それが今回紹介する「完全電動スポーツカー」。

この未公開コンセプトのスケッチを公開したのは、VWのデザイン&コンセプト部門の広報、シュチェパン・レハク氏。

実際にデザインを手がけたのはティボール・ユハズ氏で、そのデザインには1970年代にブラジルで生産されたフォルクスワーゲンSP2(下の画像)へのオマージュが込められてる、と説明されています。

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Image:VW

このEVスポーツカーは、現代のMEBプラットフォームをベースに設計され、リアもしくは四輪駆動となる構成を想定。

オリジナルのSP2が空冷エンジンとマニュアルトランスミッションを搭載していたのに対し、新しい「SP2」は(もちろん)エレクトリックモーターによって現代的に再解釈されることに。

ジウジアーロの精神、そして「感情」と「進化」を融合したデザイン

まず、ティボール・ユハズ氏は2017年当時のスケッチについて次のように語っています。

「私のSP2 ”再解釈” 提案は、直感から生まれたものです。進化によって動かされる未来を想像しつつも、クラシックな価値観を大切にしました。“らしさ”を失わずに未来を描く、それが私の目指したゴールです。」

このスケッチに見られるのは、ジウジアーロの影響を受けた低く構えたクーペスタイル、大きく張り出したホイールアーチ、そしてシンプルながら感情的なライン。

これは単なるデザインスタディではなく、フォルクスワーゲンが「感性」や「情熱」にもとづいたクルマづくりを模索していた証でもあります。

しかし市販化はされず、ID.3〜ID.7へとフォーカスは移る

残念ながら、このSP2オマージュEVが陽の目を見ることはなく、その理由はフォルクスワーゲンが「より収益性の高い大衆向けのボディスタイルを持つEV」——ID.3、ID.4、ID.5、ID.7へと資源を集中させたため。

それでも同社はID. Buzzのような遊び心のあるモデルも展開しており、完全に夢を捨てたわけではなかったのかもしれません。

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歴代VWスポーツカーたち、そして「GTIとRバッジの未来」

このSP2コンセプトは、VWが過去に発表しながらも量産に至らなかったスポーツカーたち——2009年のBlueSport(ミッドシップTDI)、2005年のEcoRacer(軽量ディーゼル)、2014年のXL Sport(ドゥカティ製V2エンジン搭載)といったクルマたちの系譜に連なる存在だといえるのかも。

そして何よりも、伝説的なW12ナルド(Nardo)コンセプトのように、ブランドの“情熱”を再び呼び覚ます火種でもあると考えられます。

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欧州にて内燃機関車の販売が禁止されようとしている流れの中、VWは「GTI」や「R」の名を電動化時代にも継続させると明言しており、その流れの中において、このSP2コンセプトのような、スタンドアローンな本格スポーツカーを出すことは大きな意義を持ち、その意義が「ブランドイメージの再構築」につながる可能性も見えてきます。

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Image:Volkswagen

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参照:Motor1, Stepan Rehak

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