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| 「ノイエ・クラッセ」の登場で変わるBMWのデザイン |
「巨大キドニーグリルはとくに中国市場で好まれる」
BMWはミュンヘン・モーターショーで新型iX3を発表し、新しいデザイン言語を持つ「ノイエ・クラッセ」を披露しています。
その特徴は特徴はスリムな(縦横を組み合わせた)キドニーグリルと水平基調のライトシグネチャーで、これは1960〜70年代の1600や2002を想起させるもの。
この新デザインは今後2027年までに約40の新型・改良型モデルに導入される予定で、巨大グリル路線からの転換点として大きな注目を浴びているわけですね。
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なぜ巨大グリルが生まれたのか?
7シリーズやiXなどに採用された超大型グリルはしばしば(というか、ほとんどのケースで)批判の的になり、しかしBMWグループ・デザイン責任者のアドリアン・ファン・ホーイドンク氏は「中国など一部市場では大きなグリルが好まれている」と説明します。
さらに「否定的なコメントはあったが、販売データに悪影響は見られなかった。むしろプラスに作用した可能性すらある」と述べ、あえて方針転換を急がなかったことを明かしていて、事実、この「ジャンボキドニー」搭載モデルは「通常のキドニーグリル搭載モデル」に比較して販売が好調であるというデータも示されています。
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グリルは機能部品でもある
なお、BMWが採用する巨大グリルは単なるデザイン上の遊びではなく、多数のセンサーを組み込むための機能的要素でもあり、というのも自動運転支援技術の高度化に伴い、センサーを目立たず配置する必要が生じ、その解決策が大きなグリルだったというわけですね。
たしかにセンサー類が「あと付け」されている様子は好ましくはなく、それらが妙に目立つと美観を損なってしまうのですが、BMWはこれらセンサーをうまくジャンボキドニーの中に格納することでこの問題を解決しています。
さらに、フェラーリは「ブラックバンド」の中にカメラやセンサーを格納することでボディ表面の美しさを保つことに成功していて、こういった例を見るに、今後の自動車デザインにおいては「いかにセンサーをうまく車体デザインに融合させるか」がひとつのキーになるのかもしれません。
もうひとつ「ジャンボキドニー」について補足しておくと、この採用によってエアを効率的に取り込めるようになり、冷却用のエアはセンター(ジャンボキドニー)から取り入れるようように設計することでラジエターをセンターに集中配置でき、フロントバンパー左右のダクトを整流用とすることでダウンフォースと安定性を確保できたとも説明していて、つまるところ「機能上」でもこのジャンボキドニーは比較的大きな役割を果たしていた、ということに。
ただ、EVだと冷却用のエアをそこまで取り入れる必要はなく、よってアドリアン・ファン・ホーイドンク氏は「(EVである)iX3のようなモデルでは、このサイズのグリルが最適だった。知能化が進む車において、グリルは機能性の中心でもある」とも語っています。
今後のBMWグリルはどうなる?
新世代モデルではスリムなデザインへと移行する一方、大型グリルが完全になくなるわけではなく、実際、スパイフォトを見る限りではフェイスリフト版7シリーズでも依然として大きなグリルが残るもよう(BMWはグリルの大きさでそのシリーズの存在感を表現しているといい、かつ2/4/7シリーズはアーリーアダプター向けの大きなグリル、3/5シリーズはマジョリティ向けの小さなグリルを与えている)。
つまりBMWは「市場ごとのニーズに応じ、そのモデルの存在意義に応じてグリルを使い分ける」という戦略を取っており、たとえ大型グリル批判があったとしても、その存在が完全に消えることはないのかもしれません。
まとめ
- 巨大グリルは中国市場を中心に強い需要があった
- 批判はあったが販売への影響はほとんどなかった(むしろよく売れている)
- センサーを隠すという機能面の役割も担っていた
- 今後はスリムなデザインと大型グリルを使い分ける方針
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