
| もちろん商標出願=実際にその名称を使用するというわけではないが |
アストンマーティン、新たな「DB」商標を一挙出願
英国の名門スポーツカーブランド、アストンマーティンが新たに複数の商標を出願していることが明らかに。
CarBuzzによると、そのすべてが「DB」から始まる名称で数字を伴う文字列を持ち、DB16からDB32まで、さらにDB40、DB50、DB60、DB70、DB80、DB90といった名前まで含まれているのだそう。
これらの商標が実際の市販車名に使われるかは不明ではあるものの、少なくともアストンマーティンが今後の展開に備えて「名前を確保」していることは間違いないのかもしれません。
「DB」の由来と系譜
「DB」とは、1947年にアストンマーティンを買収した実業家デイヴィッド・ブラウン(David Brown)の頭文字。
1950年のDB2以来、アストンマーティンのスポーツカーを象徴する名称として受け継がれてきましたが、デビッド・ブラウンとの関係性が失われた現在においても、アストンマーティンは「伝統」としてこの命名法則を継続しているわけですね。
- DB1(買収後はじめて登場したモデル。「当初はDBの名を持たなかったが、後にDB1と命名)
- DB2(1950年)※DB2/4、DB Mark IIIといったモデルも存在
- DB5(1963年、映画『007』で有名に)
- DB6(1965年)
- DB7(1993年、フォード傘下時代に復活)
- DB9(2004年)
- DBS(2007年)
- DB11(2016年)
- そして現行の DB12(2023年発表)
なお、これらの数字は部分的に飛び飛びで使われてきたため、今後「DB13」ではなく、「DB18」「DB25」といったモデル名が突然登場しても不思議ではありません。
参考までに、デビッド・ブラウンは、もともと「デビッド・ブラウン・リミテッド」という歯車と工作機械の会社を経営していたイギリスの実業家で、彼はアストンマーティンが経営難に陥っていた1947年に「タイムズ紙の広告で売りに出されているのを見つけ」、当時わずか30,000ポンド(当時の日本円で約350万円)での買収に成功しています。
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果たしてこの買収がアストンマーティンを高級GTカーブランドとして再建するきっかけとなり、彼のリーダーシップの下、上述のような彼のイニシャル「DB」を冠した数々の名車が誕生しています。
デビッド・ブラウンは1972年までアストンマーティンのオーナーを務め、その間にブランドの礎を築き上げたと考えてよく、彼の時代に確立された「DB」シリーズはその後一時的に途絶えるものの、1993年にフォードの所有下で「DB7」として復活し、その後の資本体制でも「DB11」や「DBS」として彼の功績が称えられています(デビッド・ブラウン自身は1993年9月3日没)。
つまり、デビッド・ブラウンは、単なる投資家ではなく、アストンマーティンというブランドを愛し、そのアイデンティティを形作った人物として歴史にその名を刻むカーガイでもあり、アストンマーティンが(時代が変わろうとも)この命名を存続させようと考えることもよく理解できますね。
記念モデルの可能性も
なお、今回の出願は「他社にDB+数字」という名称を使用されないようにという保護的な意味もあるのだとは思われますが、それにしては「意味深」な数字を選んで出願されており、よって実際に車名に使用される可能性も否定できません。
出願された名称の一部は、アニバーサリーモデルに使われる可能性も考えられます。
- DB80:2028年のDB1誕生80周年
- DB90:将来的な90周年記念モデル
- DB25やDB60:F1チームやドライバーに関連する特別モデル?
ただし、(重ね重ねではありますが)商標登録は必ずしも市販化を意味するわけではなく、将来の可能性を残すための保険、他社の模倣の防止として行われる場合がほとんどで、これはカシオが「Gショック」のみならず、「Aショック」から「Zショック」までの商標を取得しているとされることからも理解ができるかと思います。
大量出願は将来の布石?
自動車メーカーが「将来使いそうな名前」を先に押さえておくのは一般的ですが、これほどの数を一度に出願するのは珍しいケース。
とはいえ、実際に使わなければ他社が取得可能となるため、アストンマーティンとしては自社ブランドを守る狙いもありそうです。
果たして「DB16」や「DB80」といった名前が実際の車に登場するのか、それとも単なる知的財産の確保に過ぎないのか。
アストンマーティンの次の一手に注目が集まります。
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参照:Carbuzz