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| マクラーレンは他社とは全く異なる技術をもってその限界を押し広げる |
マクラーレンは既存の技術や思想にとらわれない
さて、マクラーレンはここ最近チョコチョコと新型ハイパーカー「W1」のテクノロジーに関する情報を公開しており、これまでにはサスペンションやエンジン、ハイブリッドシステム等に関する詳細を公開しています。
そして今回明らかにされたのが「トランスミッション」で、これはなんと「同時に2つの異なるギアで走行できる」構造を持つもよう。
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マクラーレンW1はいったいどういったトランスミッションを持っているのか
マクラーレンW1は「ハイブリッドカー」ですが、一般的なハイブリッド車の場合、エレクトリックモーターは内燃エンジンと直結されるか、両者あるいはトランスミッションとの間にデカップリング(切り離し)装置が存在します。
P1やアルトゥーラでは、エレクトリックモーターがデュアルクラッチトランスミッションの前に配置され、エンジンとモーターとの間に切り離しクラッチがあり、これによってモーターだけで車輪を駆動することができるわけですね(エンジンだけが切り離され、エレクトリックモーターとトランスミッションが連結されている状態)。
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参考までに、スピードテールのエレクトリックモーターも同じ位置にあるものの、エンジンとの間にはデカップリング装置がなく、同時にピュアエレクトリックモードはなく、モーターのみの走行は「不可」となっています。
W1の場合だと、エレクトリックモーターはトランスミッションのクラッチ”後ろ”に配置されていますが、特徴的なのはその342馬力を発生するエレクトリックモーターが偶数のギアでのみ動作する点。
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具体的には、エレクトリックモーターはアイドラーギアを通じてシャフトに供給され、そのシャフトは2つの入力シャフトの(後述の同軸出力軸の)外側を駆動することになりますが、デュアルクラッチトランスミッションでは偶数ギアと奇数ギアのそれぞれに独立したクラッチがあり、W1ではこれらのシャフトが同軸に配置され、シャフトの中にシャフトが入り込む構造になります(2本の出力軸があるが、これらが1本にまとめられる。この外側と担当するのがエレクトリックモーター)。
このシステムにより、マクラーレンのエンジニアは、エレクトリックモーターと内燃エンジンが異なるギア比で同時に動作できるという新しい方法を実現し、例えば内燃エンジンを3速で駆動する場合、エレクトリックモーターは2速または4速にて駆動することができ、この技術によって車両は常に一定の電力を後輪に供給し続けることができるため、安定した加速と効率的な運転が可能になるわけですね。※下の画像だと、左後ろに設置される丸いパーツがエレクトリックモーター
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つまりこのシステムは、エレクトリックモーターと内燃エンジンを同時に異なるギアで駆動させることができるということになり、1,3,5,7速で走る場合、同時にエレクトリックモーターが2,4,6,8速にて「パワーをアシストする」というロジックを持っています(つまり偶数ギアはエレクトリックパワーによるアシストが行われる限りにおいて、常に動作することになる)。
参考までに、同じくハイブリッドスーパーカーであるランボルギーニ・レブエルトはエレクトリックモーターとエンジンがすべての前進ギアで同時に動作することができるユニークなカップリング機構が採用されていますが、W1のように異なるギア比で同時に動作させることはできず、よってW1は極めてユニークな構造を持ち、「デュアルクラッチ」「ハイブリッド」という特性をフルに活かし、エレクトリックモーターをポン付けしただけではない、「新世代の」設計を取り入れていることがわかります。
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この新しいアプローチはP1で導入されたトルクフィルを使用したシステムとは異なっていて、W1では常に一定の電力供給を行うことを可能としていますが、もちろんこの設計の意図は「軽量化」にあり、マクラーレンはポルシェが用いる複雑な可変タービンジオメトリ、メルセデスAMGやフェラーリが用いる”重量がかさむ”電動ターボチャージャーを用いず、しかしより効率的かつ効果的な方法を新しく編み出したと考えてよく、実際のところW1の乾燥重量はP1とほぼ同じ1,398kgにとどまっています。
こういった例を見るに、同じような出力のハイパーカー、そしてハイブリッドであったとしても、そこに至るまでの手法が全く異なるということがわかり、これは「電動化」によって選択肢が拡大したこと、そしてその選択肢は常に拡大し続け、新しい方法を取り入れてゆかねば”置いてゆかれる”ことを示しているのかもしれません。
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