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BMW「ノイエクラッセ(Neue Klasse)」の歴史と復活──初代は1960年代、メルセデス・ベンツによる買収からBMWを救った”救世主”。かつての名車たちと新世代EV戦略とは

BMW「ノイエクラッセ(Neue Klasse)」の歴史と復活──初代は1960年代、メルセデス・ベンツによる買収からBMWを救った”救世主”。かつての名車たちと新世代EV戦略とは

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| BMW、再び「Neue Klasse」の名を冠する理由とは |

BMWは「初代」ノイエクラッセの成し遂げた軌跡を再現しようとしている

BMWは新世代EVシリーズに「Neue Klasse(ノイエクラッセ、新しいクラス)」の名を採用しています。

しかしこの呼称は初登場ではなく、実は1960年代にも登場しており、もとはといえば当時のBMWを破産寸前から救い出した重要なシリーズを指しています(ただ、当時のノイエクラッセは当初からBMWが考えていた呼称ではなく、発売時の広告宣伝展開を行う過程にて、あと付け的に用いられたものだという)。

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1960年代、BMWはメルセデスに買収されかけていた

1960年当時、BMWは高級モデル(501/503/507)とイセッタなどのバブルカーで生き残りを図っていたものの、高級モデルの販売状況が芳しくなく、もう一方のイセッタでは利益単価が低く、結果的に利益が伸びず経営は危機的状況。

この状況を受け、1959年の株主総会ではダイムラー・ベンツ(現在のメルセデス・ベンツ)社による買収案が議題に上がるほどであったといい、買収はほぼ決定事項と見られていたものの、最終的には個人投資家であるヘルベルト・クヴァントとその弟であるハラルト・クヴァントが株式の過半数を取得し、この買収を阻止しています。

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このクヴァント家による支援、そしてその後に発表された「ノイエクラッセ」(Neue Klasse)と呼ばれる中型セダン(BMW 1500など)の成功によってBMWは経営危機を脱して現在の地位を築くことになっており、よってBMWにとってのノイエクラッセとは「BMWを危機から救った」象徴でもあるわけですね。

なお、現在のBMWは「危機的な経営状態」にあるわけではありませんが、先行き不透明なこの状況において安泰な状況でもなく、ここでBMWが「新しい時代への望み」をかけて新型車シリーズに「ノイエクラッセ」の名を与え、新しいステージへと移行しようと考えるのは当然の成り行きなのかもしれません。

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つなぎ役となったBMW 700

クヴァントの投資により開発された「BMW 700」は、バイク用水平対向2気筒をベースにした小型車で、ジョヴァンニ・ミケロッティによるデザインを持ち、1959年のフランクフルトショーで大成功を収めて25,000台以上の注文を獲得することに成功します。

このヒットによりBMWは一息つき、「本命」、つまりより利益が大きな中~大型車の開発に進む余力を得ることに。

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名機M10エンジンの誕生

その後BMWは新しい中型セダンのために直4エンジンを開発。

エンジニア、アレックス・フォン・ファルケンハウゼンが設計したM10エンジンは最終的に2.0Lまで拡張可能な設計となり、後のF1用ターボエンジン(推定1,400馬力)にも繋がりますが、1962年から1988年まで3.5百万基以上が生産されたM10は、BMW史上最も重要なエンジンのひとつとして評価されています。

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BMW 1500──真の「Neue Klasse」始動

1962年、ついに「本命の」BMW 1500が登場。

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1.5L直4エンジンを搭載し、フロントエンジン・リア駆動・独立懸架サスペンションというBMWの黄金レイアウトを確立し、外観はミケロッティとヴィルヘルム・ホフマイスターの合作で、後に象徴となる「ホフマイスターキンク」や「シャークノーズグリル」がここで誕生。

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この「1500」から始まったシリーズが「Neue Klasse」と呼ばれ、現代BMWの原点、そして現在のBMWの「転換点」となるわけですね。

なお、当時のノイエクラッセのフロントには「縦型の小さいキドニーグリル」、そして「横型の大きなキドニーグリル」の2セットが潜んでいて・・・。

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新型「ノイエクラッセ」第一号であるiX3にも同様のデザインが(現代的に解釈され)潜んでいることがわかりますね。

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Image:BMW

拡大するモデルラインと02シリーズ

そして当時のBMWの「は1500を皮切りに1800、1600、2000へとラインアップを拡大。

特に「1600-2」をベースにした「02シリーズ」は、より軽快でスポーティなモデル群として人気を博し、アメリカ市場向けに誕生したBMW 2002は大ヒットとなってBMWをスポーティセダンの代表ブランドへと押し上げることに成功します。

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BMW 2002 Turbo──Mモデルの先駆け

1973年登場の「2002 Turbo」は、BMW初の量産ターボ車であり、モータースポーツ直系の一台として大きな歓迎を持って迎えられ、180馬力を発揮する強力なエンジン、ワイドフェンダーや専用ストライプといった装備によって「特別な存在」に。

販売台数はわずか1,672台にとどまったものの、M部門設立前夜の“事実上のMカー”として大きな歴史的意義を持つ、と認識されています。

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まとめ:Neue Klasseの歴史と現代への継承

1960年代の「Neue Klasse」は、BMWを救っただけでなく、現在の3シリーズやMモデル、さらには「駆けぬける歓び」というブランド哲学を確立したシリーズ。

そして2025年、BMWは再び「Neue Klasse」の名を掲げ、EV時代の新しい飛躍に挑むこととなり、かつてBMWを救ったこの名が再び未来を切り拓けるのか、注目が集っている、というのが現在の状況です。

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参照:BMW

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